昨日、Uさんの奥様に子安地蔵菩薩を見せてもらう約束をしていた。午前中の空き時間に案内してもらった。
カヤの一木造りで室生寺の金堂の本尊(釈迦如来)の様式と酷似しており(とくに衣文など)、何らかの理由で近世に室生寺金堂から移されたのではないかと言われている。
左が収蔵庫で右が本堂と集会所になっている。仏像はすばらしいものだった。間近で見ることができ、しかも横にも後ろにも回れて彫刻的な美しさも堪能させていただいた。制作年代は平安時代前期。奥様が謂れなどを詳しく解説してくれ、とくに興味深かったのは天井の電気を消して昔と同じライティングで見たときの表情だった。目がはっきりと見開いて見え、微笑しているかのような穏やかな表情になるのだ。
さて、また作業へ。上部の陥没穴を石と杭でしっかりとさせておく。
ここは水流が落ちて消えていく陥没穴なのだ。大地の再生にはその土地の特質によって、それに対応した様々な処方を編み出していかねばならない。ちなみにこの杭は主催のOさんが山から伐り出して皮むきしたヒノキ丸太である。
移植ゴテで水みちを明快に掘って、点穴(ミニ池)を置く。道は適度に蛇行させたほうがよい。
上流は手掘りで溝を。
ここは最上流部の荒廃竹林を切った場所。ここに溝と点穴を開けただけで地中に空気が通り、下流の水量が増えるはずである。
明日はこの点穴に竹の枝葉が挿し込まれることであろう。
道にも炭とグランドカバーがまかれていた。
主催者Oさんの奥様は受賞歴やミュージアムコレクションがあるフォトグラファー(手前右)。参加者の集合写真を撮られるというので、写真機を変えて私も撮らせてもらった。
作業途中でUさんが何度かおっしゃっていたが、これから石積み補修の仕事は増えていくし求められるだろう。多くの場所で手入れを放棄され、崩れる石垣が出てきている。しかしそこは自然農をするには絶好の場所なのだし(獣害を除けば)、そのような人たちはコンクリートで醜い景観にしたくはないだろう。
息の根を止めてしまうコンクリート土木でなく、石積みの基本と大地の再生の手法。合理的で美しい自然景観、植物との融合、そしてその維持。ふたたび石積み技術を伝承し、後継者を育てる必要があると強く思った。今回の作業で大きな課題を与えられた。
帰りは天理市の酒屋で「篠峯」をゲット。天理の本店で彩華ラーメンと餃子を食べて、道の駅で車中泊。
明日は大阪で建築を見てから帰る。