大地の再生講座@福島県三春福聚寺(2)/有機的石積み術


午後から工事を見学する。電気のボックスのある右手は境内から2本のコルゲート管が来ている。それを埋め戻すための穴を掘る。奥の塀の向こうにU字溝があり、基礎に穴を空けてつなぐことになる。

浄化槽の埋められた左手は、浄化槽の基礎から四周にボイド管で鉄筋が立ち上がっており、それをベースとしてコンクリートが打たれるのだが、それをぐるりと囲むように石積みを配置し、無粋なコンクリート壁を石で隠すことになる。そしてその外側には植栽スペースができる。

矢野さんの石積みは植物を味方にする有機的なものなので、最初の根石を置くときも、基礎を搗き固めたりはしないのである。あくまでも三ツぐわで軽く均すだけだ。

そこに砕石を敷き、重みと水が溜まる所には沈下防止のためセメント粉をまく。

粉のまま使うことで、雨が降ったときにその水分で固まる。土を搗き固めないぶん、短期的に弱まる力を、セメントが補強するのである。そのとき微細な空隙ができるので水と空気の循環や植物の根の共存に適する。

石は庫裏の改修工事で出た礎石である。花崗岩のようだ。ほぼ立方体にカットされているので、割りで調整しながら平積みになりそうである。

丁張をつくって最初の石を下ろしていく。

積み石を置きながら、割りぐり石(直径12~20cmくらいの砕石)を挟み込んでいく。このときも無理に叩かない。

そして、その補強として焼き杭(直径6㎝)を斜めに打つ。これも徹底的に叩くことはせず、程よく締まるくらいに。砕石や割りぐり石が動いたときこの木杭が効いてくる。

このような一様な締めによって、雨のとき水が均等に入っていく。またムラなく乾いていく。そのような空間には植物の根も一様に入っていくそうだ。そして、木杭が腐り出しても、植物の根がその隙間を補完していくのである。

植物の根の張りは、石積みの高さや傾斜に関係なく、一様に空気や水が通る。空気や水が通ることが大切で、それで劣化や風化が防げる。昔の石積みのやり方(空積み)であっても、根石はしっかり転圧した土の上にベタっと据えることが多い。すると空気や水が抜けにくくなる。そこは地形の変化点でもあるので、嫌気的になりグライ土壌ができやすくなる。

反対側からも積んでいく。各種の枡を避けながら・・・という微妙な擦り付け作業。

石積みが順調に動き出したのを見届けると、矢野さんは右手の溝掘りを始める。かなり深い。

ここには寺の境内から来た2本のコルゲート管を埋め込むのだが、土圧で崩れないように杭を打って厚板で支え止める。

さらに深く掘っていくと・・・

水が湧いてきた。やはり、ここには水が集まっている上に出口をふさがれていたのだ。

コルゲート管を置く前にその水流の上に炭をまき、竹の枝葉を重ねる。

その上に一本目のコルゲート管を敷設する。

長めのセパレートを打って止める。

その上に割り竹。

さらに炭。

そしてまた竹枝。

次に大きめの石と土を少し入れ、踏み固めたあと再び炭。そして2本目のコルゲート管を入れる。

土留め板を叩いて修正。

ブレーカーでU字溝につなげる穴を広げる。

手動のブレーカーも使って貫通。そこをくぐって2本のコルゲート管がU字溝へ。

さらに炭、竹、竹枝、土・・・という順に。最終的には有機アスファルトで道路のレベルに擦り付けるのだが・・・

やはり最上流と最下流に管理のための枡を設けたい。

素材は現場打ちコンクリートではなく、なんと枕木。入り込むサイズにチェーンソーで切って、交互に段を作ってはめ込んでいく。セメントは調整には使うけれど、主役はあくまで有機素材。

枡によってかさ上げされた分、また竹をまき・・・

竹枝と炭をまく。これだけ有機素材と空隙ができて、最後の有機アスファルトで塞いだ後、沈下の危険はないのだろうか? 矢野さんに質問すると「沈下はしない」のだそうである。実は、自然の土の中には木の根や腐葉土など、同程度の有機物がかなりの割合で存在している。私たちはそれを知らないだけでなく、西洋土木的な頭になっていて、知らず識らず土を無機的なものと思い込んでいるのである。

石積みもだいぶ進んだ。このような木の根など有機物を味方にする方法だと、大雨のとき液状化せずオーバーフローするので地形が崩壊しない。自然地形はそういうかたちで安定する。木杭と砕石と割りぐり石、それらを程よく同じ圧力で加減調整し、積み石は土と木と噛み合って重心さえ安定すれば、雨が降って地が固まってくる。

終了後、ご住職が訪れて今日の仕事の確認と今後の見通しを聞く。一般化されていない、誰も知らない有機的な土木工事だ。確かな完成図はまだ矢野さんにしか見えていない。


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