仙台秀明の現場には10時過ぎに着いた。私は10/2-3、10/19-20、11/1-2に続いて4回目の来訪。前回見た植えられた樹木は、アーチを作っていたマツとケヤキの合体樹(写真右)だけだったが、台原から移送された木々がすべて植えられており、前回は凛として際立っていたマツとケヤキが目立たなく思えるほどだった。
台原の道路側のコーナーにあって「これは手こずるだろうな・・・」と思わせていた横に傾いだマツが、なんと「門かぶりの松」となって玄関前に再来していた。
竜王様の隣にあったフジは手水場の横に。これは大きな石にフジの根がからんでいて、「石ごと運ぶように」と矢野さんから指示が出ていたものだ。ここで藤棚が作られることになるだろう。
注文した野草類、あらかじめ抜き取って保管していた雑草たちが、植えられるのを待っている。その数もかなりのものである。
前回、台原から運び出されたプレハブ小屋は、なんとログハウス風に装飾されていた。
製材で出た端切れの利用だった。皮むき機のロールの痕がなかなかいい味を出している。
茶室の庭も築山と大石の配置、そして大振りの樹木の植栽が終わっており、絵画でいえばデッサンと骨格が決まっていた。今日はここに中石や階段、灌木類の植栽などが進められる。大石は東北の代表的な庭石のひとつ、鳥海石が使われている。
茶室の外構に竹垣が作られる。焼き杉の丸太を支持体にして横に胴縁を3本、そこにランダムな高さで立子を配置する。
茶室の外壁との間に枕木が2本分の通路、そして丸石で路面との境界をつける。これは設計書の仕様なのか。難しい空間だがなんとか納まった。
この茶室の庭はいわゆるコーナの坪庭になるのだが、気脈からみればどん詰まりで、よどみが極まる空間でもある。そこを矢野さんがどんなまとめ方をするのか、私は非常に興味を持っていた。その空間はとても写真では表現できないのだが、矢野さんの大胆さと力量にちょっと驚かされた。
手を入れる前は、なんとも無粋な擁壁に、斜めに造成された法面が流れてる斜面だった。そこに盛り土をして石や枕木や植栽を配置しており、中央に池が造られている(まだ水は入っていない)。
とくに驚かされたのは一番奥のコーナーに植えられた3本の植栽。緑がチャボヒバ 、赤がモミジである。そして最奥に小さなクロモジ。最も負の部分であるこのコーナーをどうするか? 矢野さんの処方は、壁と窓ぎりぎりに縦長の樹木を植えるという大胆なものだった(あとで聞いたが、この植栽はラフタークレーンを使ったかなりきわどいものだったという)。
チャボヒバのちりりとした葉の表情と、それをバックに映える接近したモミジの組み合わせが力強く抜群である。チャボヒバ はいわゆるお屋敷の庭などでお団子のような形(段づくり)に剪定されている樹だが、台原の事務所では手入れもされておらず、ぎゅうぎゅう詰めの中でノッポな自然樹形で育っていた。矢野さんがその個性をここに活かしたといえる。
後でその秘密を知ることになるのだが、石の置き方が独特なのだ。
ちょっと動き出しそうにも見えるというか、動的に感じる。
そして的確な植栽。ここぞという場所にシャクナゲ。
石や枕木の止めに木杭が適宜使われているのがわかる。
コルゲート管も配置されている。施工過程を見れなかったのが残念だが、石積みの間にも通気浸透水脈や炭が配されているのだろう。
作庭の続きが始まる。まずは縁石近くに石を埋め込むようだ。
スコップで整地してセメント粉をかける。ランマーで突き固めたりはしない。
そこに土混じりの砂利。これにセメント粉に水を加えて混ぜたものも別に作って、使い分けていたようだった。
この上に重機で石を置いていく。
大ハンマー、バールなどを使って石の位置の調整。
石の左右に灌木の植栽を植え込み、木杭で補強して、そこにまた砂利を置いていく。
下正面から見たところ。福島三春の福聚寺で矢野さんが地元の石屋チームに指導していた方法と同じである。突き固めずに、基礎部には砂利とセメント粉。
粉のまま使うことで、雨が降ったときにその水分で固まる。土を搗き固めないぶん、短期的に弱まる力を、セメントが補強するのである。そのとき微細な空隙ができるので水と空気の循環や植物の根の共存に適する。(6/13三春福聚寺/有機的石積み術)
自然派の庭師ならセメントなど使いたくない・・・と言いたいところだが、矢野さんはポイントで積極的に使うのである。
(続く)