牧野植物園、竹林寺の堀部安嗣、藁焼き塩たたき


2人が今回ぜひとも行きたいというリクエストは、五台山にある「高知県立牧野植物園」であった。高知県出身の世界的な植物学者・牧野富太郎を顕彰して作られた植物園で、建物には博士の植物画や業績を知る様々な資料・遺品などが展示されている。

しかし、残念ながらこのコロナ騒動で22日まで展示館内と温室は閉じられており、野外の植物園のみの鑑賞となった。とはいえMさんは庭師で大の牧野ファン、K嬢は薬草マニアでもあり、2人は到着するやもう入り口からほくほく顔である。

そして正門からチケット売り場までのアプローチが土佐の植物が植えられたスペースで、沢水も流れていてすばらしい。天気もよく、春の開花した花もちらほら現れて、2人はなかなかチケット売り場までたどり着かない。

かく言う私も『牧野新日本植物図鑑』の昭和59年発行第40版を所有しているという牧野フリークの植物好きであり、この植物園にはすでに2度足を運んでおり、初回に訪れたときは、あらかじめ予約した研究者しか入室できない別棟の「牧野文庫」(蔵書や植物画の原画を保管している)にも入れてもらった(そのときの様子は2011年10月22日の日記に詳しい)。

牧野植物園(その12/帰宅)

春の樹木の花、アブラチャン。

シオミイカリソウ。四国(高知、愛媛)、九州(大分、宮崎)の海岸近くの林縁に分布する。

ムサシアブミ。テンナンショウ属のひとつ、僕はほとんどのテンナンショウ属は網羅していると思っていたが、まだ初の出会いがあった。

モクレン科のヒメコブシ。コブシもいい花だが、こいつはメチャ良い! 庭にほしい!

トサミズキ。高知県の山地に自生するが、現在では園芸品種となってよく植えられている。これも春らしくていい花。

ところどころに牧野さんの絵が飾ってあって、館内で見れなくて残念だけどちょっと良かった。

バラ科のサクラ類が開花時期でちょうどいいタイミングだったかもしれない。

しかし、「大地の再生」を学ぶわれわれ3人には、大地の詰まりと木の弱り、暴れが見えてしまい、この植物園の改造を必要とすることを確信してしまった。最も良かったのは最初のアプローチのと土佐の植物のスペースだけだ。あとはかなり土地が疲弊している。

やはり建物のコンクリートベタ基礎と遊歩道のしつらえが重く、地面を圧迫して空気通しが悪いのだろう。早急に水脈を改善しないと枯れる木がたくさん出てくる。公園にもどんどん大地の再生手法で手を入れなければならない。

これは中国原産のトビカズラ、ちょうど開花していたが、普通は滅多に咲かず、咲くと世に異変が起きると恐れられている花とか・・・。源平合戦のとき戦火で寺が焼き討ちされたとき千手観音がこのカズラに飛び移り無事であったという伝説から「飛蔓」と名付けられたという。

ちなみに牧野植物園では毎年盛んに開花しているそうです(笑)。が、果実には細かく鋭い毛があるというので触れるのは要注意。

牧野さんの銅像の前で記念写真。

その足でお隣の竹林寺へ。前回、建設途中だった本坊・位牌堂が完成していた。

建築家、堀部安嗣の設計である。堀部さんはいま注目を集めている重要な建築家であり、私は屋久島の取材帰りに鹿児島にある初期作を見に行ったことがある。ここ竹林寺に納骨堂を設計しており(竣工2013年)2016年に日本建築学会賞を受賞している。

壁や天井は無節に近いスギ材、目地に金属板が使われている。

天窓からの光を竹のルーバーで受けている。これも面白い。

堀部建築を回り込んでいくと、ユニークな仁王様がいる寺の重量感と迫力ある門をくぐる。

苔が美しかった。湿潤な高知なればこその空間美だ。

本堂を参拝したあと、いまいちど納骨堂に行ってみる。前回は雨が降りそうなほどの曇り空だったが、今日は燦々と日がさして木漏れ日が落ちている。

やはり外観もとても美しい建物だ。華奢だけど鳥が舞い降りたような安定感と美しさがある。

ちょっと怖いけど、入り口で合掌してから中に入ると、一番奥の壁の両側に光が漏れていて、回り込むと白い壁と地面から立ち上がった水盤がある。

前回は水が止められていたが、今回は流れ落ちて、静かな水音を立てていた。

前回の竹林寺納骨堂

「ある町医者の記念館」のファサードにも感じた彼のカタチがここにもある。威圧的でない、優しさに満ちたスケール感がいい。

堀部安嗣「ある町医者の記念館」@鹿児島さつま町

昼食がだいぶズレ込んでしまった。朝食は豊浜SAでうどんを食べたので「昼はやっぱりカツオのたたきでしょう!」・・・ということで意見は一致、藁焼き体験ができる「かつお船」に行ってみた。

「最初は塩とわさびで食べてね」とおじさんに切ったカツオをの皿を渡される。高知は何回もに飲みに来ているのに、なぜか私ファイアーは初めてw。いや、美味しかったです。帰りに「ひろめ市場」を案内し、コロナどこ吹く風で昼間から飲みまくっている高知人に驚く2人であったw。

今回、牧野植物園を歩いているうちに、アトリエ敷地の庭造りへの意欲がもくもくと湧いてきた。予算がないこともあったのだが、アトリエの庭空間はまだほとんど手をつけていない。月イチでこの植物園を観察したら、何をどこに植えたらいいかすごくよく見えて来るかもしれない。

奇しくも今日は空海の命日であった。


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