ぬるい風と冷たい風/ゆいま〜る @鎌倉山農園(1)


奈良で行われる「大地の再生 ゆいま〜る @室生 鎌倉山農園」に参加してきた。場所は前回4/17-18に講座が行われたと同じ宇陀市室生。農家⺠宿「鎌倉⼭農園」の敷地。昨年の台風で段畑の石垣が崩れ陥没がおきている。そこを大地の再生の手法で修復していくというもの。矢野さんが現地を見立てた後、今回はスタッフと参加者の結だけで行われる。

フェイスブック経由で主催者からお誘いを受けたものの、奈良は遠い。が、気になったのは石垣の崩れである。大地の再生的手法ではこれをどう修復するのか興味がある。また今回は参加費がなく(金額を定めず⾃由喜捨)お寺に寝袋で泊まれるのも面白い。

夜に出て近くの道の駅で仮眠して、指定駐車場所の道の駅に着く。正面の山が鎌倉山。この麓に農家民宿がある。

裏には宇陀川が流れている。水量は多いが水は濁り気味。リュックに道具を詰めて農園まで歩いた。途中、子安地蔵菩薩(重文)のある安産寺を通る。農園までずっと急な坂道だった。

すでにスタッフは集まって敷地の崩れた場所の確認に行っている。

なかなかすてきな敷地・古民家である。オーナーのUさんは前回の室生西谷の講座にも来られていて、私の本の読者ということでいろいろ話していた方だった。Uさんによれば、8年前に来た当初は草だらけで家もだいぶ手を入れたらしい。屋根は瓦だったが、すべて下ろしてガルバリウム鋼板に変えている。

スタッフと参加者が集まって自己紹介。最後にUさん夫妻が挨拶する。建物には手を入れて形になってきたが、外環境はまだ力がなくて十分できていない。その一部に手を入れようとした矢先の台風で、周囲でも数百カ所山崩れが起きた。しかしコンクリート土木はやりたくない・・・というわけで矢野さんの大地の再生にたどり着いた

敷地を見に行く。すでに材料が届けられている。赤い土嚢袋は炭だ。

杭に使うヒノキの丸太、コルゲート管。

母屋の隣に、緩やかに開かれた段畑が続いていて、一部に果樹やスギが植えられ、奥は荒廃竹林になっていた。昭和30年代の航空写真をみると山のかなり上部まで畑や田んぼがあったらしい。

まずは竹林の整備と、それを運び出して素材集めをする。

母屋に近い下段の畑ではコルゲート管を入れるための掘削が始まる。

ここはこちらに来られてから造られた道。道を入れるにもかなり苦労されたそうだ。

上から母屋と1段目の畑を見たところ。段畑はゆるやかな谷地形の中に作られている。

1段目の畑に崩れ落ちている石積み。上の2段目には複数の陥没穴があり、各石積みの下側からが水が流れ出しているカ所が多数。前回の西谷と同じく水の豊かさを感じる。

枯れ竹と生竹の両方がたっぷりと出材された。大地の再生ではこれらを資材として用いる。生竹は枝払いをしておくのだが、竹の幹を道具にした枝払いの方法を知らない人がけっこういたので教えてあげることにした。

枯れた竹は裁断せず長いまま運んだほうが効率が良い。ブルーシートを用いて4人で吊り上げる。

枝葉はやはりブルーシートでくるんで、二人掛かりで運ぶのである。

荒廃竹林とはいえ皆伐はしない。やりすぎると環境が急変してしまう。すると陽が当たりすぎて風が生ぬるく感じられるそうだ。風の通り道を筋で抜くようにすれば、冷たく爽やかな風が流れてくる。空気の温度が作業のバロメーターだ。

下では崩壊石積みの修復が始まっていた。

まずは基部に溝を切りながら、大きな石を取り出す作業。

ここでお昼。自由喜捨で持ち込まれた食材などで、賄い担当が母屋の台所を借りて作ったもの。

野菜サラダ、豆と野菜のカレー、ピクルスなど。

今回の工事は、講座形式ではなく「ゆいま〜る」と名付け、結い作業と自由喜捨(自由意思により金銭や物品を納めること)によって運営されるという試み。ゆいま〜るとは、沖縄の⽅⾔で「ゆい(結い、出会い)がま〜る(廻る、順番)」という意味だそう。

あえて矢野さん抜きで新しい現場にチャレンジするスタッフたち、それを受け入れるUさん夫妻、新しい時代を感じますね。

(続く)


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