エドゥアルド・グジン


私のボサノバの教科書は長谷川久さんの『ボサノヴァ・スタンダード101』(中央アート出版社2003)だった。長谷川さんのライブを何度か聴きにいったのだが、そのなかでものすごく印象的だった曲がある。サンパウロ出身の作曲家エドゥアルド・グジンの『緑』(Verde)という曲だ。

ブラジル人には大変人気のある曲だというが、どんどん転調する複雑高度な曲で、何かぐっとくる、胸をかきむしられるような曲なのだ。「これを理解し吸収してしまうブラジル人の感覚は凄いですね」と、長谷川さんのwebの掲示板に書き込みした記憶がある。

桐生にやってきてYou Tubeが見れるようになったので、エドゥアルド・グジンを検索してみた。あるある。グジンは歌は下手だけどフィーリングがすばらしいな。これはEstrelaという曲、ギターがグジンである。一緒にやっているおっちゃんも有名な人らしいが、口元でマッチ箱みたいなものを叩いている。これは何? いい曲だ、歌詞が知りたい。

ああ、ブラジルに旅してどっぷり音のシャワーを浴びてみたい!


声合わせ


相方と新曲の声合わせをやる。相方には 小野リサやジョビンの曲を頻繁に聴いてもらっていたのだけど、ボサノバの歌いかたは意外に難しい。抑揚やビブラートをつけてウマイ風に歌うとボサノバにならない。ごく普通の、喋るようなささやくような歌いかたでいいのだ。しかし、それではっきりと言葉が聞こえなければいけないし、抑制の効いた情感が欲しい。すなわちカラオケ的歌い方の対極にある方法なのだ。

しかし、これが実に難しい。というわけで相方に何度も何度もしつこく注文をつけて、歌いかたを修正してもらう。ギターの難易度もかなりのものだ。カポなしのE♭キー、しかもほとんどがテンション・コード。一気に5フレットも左手が移動するコード進行もある。ん~大変かな。というわけで、これから個展ライブまでの期間、毎日メトロノームを前にした戦いの日々が続く・・・。


曲づくり


寒い曇りの日。僕は囲炉裏部屋で曲づくり。相方は和室で表装の仕事。今回の高崎個展のための仕事である。新作紙芝居『神流川なつかし物語』を披露する予定なのだが、そのエンディングテーマを作っている。紙芝居ライブを始めてからこれまで4曲作ったが、5曲目の今回は、ボサノバの曲でキーはなんとE♭。だからギターの指運はすべてハイ・コードで動いていく。まあ、この日のためにボサノバのコードを徹底練習してきたようなものだ。

僕の曲づくりはメロディと詩が同時進行していく。もやもやと詩のイメージが湧いてくると、それを頭の片隅に置いておく。メロディは不意に生まれることがあるので小型カセットレコーダー( アナログですなぁ)を常に携帯している。

しかし、結局は「個展&ライブ」という締め切りに追いつめられて、ギリギリの緊張感から音と言葉が生まれてくる。それをギターのコードで繋いでいく。コード進行を先行させて、それに旋律をあてはめていくこともある。

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ジルベルトが来た場所


天ぷらの残りでお茶漬け。かるく炙った天ぷらを小さく切って醤油だしをかけ、冷や飯を蒸し器で温めたご飯を茶碗に盛りその上にのせる。ワサビ、ネギ、ゴマをさらにのせて、煎茶を回しかける。余り物だけど、ワサビは擂りたてだし、ネギは畑直行。ゴマも煎りたての擂りたてだ。鳥の声を聴きながら、焚き火の暖かさと香りを楽しみながら、庭先で食べる。こんなものが、なんて美味しいんだろう。

昨日、僕らは銀座と丸の内を後にして、六本木ヒルズを見にいった。東京の中央部は凄まじい車と人の群れ。自然のかけらもなく、人々は携帯電話にせわしく話しかけている。都市緑化の話しも、東京都が花粉症対策にスギを皆伐する話しも、この景色の前では虚無に感じてしまう。焼け石に水どころではないのだ。

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車の音もほとんど聞かれない静かな山暮らしだが、最近は「ドン!」「カン!」「バサッ!」と変な音が聞こえてくる。実りの秋で、クリ、カキ、クルミ、ドングリなどが地面や屋根に落ちる音なのだった。朝、畑に出て草刈り。枝豆を収穫。これは『現代農業』の連載を読んでアトリエに訪ねてきてくれた隣町のIさんが持って来てくれた丹波の黒豆だ。背丈は伸びなかったが、虫害もなくよく結実した。茹でて食べるとすばらしく旨い。

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