入り口付近の駐車場敷地では、明後日の有機アスファルト舗装の下地づくりが進められる。長野から来たAさんが重機を動かす。
外構の柵も作られる。全国から集まったスタッフ、サポーター総勢20名近くが、総動員で動く。
矢野さんは作庭の続き。築山の中段くらいにある土のコブに、土留めをする形で石を入れる。地ならしは大ハンマーで突く程度だ。ここで驚かされたのは、普通なら床掘は石が滑らないように山側を下げるが、矢野さんのやりかたはほぼ水平で、むしろ見た目は逆にやや谷側下げに見えるほどなのである。
それが山にある石の自然な形なのだという。そのほうが地中の水や空気が通りがスムーズになるのは理解できる。しかし、それでは石が土圧にに負けて動きやすいのではないか? 矢野さんのやり方は、木杭や植栽でそれを補強するのである。
セメント粉、砂利などを敷いて石を据え付け、そして谷側に木杭を打つ。木杭も対象物によって太さや形を使い分けているようだ。杭の頭は割れるほど強くは叩かない。
石の上に木をあてがいハンマーで叩いて上から締め付ける。これで石の座りをよくする。サイドの隙間に石も入る。
さらに谷側に砂利を詰めて搗き固める。砂利はセメントを混ぜたものとそうではないものを適宜使い分けている。
チェーンソーで出すぎた杭の頭をカット。
石の側面(裏側寄り)に植栽をする。補強に竹杭を根際に打つ。
ここで全体の形を見て、土に対する支え石の追加をする。
小さな杭2本と植栽がセットになって、小さめの石が据えられた(矢印)。
さらに植栽が追加される。この位置にはどの植物を植えるべきか? 矢野さんは事前に周到に配置計画を考えつつ、現場ではほぼ瞬時に植物を選ぶ。
根際にシバが張られ、竹杭で止められる。
さらに小石の間にも竹杭を打って補強。木杭も竹杭もやがて腐るので効かなくなるが、その頃には植栽の根が石をくるんで補完していくのである。矢野さんはこれを「植栽土木」と呼んでいた。
こうして土と石と樹木の小宇宙が完成する。この茶庭・築山は、このような大小の組み合わせが連続してできている。地中にも地表にも気脈・水脈が流れているからだろうか、自由で硬くない・・・力強い空間性がある。
「デザインが先ではなく、敷地の機能から石の置き場(かたち・サイズも)を考える。それがいい造形になる」
なるほど、自然な傾きに加えて、ここにも「動的な石」に見える秘密があるようだ。この庭の石と樹木を見て、私が真っ先に思い浮かべたのは「雪舟の水墨画」だった。
14:00、茶庭コーナーの植栽木に光が当たる。
チャボヒバ の葉がモミジの背景で引き立て役になっている。チャボヒバのコモが外されると、茶褐色の幹がまたモミジの灰色の幹を引き立てることになるだろう。そして際奥にはクロモジが控えていて、爽やかな黄葉見せる。
真横から。茶室窓からはこのような位置で見える。
さらに石の配置、植栽、そしてコルゲート管が配される。
明後日の有機アスファルト予定地では既存の舗装路とのキワにあるコルゲート管を補強しなければならない。造成と建築は他の業者が気脈・水脈などをまったく考えず行っているので、その調整だけでも大変である。
東北の夕刻は暗くなるのが早い。そして急に冷え込んでくる。
茶庭ではサーチライトを点けて枕木の階段を作る作業。1本の枕木をランダムに3等分して、ステップにする。
床掘にセメント粉を使うのは石と同じ。ステップの左右2カ所にドリルで穴を開け、全ネジボルトにナットを付けたもの(廃品の再利用)を打ち込んで止めるというアイデア。
適宜、木杭を使った補強も。そして間には張りシバ。
翌朝の写真。ランダムなステップの幅と、配置のズレがいい味を出している。これを現場打ちコンクリートでやったとしたら、味気ない上に何倍にも時間と手間がかかるだろう。
夜は矢野さんと深夜まで打ち合わせ。これまでの経過や今後の見通しなどを詳しく聞かせてもらった。植栽について「買った木だけではうまくいかなかっただろう。台原の個性ある木があったから、成功した」という矢野さんの言葉が印象的だった。