日本海を眺めながら、大山の中腹まで車で登ってみた。途中、芝生の牧場のような場所がたくさん出てくるが、柵がない。
芝生の生産地なのであった。細かく切り分けて束ねている作業風景を見た。ところで、ガードレールの下にもさもさ生えているのはシダだ。このような光景はちょっと珍しい。
山の中は湿潤だ。かなり雪に覆われるのだろう。林縁にマント群落がよく発達している。道路の切り土は緑に覆われ、露出した土はほとん見かけない。
魚の多そうなヤブ沢だ。
ここではナラ枯れ防除の薬剤作業が施されていた。
国の研究者はナラ枯れの主原因はカシノナガキクイムシ(通称カシナガ)による被害としており、枯れたものは寸断して燻蒸密封。まだ元気な木の幹には「粘着トラップ」をぐるぐる巻きに。そして、このシート状の捕獲シートの名前は、なんと・・・・
「かしながホイホイ」(爆)。いや、ホントだぞ! あの「ア―ス製薬」謹製なのだあああ(→こちら)。
*
閑話休題。手入れ不足(間伐送れ)の人工林も雪の多い地域は自然の間伐(雪折れ)が入るので比較的明るく下草も生えている。
特異な岩山に出合う。船上山(せんじょうやま)といい隠岐から脱出した後醍醐天皇方との古戦場でもあるという。草原になっているのは3年ごとに野焼きしているのだそうだ。草原を維持して希少種となった草本や昆虫を保全するためである。
火入れをしないと木がどんどん生えてきて森になってしまうからだ。日本にはもともとたくさんの草原があり、牛馬の餌に屋根の材料にと使われていた。それに寄り添う草原性の昆虫もたくさん種類がいたのだが、今は草原の喪失とともに絶滅危惧種がとても増えた。
東側に回ると滝が見えた。
大山の裾野は人工林、上のほうは自然林がよく残されている。その境界にはやや大きめのスギと広葉樹が育っているのは、昔は植林のとき境の目安として木を残したからだろう。
*
倉吉に下りて、役場でパンフを入手し「白壁土蔵のまち」打吹(うつぶき)地区を見学。蕎麦に期待するも、イマイチであった。
今日の宿は三朝(みささ)温泉だ。格安、木造、本物の源泉掛け流し、という条件でネット検索して引っ掛かった宿だ。建具はすべて木製で、建具の博物館のような建築であった。
三朝温泉を訪れたのは今から6年前。四万十式作業道の取材で岡山を訪れたときだった(日記)。ちょうど近くにある国宝「投入堂」が90年ぶりの修復直後で、どちらかといえばそれを見るのが目的で、帰りぎわに三朝温泉の共同浴場「株湯」に入ったのだった。雷で土砂降りだったので落ち着かず、ゆっくりお湯を味わえなかったのが心残りであった。
その株湯は2年前にリニューアルされ、すっかり姿を変え近代的な建物になってしまった(湯船も石に変わったらしい)。以前の株湯はひなびた風情ありまくりだったので、ちょっと拍子抜けしたのと、宿の内湯で十分満足したので足湯だけ入らせてもらう。
宿の近くの酒蔵(藤井酒造)で「正宗」にごり原酒を購入。三朝温泉の源泉で割って「濁り酒の温泉割り」で飲む。
三朝温泉はラジウムの濃度が日本一高い「世界屈指のラドン泉」で「三晩も泊まって三回朝を迎えるとどんな病気も治る」ところから名前が付いたという。株湯の立て看板にも「放射線のホルミシス効果」と書かれている。これを読むと、あたかも「原発の人工放射能も微量であれば体にいい」と誤解を生みそうだが、私は自然の放射能と原発由来の人工放射能はまったく別の物であると考えている。
*
写真は三朝温泉の神社にある社寺林である。神々しいまでにパワフルなのが解る人には解ると思う。