群馬のカキバナ


アトリエで一日囲炉裏にあたりながら図書館で借りた本を読んでいた。『上州のくらし民具』(読売新聞前橋支局編/昭和52年発行)という本が面白い。当時27歳の記者が突撃取材で農山村を訪ね、民具と当時の人々との関わりを取材するという、読売新聞群馬版に計61回にわたって連載されたものの単行本化である。

当時の人々がまだ囲炉裏やカマドを使っていた頃の写真などもある。興味深いのは写真の巻頭を飾る「けずりはな(かきばな)」と呼ばれる神具(捧げもの、魔除け)である。アイヌが神に捧げるイナウにそっくりなのだ。このカキバナは群馬が中心地であり、神奈川、長野の一部、埼玉では秩父のみ、栃木には見当たらないという。山形には「オタカポッポ」と呼び鷹の形にこしらえるものがある。

夕刻、友人が来て遅くまで話し込んでいった。囲炉裏端で火を燃しながら語ると、僕らも客人も時間を忘れてしまうのだ。