屋久島からの帰路、堀部安嗣の初期建築「ある町医者の記念館」「南の家」を見に行った。実は堀部氏の作品は屋久島にも3棟あり、空港近くにある「屋久島メッセンジャー」はショップなので中に入れる。朝フェリーに乗る前に立ち寄ったのだがまだ開店前だった。
進行方向の異常な台風が日本中を震撼させているなか、鹿児島は建築行脚にふさわしい好天。道沿いに一目でそれとわかる建物が「ある町医者の記念館」。
しかし住宅地の中にあって違和感はない。
コンクリート造だが、白く塗られて漆喰塗りのような和的な印象を受ける。手前の石塀と木のドアが効いている。
シンプルなドア。
長いひさし。このおかげか木製ドアなのに下部の変色がほとんどない。
内部。漆喰塗り。
ドーム型の室内に、入れ子のように楕円型の小部屋が配置されている。
記念館の主人公のポートレイトや器具類が置かれる。右開口部は物置になっていて結構なスペース。
十時型の窓。引き込みで障子や窓の開閉は自由な組合わせができるようだ。ひと区画開けて、庭の空気を入れてみた。
このような建物は家具や展示物の置き方も重要で、その形や配置が空間の質を決定してしまう。実にふさわしい置き方だった。
小部屋の中には記念写真や賞状などが。
丸い穴が空いただけのトップライト。
幅木や廻り縁などの見切りは一切ない。それがこの空間をいっそう美しくしている。しかし、まったく目地のないこの左官は相当難易度が高い仕事だったろう。
窓側を庭から。物置のぶん窓を内側に入れ込める、これもいい雨よけになっている。
屋根の雨受け。
雨受けの排水孔
無塗装の雨受けと白塗りの壁のコントラストが面白く、外の石塀とリズムを奏でているようにも思われる。
トラバーチン製の入り口プレート。予算がなくて石材メーカーのサンプルをそのまま使ったそうだ。
隣接して「南の家」がある。こちらも堪能して、再び北上する。