奈良室生へ


愛車SUBARU XVが修理から戻ったので久々のロングドライブ。奈良方面へ。2018年の5月、大地の再生の取材に入ったばかりの頃、奈良宇陀市室生での講座を取材した。その農家民宿「鎌倉山農園」のオーナーであるUさんから、今年に入って何度かお電話を頂いていた。Uさんの敷地のすぐ上部に砂防堰堤の工事が計画されているというのだ。まずは当時の「大地の再生」講座をご覧いただこう。

とりあえず国土交通省の資料をネットで調べてみると、管轄は「紀伊山系砂防事務所」というところで、僕のnote記事『人工林の科学』にも書いた紀伊半島2011の人工林大崩壊地の工事も同じ管轄なのであった。新著もほとんど手を離れたところで、Uさんの強いお誘いもあり一度現地を見に行ってみることにしたのである。

そして、もう一つ目的ができていた。新著のカバーにポートレートが必要なのだが採用予定していたものがボツになってしまい、僕の写真がなくて困っていた。そこでUさんのご近所にスタジオを構えている写真家、木下伊織さんに撮ってもらうことにしたのだ。

あの講座から4年半の歳月が流れていた。15:00過ぎに鎌倉山農園に着き、さっそくUさんに工事予定地を案内していただいた。そこはUさんの古民家にかなり近い場所で、農地へと続くゆるい谷の斜面だった。「大地の再生」の講座で施工した場所の続きでもあり、当時は荒廃竹林であったが今は「大地の再生」施工の効果と、その後のUさんの手入れによってすっきりとした空間になっいる。

石に着く苔の色も鮮やかだった。

上部には別の所有者のスギ・ヒノキの人工林になっているが、間伐が入って間に広葉樹が再生しており、今時の人工林にしてはかなり良好な環境になっている。

間にはケヤキの大樹などもしっかり根を張って斜面を守っており、砂防堰堤工事になればそれらも伐られてしまうとのことだった。その後、工事用道路の取り付きなどを確認し、全体像がつかめたところでUさんの古民家に戻る。

囲炉裏のあるお部屋で砂防堰堤の計画図などを見せていただいた。いま流行りの「鋼製スリット」のある透過型ではあるが、上部の堤長は50m以上、堰堤高は10m近くあり、これをあそこに作られたら景観が酷いことになるのはもちろん、「大地の再生」的な空気通しの観点からみても致命的に周囲の環境を傷めてしまう。

さらに以前の取材で見せていただいた「子安地蔵」・・・カヤの一木造りで室生寺の金堂の本尊に衣装などが酷似し「村の守護仏として深く信仰され、子授けや安産に御利益があると、近隣はもとより全国から参拝者が絶えません」(産経新聞奈良版2013.10.5記事)という秀美な仏像が、その下流に安置されている。

夜は「湯元赤目山水園」を案内していただき温泉と食事をごちそうになる。僕はこの辺りに全くうといのだが、赤目四十八滝という名勝があり、サンショウウオが見れるミュージアムもあるという。オオサンショウウオも生息しているというから、元の自然はなかなか素晴らしい環境なのである。

ともあれ聖山鎌倉山とともにある歴史的文化的なこの山里を、コンクリートと鋼鉄による土木工事ではなく自然保護と的確な手入れによって守っていくべきであろう・・・というのが予定地を見た僕の最初の印象である。明日は周囲に既に建設された、あるいは建設工事中の砂防堰堤を、いくつか案内していただくことにした。


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