集落支援員3回目の取材へ。桐生から神流町まではたっぷり2時間。役場から持倉集落へは20分はかかる。
今回は途中から相方のyuiさんに運転を任せて、私は助手席でマニュアルと首っ引きで新調したデジカメ操作の勉強である。こんな絵はコンパクトデジカメでは撮れなかったな・・・。
持倉到着。雨が上がり雲が流れる。コスモスが咲いていた。
広葉樹が少し色づいている。
区長さんのお宅へ。奧様の写真を『聞き書 群馬の食事』(農文協)のカラーページでお見受けしたのでその話をすると、本を持ち出してきて昔の食の話に花が咲いた。当時の撮影メンバーはもうみな亡くなられたそうで、囲炉裏の写真のお家も無人だそうだ。
驚いたのは、ここ持倉にもかつて立派な水車があって、麦搗きや粉引きがなされていたことである。小麦は一番粉をうどんに、2番粉をおやきにしたそうだ。おやきの厚みは2cmほどもあり、中に味噌を練り込んだり、古漬けを刻んで入れたのである。それをまずほうろく(鉄平鍋)で両面をよく焼き、それを囲炉裏の灰の中で焼いたのだそうだ。最初に表面を焼くことで、灰が着きにくくなる。
これを聞くと、イベントなどでよくや焼かれているおやきとは似て非なるものだということがわかる。イベントでは地粉は使うが器械挽きの精白した粉を水道水で練りガスや電気のプレートで焼く。そして厚みが違う(イベント仕様はもっと薄い)。
一方、昔のものは・・・
1)まず石臼で挽いた自家製粉であること(それも挽きたてであること)。
2)ふすまが含まれた全粒粉であること。
3)保存料を使っていない古漬け(乳酸菌が芳醇)もしくは自家製味噌(これまた同じ)。
4)そして練り水が山の水(塩素殺菌なし)であること。
5)鉄鍋で焼き、灰の中で炭火の遠赤外線による蒸し焼きをしていること(だから2cm厚でも火が通る)。
補足すると、石臼で挽いたものは摩擦熱をそれほど持たないので、風味が損なわれず、天然酵母が生きている。だから、練って寝かせている間に多少のふっくら感が生じているはずである。小麦の中にいる天然酵母が発酵するのだ。発酵は炭酸ガスで膨らむ(柔らか感がでる)だけでなく、味にうまみと甘みをもたらす。これは、水に塩素が含まれていないことで、発酵が促進する。
イベントの屋台でおやきを食べて、「ああ素朴な味ぃ~。でもやっぱ、ハンバーガーのほうがいいや」なんて思ってはイケナイのだ。私は、自分で無農薬の小麦を栽培して実際に石臼で挽いてチャパティを作り確かめた(こちら)。だから、素朴なことは素朴だけれど、もっと遥かに感動的に美味しいものなのである。真のおやきというものは。
食の情報だけでも有意義な取材だった。区長さんはかつて国有林の伐採と販売に従事されていた。コタツのテーブルはシオジの一枚板である。杢の波目が美しい。
帰りに叶山の石切り場を望遠で撮ってみた。
それから藤岡の友人の田んぼを見に行った。以前、田植えを見学した自然農の田んぼである。
下りたついで夕食は藤岡市本郷にある「鶴商文庫」。ツナとトマトのパスタ。ここはマンガがどっさりあって図書館のよう。だから「文庫」。ジャンボハンバーグが有名だけど今日は気分的にパスタ、だ。やはり、新デジカメは美味そうに撮れるネ。
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