大地の再生講座@仙台秀明/開発と樹木の引っ越し


前夜は三春の温泉に入って、レンタカーを私の運転で仙台まで走った。途中、SAで食事しながら、矢野さんの造園屋時代の修業話を興味深く聴いた。仙台はいつもの桂旅館だった。夜も遅く到着したのだが、矢野さんの誘いで缶ビールを飲みながら、宿の部屋でまた1時間くらい話し込んだ。

翌朝はコンクリートと新建材住宅に囲まれた仙台市内を現場へと走るのだが、畑などの農地や緑地公園にまったく出会わない。矢野さんはこの宅地の中を走っていると「道が道のように感じられず、感覚がおかしくなってくる・・・」と言った。

地図で見ても凄まじい開発造成ぶりで、赤丸が「仙台秀明」の現場である。北に広がる南光台(なんこうだい)と呼ばれる住宅団地は、かつて山林や牧場だったものを地元の不動産会社が開発したのだそうだ。戦後の農地改革で土地を失った地主が金のために手放した山林が多かったという。

仙台市は平成21年(2009年/震災の2年前)に『仙台市「杜の都」環境計画』というものを制定・施行しているが(この南光台地区はその「景観重点区域」からはわずかに外れているようだ)、パンフレット概要版には「近年の年の移り変わりは、これまでの取り組みのスピードを上回り、『杜の都』の魅力ある風景を予期せぬ姿に変貌させ、地域としての身近な歴史と文化の面影を損なう憂慮すべき事態を招きつつある」と記されている。

先に「神慈秀明会仙台出張所」に行く。今日明日はこの敷地の樹木のいくつかを抜いて現場に移送するのである。事務所の移転に伴ってこの土地を手放したとき、おそらく樹木はすべて伐採されてしまうとのことで、この仕事を請け負ったときから移送は構想にあり、溝掘など事前の手回しをしていたそうだ。

狭い街中の敷地にけっこう大振りなマツなどもあるので、すべての移植は不可能だが、サクラ、ケヤキ、カエデ、エノキ、フジ、など伐り捨てるにはとても惜しい樹木がかなりある。クレーン車や移送車が入ってくる。

天気がいいので私はまず現場の撮影に回った。

奥羽山脈の山並み。

シンボルツリーのヤマザクラ。この樹を中心に、移送された木々がどのような配置と彩りを見せてくれるのか?

事務所に戻るとすでに根周りの掘削やコモ巻きが始まっていた。このような敷地では地下埋設配(上下水、ガス管など)にも十分注意しなければならない。

菰(こも)は稲わらで作られた筵(むしろ)、移送の際、樹皮が傷つかないよう保護する。

入り口近くにある大物に矢野さんがブレーカーを入れ始める。

ケヤキとアカマツが合体するように育っているもので、このまま2本一緒に掘り出して移送するそうだ。ケヤキの根は地中を長く伸び、おそらくブロック塀を越えて道路側にまで伸びている。それを根切りする。根切りには専用のチェーンソーを用いる。

残りは人海戦術で。

バケットに変えて下部の直根を切っていく。

地山は堆積層で砂質土だが、根の周囲はグライ化して粘土のような質感になっていた。

臭いはそれほどない。これは灰褐色だが茶色の粘土状のほうが多かった。

根切りが済んだところで重機で引き倒していく。

斜めになったところで矢野さんが重機から降りて木に登り、枝を選びながら切り落としていく。ケヤキもマツもこのままでは枝を張り過ぎて移送できない。枝は一本一本揺すりながら切断カ所を慎重に選んでいるようだ。

ここで昼食。秀明のスタッフ手作りの混ぜご飯とお汁。東北はコメと味噌が美味しい♬ ご馳走様でした。

道側からの工事風景。

出入り口にはガードマンさんが来て厳重チェック。宅地なのでかなり気を使います。

クレーンで持ち下げて根鉢に麻布を巻く。根の保護と乾燥を防ぐためだ。ちなみに植え付けるときはこのまま外さずそのまま植えてしまう。やがて土に還る素材だし作業もそのほうがスムーズに進む。

3時の休憩。京都、三重、岡山など、遠方から集まった大地の主要メンバーたち。

現場までは直線距離で約2㎞。第一陣は移送したが、このケヤキ・マツの大物をなんとか今日中に運びたい。倒して積む前に枝をロープで絞る。

残念ながら重量が超過してクレーンが上がらなかった。明日は倍の積載重量のクレーンを使おう・・・ということで本日は終了。今回は「講座」と銘打って一般参加を募っており、地元仙台周辺からも造園屋さんたちが応援に駆けつけてくれた。

近所の中華屋「ほうえん」さんの広間を借りて、夕食とミーティング。

夕食は牡蠣鍋だった。松島の牡蠣だそうだ。やはり東北の牡蠣は美味い! もちろんご飯も味噌も秀逸。

市内のスーパー銭湯「汗蒸幕の湯」で温まって、定宿の桂旅館へ。主要メンバーは現場近くのアパートやマンションの一室をシェアして長期滞在している。明日はいよいよ大詰め・・・。


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