【著作】


大内正伸(おおうち・まさのぶ)

イラストレーター・著作家

Tortoise+Lotus studio 主宰
Gomyo倶楽部 代表

プロフィール>【仕事関係】に書いた通り、手描きの山岳紀行を出版しようと四苦八苦したものの、商業出版の壁は厚く、あえなく敗退。が、波状攻撃しているうちに、本業のイラストや文を書く仕事が増え始め、2000年にインターネットでホームページを開設してからというもの、加速的に仕事の機会が増えた。そして林業関係の本を次々に出版することになった。

商業出版におけるDTP(Desktop publishing/デスクトップパブリッシング。割り付けなどの編集作業をパーソナルコンピュータ上で行うこと)は『山を育てる道づくり』(農文協2008)から始まったのだが、この本は雑誌連載の書籍化で東北、四国、岡山、九州まで車中泊のハードな取材旅をしており、個人的にかなりの経費をかけた仕事である。鋸谷さんの間伐マニュアルもそうだが、出版の背後には長い時間と膨大なエネルギーが込められている。

著作に関する飛躍は、ご存知「山暮らし」を始めたことだ。ハードな山暮らしのスキルの構築は隣人のおじいさんとの出会いも大きいが、過去の肉体労働バイト遍歴が役立ったのは言うまでもない。しかし、それだけでは本はできない。その内容をイラストで解りやすく表現し、写真と文章を組み合わせて、魅せるレイアウトとページの展開をしなければならないのだ。私の場合『北アルプスのダルマ』がそのいい訓練になっていたといえるだろう。

そして、昆虫同好会の会誌に寄稿したタイ採集紀行(B5版48ページの紀行文「ジャングルと海」水戸昆虫研究会『るりぼし』No.27/2002)を書くとき、AdobeのInDesignを導入し、ここでDTPを独習したことが、山暮らしのイラスト本を成功に導いたもう一つのキーである(ちなみにこの仕事はノーギャラである)。

つまり2008以降の私の本は、文章・写真・イラストだけでなく、DTPレイアウトまで、ほとんどすべて自分一人でこなしている。普通の作家は文章だけ書く。そうして必要な写真・イラストはその手のプロに発注する。さらにデザイン・レイアウトはDTPのオペレーターが作る。それをすべて私ひとりでやっているのだ。寡聞にして同じことをやっている人間を知らないが、しかしこうすることで最高に理解しやすいノウハウ本が作れる。また、こうしないとイラストや印税だけでは食べていけない・・・というのも大きな理由である。

地方に住みながら東京の編集部とオンラインでやりとりができる、Macとインターネットがあってこそなし得るワザである。だから、スティーブ・ジョブズには感謝しても感謝しきれない。彼は偉大なイノベーターだが、これから世界を変えるためにこのスタイルは大きな武器になり続ける。それはジョブズも計り知れない未来なのだ・・・。

そんな私の著作を紹介しよう(上から新しい本、定価は2023年現在の税込価格)。


「大地の再生」実践マニュアル—空気と水の浸透循環を回復する

矢野智徳・大内正伸 著 大地の再生 技術研究所 編 / 農文協(2023/1)/2,860円/amazon

「大地の再生」とは、空気と水の浸透循環を回復する技術である。その浸透循環が滞るとどうなるか? 戦後の開発やコンクリート土木で野山や海が疲弊し、いま日本列島で様々な災害が起きている。再生するには植物を味方につけること。それは放置された里山から出る「枝葉」や「炭」を素材に、手ガマと移植ゴテという身近な道具から始めることができる。発案者にして全国的に実践・普及する矢野智徳氏とは2018.4.5の屋久島講座で初めてお会いし、以後約4年間、月に数回のペースで綿密な取材を続け、その思想と技術を豊富なイラスト(図版80超)で解説した本である。1/18発売と同時に増刷となり現在(2024.7)6刷目(19,000部)となっている。
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国産材でつくる インパクトドライバー木工—木材・道具の基礎から家具づくりまで

大内正伸著/農文協(2018/3)/2,750円/amazon

DIYといえばツーバイ材という時代が長く続いたが、いま山には大量のスギ・ヒノキがあるのだから、それを使わない手はない(ホームセンターでも盛んに売られ始めている)。残念なことにほとんどの人がとくにスギ材のすばらしさを知らない。1章はそこに光を当てた。そして日本のインパクトドライバーは完成度の高い革命的な道具。切り欠きと強靭なビス打ちを組み合わせることで、高度なほぞ組みでしか作れなかった木工作が可能になる。それには木の性質を知り、ある程度手道具も使いこなす必要がある。塗装を省いてあるのはスギ・ヒノキのエージングの美しさ・渋さを知ってほしいから。作例にはすべて図面を付けてあり、QRコードによりブログの制作過程に飛べる。
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「囲炉裏暖炉」のある家づくり

大内正伸著/農文協(2016/2)/2,860円/amazon

囲炉裏暖炉とは? 排煙ができ直火が楽しめる暖炉と、囲炉裏の灰炉を組み合わせた筆者オリジナルの暖房装置である(出版同年に登録商標取得)。その囲炉裏暖炉を組み込んだアトリエ新居は、長く林業再生にたずさわってきた私の集大成にしてアート作品。外見は新素材だが室内はスギ・ヒノキ・漆喰たっぷりの自然素材。それに工事の端材残材を自らインパクトドライバーで組んだ家具類を配置。本書はその家づくりドキュメントである。後半は家づくりの視点から日本の林業を問う。5 章 熊野の森で、崩壊するスギ・ヒノキ林――人工林を放置するとどうなるか? 急げ「手入れ」6章 木の家はどんな森を欲しているか?――そしてどこに向かえばよいか 衝撃の熊野山林崩壊写真を多数公開。
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楽しい山里暮らし実践術

大内正伸著/学研プラス(2013/5)ワン・パブリッシング (2021/11/1)2,860円/amazon/Kindle版(電子書籍)2,717円/amazon

学研のDIYマガジン『ドゥーパ!』に連載した「続々・田舎暮らしのDIY術・山里生活編」の書籍化。連載イラストはモノクロだったので、PCデータを調整して紙に出力し、手彩色をほどこしてスキャニング、それをフォトショでお色直し・・・と大変手間がかかった作品である。『山で暮らす 愉しみと基本の技術』と重複する箇所もあるが、斬新なコラムや、ネットでは見れない情報満載で、好評を得ている(現在5刷)。海外翻訳に台湾版『里山生活實踐術』(晨星出版2014)がある。

中国語(台湾)版

囲炉裏と薪火暮らしの本

大内正伸著/農文協(2013/3)/3,300円/amazon

現在の囲炉裏の多くが炭火を使った趣味的なものであるのに対して、炎を立てた本物の生活囲炉裏を提示する。私の実践から囲炉裏の再生と新設の例を公開。炎と炭をあやつるノウハウ、とくに炎と燠炭(おきずみ)の使い分けは、木質燃料を余すところなく使う日本の山暮らしの伝統でありながら、これまで活字にされることがなかった。料理には別章を設け、薪火調理の便利さ楽しさを解説。後半は火鉢、七輪、行火(あんか)、簡易カマド、ロケットストーブ等についても詳述する。薪火(まきび)は筆者の造語である。現在4刷目(2023.7.5)。
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▶︎書評/西日本新聞


「植えない」森づくり—自然が教える新しい林業の姿

大内正伸著/農文協(2011/4)/2,090円/amazon

山づくり、道づくりに次ぐ、林業3部作。森づくり=植林・・・と誰もが勘違いしていないか? 日本の気候風土は植えなくても自然に木が生えてくる。現在は植えるよりも伐ることが大事。伐られずに荒廃している森がたくさんある。稀少生物は激減している一方で、野生動物の被害はなぜ増えているのか? それも日本の自然と森の特異性から導かれる。マツ枯れナラ枯れの謎にも迫る。また、私の森林ボランティア時代から林業技術書刊行への経緯をかいま見ることができる。スギの挿し木苗の脆弱さについては九州の平野虎丸氏に教えを受けた。現代日本の森林問題を概観するにも必読の書。
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山で暮らす 愉しみと基本の技術

大内正伸著/農文協(2009/6)/2,860円/amazon

火、水、木、土・・・山の暮らしはこの4つのエレメントの循環から成る。木を燃やすことで暖をとり調理し、燃えた灰は畑(土)に還る。枯れ枝を採取したり上手に伐ることで森をよみがえらせ、草刈り管理することで石垣や水路が正しく機能する。そのための基本の技術をイラストで描く。チェンソーの項はそれだけで1冊の本ができるほどのエッセンスが込められており、野石による石垣の積み方は、一般書では初めての図説である。発売以来17刷(2024.7)4万部超のロングセラー。山暮らし・田舎暮らしのバイブルと賞賛され、海外では『里山生活基本術』(晨星出版2014)というタイトルで台湾版、『山中生活の教科書』(Bonus Publishing.co 2017)で韓国語版、『向往的生活』(人民邮电出版社2017)で中国版が出ている。
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左/中国語(台湾)版、右/韓国語版

山を育てる道づくり──図解 これならできる 安くて長もち、四万十式作業道のすべて

大内正伸著 田邊由喜男監修/農文協(2008/2)/2,420円/amazon

『現代農業』に連載した「崩れる林道 崩れない林道」の書籍化である。林道づくりのイラスト解説本は一般書では初めての試みだが、連載が意外に好評だったのと、林業不況の打開策はこれしかないという思いから、出版まで走り続けた。あとがきにも書いたが、表土の大切さが林業でも土木でも理解されていない。日本の気候風土ならではの土の科学が活かされることを期待している。書籍化にあたり全国の四万十式作業道の実施例を取材。思えば最初にタッグを組んだ雑誌編集者のアドバイスから旅が始まった。In DesignによるセルフDTPはこの本から。現在6刷(2022.11.5)。>自著紹介
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図解 これならできる山づくり──人工林再生の新しいやり方

鋸谷 茂・大内正伸 著/農文協(2003/12)/2,420円)/amazon

『鋸谷式 新・間伐マニュアル』に続く、林業本の第二弾である。間伐だけでなく植林、枝打ち、雪起こしまで、スギ・ヒノキ人工林の育林技術について図解している。また、伐採跡地を植林することなく雑木林に誘導する手法も開示されている。林業界は閉鎖的で正しい知識が伝わりにくく、一家言ある林業家がミスリードすることさえある。この本は日本の気候風土において、基本中の基本を押さえた、簡潔かつ奥深い人工林の解説書である。発売以来20年を経てもまだ売れ続け、現在14刷目(2023.3.20)となっている。
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鋸谷式 新・間伐マニュアル──強度の間伐であなたの山が生まれ変わる!!

大内正伸著 鋸谷茂監修/全林協(2002/11)/935円/amazon

『林業新知識』に連載した同タイトルの記事の書籍化である。森林ボランティアから林業に入り込み、実践から林業を学び、各地を取材し続けるうちに、現在の人工林問題で最も重要なのは「間伐」だという結論に達した。鋸谷さんは福井県で大径材施業のマニュアルを普及していたが、私は間伐に特化したほうがいいと感じ、現地取材を経て間伐マニュアルをイラスト化した。それを林業雑誌の編集者が世に送り出してくれた。この本は出版と同時に大きな反響があり、森林組合や行政関係者がまとめ買いするほどの話題書となった。2017年5月に3刷。現在までの累計発行部数は15,000部(増刷のお知らせ)。
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