投入堂


田辺林道の取材3回目。岡山県の新見市で行なわれる国有林の作業道作りのイベントの準備に、田辺さんたちが林道作りに行くというので追いかけた。16日にアトリエを出発。それからキャンプをしながらいろいろな所を回って昨日25日に帰還した。

今回の旅の初めは鳥取の「投入堂」だった。かなり昔からこのお堂は図版で見ていたが。現物もイメージ通りだった。いや、眺めているうちに、その不思議な美しさに圧倒され始めた。下から見上げると端正に見えるように計算された屋根は、実はかなり複雑な構成になっている。床や壁の構成も面白い。オランダのリートフェルトの建築、ミロのビーナス像のような、大理石彫刻のような美しさを喚起させた。

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後に新聞記事で、90年ぶりの修復直後であることを知った。しかし、下山を始めた頃、にわかに雷雨がやってきた。最初の岩場にかかった頃、土砂降りとなる。

小止みになり、下りの滑りやすい道と雷音におびえつつ、ようやく社務所に着く。そこにシンプルながら極めて特徴的な金色の仏像の写真があった。この像は本来は投入堂の中にあったものらしい。現在「宝物殿」で見れるという。濡れそぼった僕らは宝物殿へと急いだ。

それは「蔵王権現立像」といい、運慶の父、康慶の作品という説もあるという。他に類のない動的なポーズであり、投入堂の中にあったとすれば、それはあの建物にふさわしい仏像だと思った。旅の初めになぜか運慶のことを考え、この旅の帰りに奈良に立ち寄ろうかなどと考えていた僕は、不思議な感動に打たれた。

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出典:http://isumu-shop.jp

旅の最後に伊豆の願成就院(がんじょうじゅいん)を訪れた。奈良「円成寺」の大日如来像を僕は、’94年、奈良国立博物館「運慶快慶とその弟子たち」展で見ているのだ。興福寺の無著・世親立像は春秋の特別開扉のときしか見れない。見るべきは願成就院の運慶30代の力作たちであろう。

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今回は温泉もつとめて入ってきた。長野の野沢温泉、鳥取の三朝温泉、兵庫の有馬温泉。それぞれすばらしい湯であった。日本は広い、そして美しい、としみじみ思った旅であった。

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