アトリエ敷地にツツドリが「ポポポポポ」と鳴き出した。それにウグイスの「ホーホケキョ」、アオバトの「ホーワーオー」、キツツキの「タラララララ・・・」というドラミングの音が加わって、外で折りたたみ椅子に座って本を読んでいると、その様々なミックス音が耳を楽しませてくれる。鳥の声だけではなく、庭先にツツジが咲いたものだから、それにハチやアブがやってきて「ブーン」という羽音も混じっている。
月: 2006年4月
列状間伐
この日、十石峠で列状間伐の山を見た。なんだかみっともない姿だよね。列状間伐というのは、とにかく緊急に間伐が必用だからということで、選木の手間をかけず列に縞状に伐っていくもの。巻き枯らし間伐について、よく外観が悪いと言われるけれども、巻き枯らしは4~5年もすれば枯れ跡は目立たなくなり、自然にとけ込んでしまう。列状はかなり長い間、シマシマの外観が残ってしまう。
現在の荒廃林に選木をせず、列状に伐るということは、いい木も悪い木も混ぜて伐るということで、もしその木々を収穫するならムダが多いし、すべて伐り置きするなら、いい木がもったいないということになる。山を、木を愛していないという感が否めないのである。
叶山、恐竜の足跡
雨上がりで午後からよく晴れたので、神流川に沿って中里~上野村まで行ってみる。沿線のサクラは散り始めているが、岸壁に赤紫のツツジの花が美しい。この流域は岸壁が多く、山深い独特の雰囲気を醸し出している。下仁田側ともちがい、秩父側ともちがう。それは地質ーー岩石の質によるものなのかもしれない。
この一帯は古生代、中生代の岩が集まっているところで、群馬では最も古い地層に属する。また石灰岩の岩脈や鍾乳洞があり、セメント会社が掘削をしている。中里に「恐竜の足跡」があるので有名である。
八ッ場と上野
八ッ場ダムと書いて「やんば」ダムと読む。群馬に根をおろして2年目、このごろよく耳目するようになったこの巨大ダム開発問題、その現地に行ってみることにした。前橋で地図を入手。17号から渋川へ。そこから沼田方面と離れて榛名の裾野を回り込むように進むのである。
東町、吾妻町と、なかなか風光明媚ないいところである。役所で地図やパンフレットを入手。驚いたことに、ダム建設側が周辺のハイキングガイドを作っている。役所の担当者のしゃべりの雰囲気ではすでに「ダム建設はゴーサインが出ていている。もう白紙撤回されることはない」を確信している風に受け止められる。その八ツ場ダムのダムサイトは「吾妻渓谷」の上部につくられる。ハイキングガイドを参考に白糸の滝まで歩いてみた。上毛カルタに「耶馬渓しのぐ吾妻渓」と詠まれたこの渓谷も、ダムができればズタズタになるだろう(白糸の滝は付近は水没する)。
春のタコ飯
朝、NHKテレビの『生活ほっとモーニング』という番組でタコ料理をやっていた。ちょうどタコ焼き用のタコが余っていたのでタコ飯を作ってみる。昆布と鰹節でダシをとり、酒、みりん、醤油、ショウガ(わりとたっぷり)で2mmくらいに切ったタコを入れて米を炊くのである。ここでも「五人娘」というナチュラルな日本酒をたっぷり使ってみた。
生放送のこの番組では、炊飯は土鍋で炊いていたが、調理人が「電気釜で炊くよりもこのほうがずっと旨いですよ」と思わず漏らして笑ってしまった。スポンサーの影響の強い民放ではちょっと言えない×言葉だろう。
直火で炊くと旨いだけでなく、電気よりも時間が短縮できる。僕らは相変わらず羽釜+チビカマ+スギ薪で炊いている。庭先にミツバがたくさん芽吹いている。それを摘んで味噌汁をつくる。
高級米+浄水器の水+電気釜の炊飯と、並米+山水+薪火の炊飯を比べるなら、後者のほうが絶対に美味しいと断言できる。日本人は水と薪の火という大切なものをいとも簡単に棄ててしまった。その代償はあまりにも大きい。そのツケは、まわり回ってタコの棲む海にまで影響してくるのだが。
『現代農業』の連載「山暮らし再生プロジェクト」の中で料理をとりあげたとき、「川も海もダメになったら、最後の砦は山しかない」と書いた。これは全国各地を見渡してみて偽らざる実感である。その山すらも守れないなら、これはもう全員揃って破滅するしかないのである。