シルバーさんたちと点穴を開け、風道を抜いた尾根部のヤブは徐々に回復し、目通しがきくようになっている。
マツ枯れはマツ食い虫や酸性雨説がこれまでの原因とされていたが、点穴や草刈りの仕方でみるみるうちに再生するのである。
点穴は簡易的なものだが、3〜4mピッチでかなりの数を開けてある。
空気通しができればヤブは自然に消えていく。植物本来の固有の形に戻り、穏やかに棲み分けする。これまでの植物生態学から完全に欠落している視点である。
竹林そのものにはほとんど手を入れていないというが、目通しが効く美しい竹林になっている。
コナラ林の下にはおびただしい実生が! 秋のどんぐりが一斉に発芽したのだ。地中の空気が通っているとタネも発芽しやすいという。
ここは抵抗柵をステップのように連続させ雨水の流れを抑制分散させた場所。気になった矢野さん、さらにメンテを繰り返す。
縁石が通路側に倒れ始めたものが、U字溝に穴を開けただけで戻り始めている。
田村公三代のお墓の両側にあるカヤとサクラ。どちらも瀕死の重症だったが、
まだ泥の痕跡が残るが、苔むし始めた田村公の墓。皆で手を合わせ、下山。
下る途中の墓の土留め下にもほとんどすべてブレーカーで空気穴を開けてある。U字溝の穴開けと合わせるとその数は膨大なものになるだろう。
手水舎も完成していた。
さて、福聚寺で最も重要な「大地の再生」施工箇所がここである。その意味と施工前の様子は、私が初めて取材した昨年6/13のこちらを見ていただきたい。
その3日間の工事を経てここの「扇の要(かなめ)」のかさ上げが完成した。このとき「有機アスファルト」の施工を初めて見させてもらった。
ところがこのかさ上げは凹凸がありすぎて車の乗り入れに寺側からは不評だった。そこで何度か追加工事をしてなだらかになるように有機アスファルトの擦り付け工事を追加している。
公道側にはさらに枕木を埋め込んレベル調整している。
枡やマンホールと飛び石が設置されている入り口の道路脇にも、実は地下にいくつものコルゲート管が埋められており、有機物や炭がたっぷり使われた複雑な工事が眠っているのだ。
すり鉢状の福寿寺の敷地において、すべての水が集まり一気に公道へ駆け下りていくというこの場所の処理の重要性。ここの水に加速度がつくことで、敷地全体の水を引っ張ってしまい、浸透性を阻害し、泥水を発生させる。実は、このような場所は現代建築の公道との擦り付けで頻繁に見られる。
そこに何かワンクッション置くことで、水流を弱めて地下浸透を促すことで、周囲の植物は健全さを取り戻す。それがまた大地の空気通しや浸透性を高めてくれる。かつてそのような斜面の変換点には鎮守の杜を置き、池や大樹などがセットされていた。昔の人たちはその重要性を経験的に知っていたのではなかろうか。
矢野さんの解説はさらに続く。寺門前の階段、浸透性のない重い素材を使っているために、どうしても泥水が出る。そこにも水みちを切って誘導させると解消する。
門の扉下部に腐食の跡。水はけが悪く乾かないために起きる現象。
ハンドブレーカーで壁際のコンクリートに穴を開けることで、その湿気は解消する。
こうして敷地全体の見回りとこれまでの工事の検証は16時を過ぎまで続き、そこから作業が開始された。まずは本堂と庫裏の中庭、雨落ちの水路はラス網に土モルタルで仕上げたが、より浸透性の高いゴロタ石を置く仕上げに変えることになった。
植木も風通しのよい配置に一部植え替える。
植え込みの縁石も割って一部は取り外し、空気通しの良い方向に変える。
18時に作業終了。宿舎は近所の空き家をお借りして、そこで自炊。私も料理を手伝う。