クワの実、昔の話を聴く


イノシシが気になり、早朝から見回り。またジャガイモが2カ所掘られている。しかし派手な掘り方ではなく、しかも食べ残しが今回は2個転がっている。変な奴である。いま畑のジャガイモは一株に何個くらい、どのようなサイズで付いているのか調べようと、大きめの株を選んで初のジャガイモ掘りをやってみた。大きいのは2個、あとはまだ小さな小イモ状態だった。最初にし尿を捨てた穴の近くに春先、菜の花が出てきたので興味深く見守っていた。それは周囲の菜の花よりも濃い緑色をして、かなり大きく育っていった。種を結び、いま倒れかかっているその株に、アブラムシやカメムシなどがびっしりと付いている。窒素分の多い肥料を施すと「濃い緑色」になり「虫害を呼ぶ」というのを目の当たりにした思いだった。

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朝、畑を見回りつつ目に入るクサイチゴを摘みながら食べ、落ちているクワの実を集めて洗って食べる。これだけで一日のビタミンC必要摂取量がとれてしまうのではあるまいか。日本にも素晴らしい野生のベリーはあるのだが、これらは虫に食われやすく、落下したものは痛みが早い。まとめて大量に採取できないので加工品が作りにくい。今の季節、最も湿気に満ち、生き物の気配が充満している。それでも鳥や虫たちと競いながら、毎日少しづつ、この野生の甘みをいただくことにする。草取りを終え、お茶を一杯飲んで集会所へ行く。

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今日は町と県の補助事業の映像収録で、地元のおばさん(ん、というかオバアサンですね)たちが郷土料理を披露してくださる。僕も補助スタッフで参加。ヨモギ饅頭、トチノキの葉でくるんだちまき(地元では「つつっこ」と呼ぶ)、きゃらぶき、などを皆でわいわいがやがやと話しながらつくる。ついでに昔の話などを聞き出す。僕的にはトチの葉の使い方、それに薪の話や水車の話が興味深かった。

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昔は競い合って採った薪、その場所や採取権も厳格に決められていて、山の木質素材を余すところ無く使った時代。それでもおばあさんたちの中には囲炉裏跡に薪ストーブを設置していまも薪を使っている人がいた。

「梅雨時期でも家が乾くからいい」
「煙にあたると風邪をひかないんだよ」

と炎の魅力を語る。かつての村には共同で使う水車小屋が二つあり、そこで収穫後の麦などを搗いていた。今年は春の雨が少ない異常気象で作物の出来は最悪だろうと、皆口々に言った。

「今は道があって食べ物も簡単に手に入るからいいけど、昔は雨乞いで薬師様へ水を貰いに行ったもんだよ」

料理もできて、集会所の中(かつての分校舎)で試食会。区長さん自らシュロの葉を使ったハエたたき作りを披露してくださり、そのクラフト作品をお土産にいただいて帰る。

「今はハエだって少なくなったが、昔は蚊も多かったしノミにも食われたもんだ」

農林業の使役動物として大型の家畜を飼い、その糞尿にまみれた不衛生な時代。しかしその排泄物は土に返し作物を豊作させた。その手さばきと口調に、かつての山村生活の厳しさをかいま見たような思いだった。

「シュロの縄は水に強いんだ。昔は皮(毛)が売れたんだ」

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和やかなうちに会はお開きとなり、おばあさんが竹カゴを背負い、木の杖をついて帰って行った。それは100年前と同じ光景だったろう。そしてもう二度と見られぬ光景になるのだろうか。

Stay together  離れずに
learn the flowers  花々から学び
go light  身はかろやかに

(Gary Snyder)

僕らはいま、優れたエンジン機器を手に入れた。そしてPCをはじめとするハイ・テクノロジーを駆使することができる。世界じゅうの真実の情報をやりとりする手段も身につけた。さて、どんな山村ライフが構築できるかな?

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