HACHIYADO囲炉裏暖炉づくりワークショップVol.3/2日目


ほぼ全員「寝袋」持参のお泊まりという熱いメンバー(笑)。今日のHACHIYADOの朝は茶粥。

これにいろいろなお惣菜がつく。琵琶湖の小魚や昆布の佃煮、梅干し、ぬか漬け(これは僕も持参したのだが/笑)。ちりめん山椒の山椒がやけに香る。訊いたら湖北の朽木で採ったものだという。

座学を始める前に、火鉢の点け方を皆に見せる(イタル君が一部始終をい動画に撮ってくれた)。一般には専用の「火起こし」に黒炭を入れてガスにかけるが、それでは時間がかかりすぎるので、僕は以下のようにやるのである。

1)囲炉裏暖炉や焚き火などでできた消し炭(熾炭)を用意しておく。

2)火鉢に黒炭を灰の中心に、やや深めに2本ほどセットしておく。

3)その上に熾炭を少し重ねて置いておく。

4)自家製の真鍮で作った金網に熾炭を丸く並べてガス台にかける。

ここで時間を計ってもらった。20~30秒もあれば熾炭に火がつく。

5)点いた熾炭をセットしてある火鉢の炭の上に載せる。

6)息を上から吹きかけて火を大きくしながら下の炭に移していく。

ここで面白いのは、火というのは下から上に燃え上がるので、点火した炭も下にもぐりこませたほうがつきやすく思うけれど、実は炭の場合は上に置いて上から息を吹きかけたほうがずっと早く火が大きくなるのだ。

このように熾炭と黒炭(市販のやや硬い炭)をコンビで使うのが火鉢のコツである。そうでないと火鉢を使うのがおっくうになってしまう。最初から備長炭などを使おうものなら、火が点くまでにかなりの時間を要し、ガス代がもったいないということになってしまう。

ただし消し炭(熾炭)は販売していないので、日常の火のある暮らし(囲炉裏、かまど、囲炉裏暖炉、焚き火)で作っていくしかない。

新たな参加者のご夫婦も来られたので、もう一度自己紹介と簡単な座学をして、外へ。

火棚とノドのサイズの修正をする。

もう一度セットしなおして点火。今回は床板も塞いで、裏の開口部もしっかりブルーシートでカバー。火の高さも実際の位置に高くしてみた。昨日よりも引きはずっとよくなったが、やはりときどき煙が漏れてしまう。

僕とイタル君で2階に上がり、煙突の先端を長くしてみたり、分岐点を塞いで窓の外に煙の先を送ってみたりいろいろやってみる。イタル君は。わずか10㎝煙突の先端を長くするだけで煙の勢いが増すことに驚いていた。

通称、「煙突効果」といって、煙突が長ければ長いほど気圧の差で引きが強くなる。もう一つは煙突の両端の温度差の問題があり、出口が暖かいと煙は出にくくなる。また、出口で気流が乱れてもよろしくない。

一番いいのはストレートに屋根から直で抜くことだが、瓦屋根で素人工事では雨仕舞が難しく、ここは季節風が強いという心配もある。2階の窓を利用して出せないか? もしくは3階の屋根裏から抜いたらどうか? といろいろ実験をしてから結論を出したい。

昨日よりはまあまあ抜けるので、リンダ嬢が中華鍋に燻製セットを仕込んで火にかけた。それにしても、暖かいわりにベニア板が延焼しないこと、そして煙突が熱くならないことに参加者は驚いていた。

屋根からの抜きを薪ストーブの業者に頼めば済んでしまうことなのだが、いろいろ実験して火と煙という流体の面白さを実感するのも有意義なことだ。薪ストーブに比べて囲炉裏暖炉ははるかにデリケートで、部屋の大きさや位置によっても微妙な問題が起きるということを皆が実感した。

煙抜きの難易度は高いにしても、囲炉裏の室内の炎の迫力と美しさに誰しも魅せられる。そしてなにより薪の消費量が少なく(枯れ枝や剪定枝が日常の薪になる)、躯体が石や木材、土など自然素材で成り立っている、という魅力も感じたことだろう

イタル君と参加者たちが燃焼と排煙の実験を繰り返している中、今日だけやってきたご夫妻(ご主人は大工さん)にノートパソコンで座学をする。先日発見した福岡正信の囲炉裏のYouTubeを、奥様がご存知で話が弾んだ。

囲炉裏と神社や水源の森は、日本人の精神に分かち難くつながっており、戦後GHQは囲炉裏の文化を切り離そうと画策し、山村から見事に囲炉裏は消えてなくなった。だが、いま現代の焚き火ブーム、不思議な炎の復活劇はいったい何なのだろう?

数年前『西日本新聞』が僕の『囲炉裏と薪火暮らしの本』についてこんな書評を書いてくれたことがある。あの頃から、じわじわとブームが始まった感がある。

「囲炉裏のある生活」をすすめる本書は、私たちがかつて知っていたはずの、「暮らしの喜び」について思い出させてくれる一冊でもあるのだ。(『西日本新聞』2018/12/14)

囲炉裏は皆でひとつの火を囲む・・・というのがまたいいのである。外で三又で火を囲むのでもよい。あれも自在カギをつるせばまさに雰囲気は囲炉裏なのである。そうでなくても家の中に火鉢という小さな火があるだけで、何か家の中心ができたような、温かな気分になれるものである。

僕のアトリエの囲炉裏暖炉は、拙著『「囲炉裏暖炉」のある家づくり』で書いた通り、最初は普通の暖炉を設計していたのだが市の条例で引っかかり、設計変更を求められた際に偶然生まれたものなのだ。僕の場合は工務店の期日に追われて排煙実験などする余裕もなく不安だらけの点火式だった。

しかし、見事に煙は引いてくれて、7年経った今もほとんど問題なく使い続けている。「それを1回目で成功させてしまったのは凄いことですね」とイタル君が言った。

2基目の囲炉裏暖炉となるHACHIYADO では、土間と基壇、上がり框と囲炉裏暖炉の石の突き合わせというような、納まりの解決は見えた。が、フードと煙突の設計施工に関しては課題が残り、次回のワークショップでその組み立てと点火式となる(後半に同地で大地の再生+間伐講習会も予定している)。

夕刻の感想会では皆の感動が感じられて嬉しかった。田舎暮らし山暮らし、自然回帰、火のある暮らし、地球再生=ローインパクトな暮らし・・・いま僕らは、その新しい時代の最先端に立っている、「囲炉裏暖炉」はその核になるすごい装置なのだ・・・ということを、僕自身も再認識させられた今回のワークショップだった。

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○参考/古民家の囲炉裏再生から、新築の【囲炉裏暖炉】に至るまで…(note)

▼『「囲炉裏暖炉」のある家づくり』出版記念プロモーション動画。


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