「あ・うん」と浄化槽、シーモアと私


早朝、矢野さんの車で新横浜に向かう。車は駅の駐車場に置き、そこからは新幹線で豊橋まで。今日は個人宅の屋上緑化のメンテナンスである。私は帰り道でもあるので、ちょっと覗かせてもらうことにしたのだ。昨夜の就寝は12時過ぎ、今朝は4時起きである。私もタフだが、矢野さんは作業をこなしているのだから、その比ではない。

移動中もずっと話が続く。昨日会った自家採種の活動家(日本人女性、アメリカ在住 Seed from Earth)の話に興味を持たれたようだった。ご自分の拠点である上野原の実験農場に今年から本腰を入れ、放棄地を再生するシステムを一般化したいようだ。それを社会弱者の救済につなげたいという・・・そんな夢を語った。

豊橋は個人病院のバルコニーの庭造りだった。以前他の業者がやったものがうまくいかず、矢野さんに回って来たらしい。木の配置はそのままに、要所に通気浸透水脈を入れ、植栽の追加、風の剪定、入念なグランドカバー・・・と作業が続いた。

今日来ているメンバーは大地の再生の中部支部の方々で、初めて会う3人はそれぞれ私の本を読んでいて、口を合わせたように、

「ずっとお会いしたかったです!」

というのだった(笑)。その一人、浜松の奥で山暮らしをしているAさんは本の熱心な読者というだけでなく、なんと「あ・うんユニット」を導入しているという。

あ・うんユニットはこのブログでも何度か紹介しているが、高嶋康豪博士が開発した「複合発酵資材」を使って曝気しながらし尿を分解し、液肥として利用するエコ・トイレである。販売や指導は埼玉県日高市の養豚場「柳田ファーム」が中心となってホームページ等を窓口としている。

私がDIY雑誌『ドゥーパ!』や拙著『楽しい山里暮らし実践術』で紹介したせいもあるのか(下はそのときのイラストをあ・うんユニットのHPに提供している説明図)最近、山暮らし・田舎暮らしの人たちが取り入れた話をよく耳にする(香川では丸亀の「廃材天国」秋山君も使い始めたようだ)。

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私も新居建設の際には導入しようと考えていた。しかしアトリエの敷地では公共下水道がないので合併浄化槽が義務付けになる。あ・うんユニットを導入すると浄化槽が2つという無駄になる(あ・うんにはトイレからの配管を別取りすることになる)。

つまり義務付けの合併浄化槽には雑排水(台所、風呂、洗濯、洗面所排水)だけが入ることになるのだ。あ・うんはハードそのものは単純な仕掛けなのだが、複合発酵資材の分も見込まれているのでけっこうな金額になり、年間の会費もかかる。

もちろん普通の合併浄化槽も年間費用がけっこうかかる。業者に依頼する保守点検、年に一度程度の清掃(スカムの抜き取り)、そして法定検査。両者のダブル負担はバカにならない。そこで後付けであ・うんが設置できるように、配管と電気系統(ポンプ用電源)は準備しておいた。

一方で、現在の合併浄化槽の性能を確かめてみたいという欲求も私の中にあった。なにしろ私は大学時代に下水道の卒業研究でし尿処理をやっていたし、当時研究対象にしていた「接触エアレーション方式」が、今最新型の浄化槽にはほとんど装填されているのだ。

アトリエで入れた浄化槽はフジクリーンのCFⅡ型/5人槽である。現在はさらにマイナーチェンジされたCA型というものになっている(下図、現在シェアNo.1らしい)。嫌気槽と好気槽に別れており曝気をして微生物により分解するという原理はあうんと同じである。ただしこちらは複合発酵資材や微生物資材は入れず(し尿排水にすでに微生物は存在するし、曝気するだけで空気中から新たな微生物を取り込める)、接触ろ床を工夫するなど、より微生物が住みやすい構造であり、汚泥を前の槽に転送できる複雑な構造になっている。

現在の一般的な「合併浄化槽」の略図を、環境省のリサイクル対策部から拝借してきた。

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さて最新型のフジクリーンCA型/5人槽の価格は65万円であるが、たとえば高松市では今年度から「くみ取り便所から合併浄化槽へ転換」に33万円超の助成金が出、「単独浄化槽から合併浄化槽へ転換」にその他に撤去費用9万円と配管費用30万円が追加される(ただし新設に対する補助金は今年度から廃止)。

実際にフジクリーンCFⅡ型の水質検査をしてもらったところ、私のアトリエの出口では透明度も高く、BOD(生物化学的酸素要求量)は1.5〜2.3mg/Lくらいだった。2mg/L以下なら渓魚のヤマメ・イワナが棲むことができるのだから、これはかなりの性能である(国の排水基準はBOD20mg/L以下)。

ペットボトルを切って棒に付けた道具で、浄化槽の排水を引き上げてみたもの。透明度がわかる(2015.6.3)

ウチでは合成洗剤や塩素系の洗剤などはいっさい使わないし、油などは事前に拭き取って流さないようにしているので微生物の活性が高いのだと思う。検査の人に聞いたのだが、同じ機械でも使い方がひどくて、とんでもなく汚れた浄化槽もあるという。

排水がきれいでも、残念ながら最後の出口で塩素消毒されるのでそのまま畑に使うのはどうかと思った。しかし検査値では塩素濃度0.2mg/Lくらいなので、これは水道水の塩素濃度と変わらないかそれ以下なのだ(日本の水道水は塩素を0.1mg/L以上入れて殺菌するのが義務付け/上限はない)。

この水を池に引いて魚を飼ったり自分の農地にまいたりしてみたいが、それは法律で禁じられているらしい(しかし排水を流す河川や用水の水は、田んぼで使われたりする)。一方で屎尿を発酵させて農地に使うのは許されているので(一部条例で禁止されている地域もある)、あ・うんユニットならこの法律をクリアーできるというわけである。

水道水の浄化法に「緩速ろ過」というものがあるが、これは砂の層をある一定の緩やかさで浸透させるうちに砂の表面に微生物膜ができ、ここを通過するだけで細菌などが除去されてしまう方法だ。この緩速ろ過槽をドッキングして、合併浄化槽の排水が塩素殺菌される前にろ過することができるなら、相当に安全できれいな水を得ることができるだろう。

緩速ろ過・上田市染谷浄水場

そして「緩速ろ過」装置はその構造が単純なので自作できるのである。下図はやはり拙著『楽しい山里暮らし実践術』のイラストだが、これは信州大学名誉教授の中本忠信先生が、東日本大震災を機に自作の緩速ろ過装置を紹介(『東京新聞』2011.5.2)したものを元に、私が再構成イラスト化したものである。

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こんなことを書いたのは、昨日の葉山のKさんの造成敷地を見たとき、ここに家ができたら排水は庭と畑に浸透させるのが最も合理的で、木々や敷地のためにもいいと思ったからで、これから植栽土木が一般的になり、それを住まいと連動させるとき、大地のためにもこの方法が最も相応しいと考える。

あ・うんユニットを導入した浜松の山暮らしAさんは、オーストラリアでパーマカルチャーを学んだ経験があり、そのときのバイブルはジョン・シーモアの『The Complete Book Self Sufficiency』(1976,邦訳『完全版 自給自足の本』宇土 巻子 ・藤門 弘訳1983)だったそうだが、

「日本では、大内さんの本がバイブルですね・・・」

とまで言ってくれた(光栄である♬)。

というわけでもないんだが、昼くらいで帰ろうか・・・と思っていたのに、6時過ぎまで滞在して荷物運びまで手伝ってしまったのでしたw。みんな、囲炉裏暖炉を見に遊びにおいで♬

こちら大地の再生ホームページもご覧ください。技術解説編です。

【愛知県】屋上緑化・作庭


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