ベイカとオリーブ、秋サワラのにぎり寿司(直会にて)


富田神社での新嘗祭は秋晴れのなか11時から厳かに行われた。稲作りが国教のように連綿と続けられてきた日本では最も重要な祭祀といえよう。今年はGomyo倶楽部でも会員全員に配れるほど米が収穫でき、その新米を味わって僕自身も「つくづく米は凄い・・・」と思わされた(11/2のブログ)。

さて終了後はすぐに帰宅。夕刻からの直会(食事会)の仕込みに入る。朝8:30の直売所の開店と同時に買い物に出て花を購入し、その足で「きむら」で魚を物色。コチが安かったのだが、いまからさばいて昆布じめに仕込む時間はとれそうにないので諦める。

魚は昨日サワラと赤海老を買ってあった。朝獲れのマダコが安く並んでおり、ベイカもまだ透明感のあるものが一箱300円台で売っている。マダコは足の半分をおでんネタに。もう半分は寿司ネタで保存。

ベイカはトマト味をベースに、ニンニク、赤唐辛子、アンチョビ、ブラックオリーブ、ケーパーとともにさっと煮込む。三越で新ものの小豆島産オリーブ塩漬けを買っておいたので、それも入れる。

ベイカもこれだけ鮮度がよいと目も内臓もとる必要はない。なにしろ釣り師の連中は釣りたてのベイカをそのまま調味液に突っ込んで”沖漬け”にして食っているらしいのだ(Aくん談)。だからさっと塩水で汚れを落とし、ザルにあげて冷蔵庫で1時間も水切りをしてからソースの中に放り込めばいいのである。

5時開始。さっそく囲炉裏暖炉に着火。炉の中におでんの鍋。中身はダイコン、日高昆布、干し椎茸、タコとシンプル。

ベイカは墨袋の色が出てやや茶色の仕上がり。が、新漬けのオリーブとパセリの緑が映えて良い感じ。もう一皿はキドニービーンズのサラダと、菜の花のナッツ和え。

そして真打のにぎり寿司。瀬戸内の漁師に言わせると本当に美味しいのは秋のサワラ。体高が10㎝以上ある大物の切り身の中骨を外して2つに割り、柵どりしたものを柳刃で斜めに切って、土佐杉のすし桶で仕込んでおいたイセヒカリのすし飯で握る。

たしかに脂がのって美味い! そしてサワラ特有の香りが立つ。イセヒカリは口の中ではらりとほどけ、魚の味を引き立てるとともに、米粒を噛んで味わう楽しさを教えてくれる。

最初はマダコからはじめて、サワラ、赤海老、締めはMくんが冷凍庫から持ってきた高知「明神丸」のカツオを刺身と握りで。寿司は本わさびもいいが、ものによっては生姜も合い、いまなら柚子があるのでへぎ柚子を添えても素敵だ。しかし、秋の柑橘がまた新米や刺身に合うという・・・何という秋の自然の恵みなのだろうか・・・。

仕込んだお米、白米のイセヒカリは5合。6人で完食! ウチの土鍋「かまどさん」は3合までしか炊けないのだけど、早めに仕込んで2回に分けて5合にして正解だった。僕の経験からするとすし飯は意外に量が食えてしまうのだ(笑)。

土佐杉のすし桶は酢水をはいって3時間ほどアク抜きして、乾かしてから使ったが、さっそく大活躍してくれた。来年の春はこれで「ばらずし」をやってみよう。しかし、まったくスギはすばらしい素材である。ウチの床材もスギ、囲炉裏暖炉の焚き付けもスギ・・・。

スギは日本特産種で古代から様々なかたちで使われてきた(登呂遺跡からスギの矢板が出土している)。とくに食材との関係も深く、酒(酢)や味噌、醤油の仕込みに欠かせない樽や桶はスギの独擅場であった。

日本の収穫の秋は特別な意味を持っている。しかもスギを唯一育んでくれる風土である。地球上でこれほど見事な季節の味わいと意味を持っている場所はほかにないのではないか。

棚田の米ですしを握ってそんなことを考えた。


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