ピチットで干物、アラだしワカメ汁、魚フライ


午前中、注文していたピチットが届く。浸透圧を利用して脱水できるビニー製のシートである。料理の前に魚や肉の余分な水分をピチットで取るとがぜん美味しくなる(この頃は薫製づくりのユーザーも多いようだ)。私は丸元淑生の本で知って、山暮らしのときからけっこう利用していた。まだ干物作りに利用したことはないが、良いアジがあるので間に合えばと思い、ネット注文しておいたのだ。

さて、こんなもので干物が? と思うだろうが、先に塩をした魚をピチットで包んで冷蔵保存すれば水分はゆっくりと抜けていき、塩による熟成も同時進行して、自然に干物ができてしまうのだ。外干しのように天気や温度を心配することなく、ホコリや酸化も防げるのも利点だ。これは『ヘルシー・クッキング 春冬篇』(中公文庫ビジュアル版1997)で初めて紹介され『丸元淑生のからだにやさしい料理ブック/家庭の魚料理』(講談社1999)で大きくビジュアル化された手法である。

アジは大きな物1匹と小型の3匹が残っている。まずは大きめのほうは刺身とフライにしよう。

解体で出た頭と中落ちと肋骨をすくった腹の身は、すぐに水を張った鍋に入れてスープ・ストックをとる。さばきたてをすぐに投入すると嫌な臭いもせず、アクの量が少ないのに驚く(もちろんアクは取る)。

小さい方3匹。上げてから2日経っているがまだ硬直中である。

では『丸元淑生のからだにやさしい料理ブック/家庭の魚料理』に倣ってやってみよう。刺身用のときは胸びれまで頭に付けて切るが、干物のときは最大限身を付けた切り方にする。頭を付け根で切断。その後、ハサミでヒレをカット。

三枚におろして塩を多めにまぶす。腹骨は付けたまま(ここで出た中落ちもすぐにスープの中に追加する)。これで30分冷蔵庫へ。

30分後、取り出して水洗いで表面の塩を流し、キッチンペーパーで水気を拭きとる。

購入したのはロールタイプで一枚の大きさは 25cm x 35cm。どちらの面も使える。片側に並べて、

折り畳んでピチットをセット。

それをフリーザーバッグに入れて密封して冷蔵庫へ入れておく(丸元淑生は脱気シーラー「フードセーバー」による保存を推奨している)。およそ20時間で一夜干し状態となり、それ以降もゆっくりと脱水・熟成が進むので、20日以上も置けるようだ。が、フリーザーバッグ程度の密閉ではやはり酸化するだろう。フードセーバーによる保存なら長期でも酸化せずきわめて美味だそうである。

アジの干物は普通は頭を割って腹開きにして一枚で作るが、丸元淑生は3枚におろして2枚の干物を仕込み、出た頭と中落ちを煮出してスープ・ストックをとるという、魚の新たな食べ方のシステムをこれらの本で打ち出したわけである。

鮮度の良い魚を手に入れ、魚を解体していく過程で出てくる骨などを一時的であれどこかに放置することをせず、最初から鍋を用意して出てくる端から入れて(水洗いもしない)煮出していく。漁師のM君も同じやり方だった。漁師たちは経験的にアラはすぐに鮮度が落ちて生臭くなることを知っているのだ。

私はここに引っ越してきてから、何度か頭や中落ちなどのアラで料理を試したことがある。スーパーでとても安い値段で売っているからだ。ところが、できた料理は生臭くてとても食えないものがほとんどだった。結局、アラは解体後にぞんざいに扱われ、時間も経過しているからなのだ。

すなわちこの魚のストックは、鮮度のいい魚を自分で解体するところから始まるのだが、取り方の要諦は、

1)解体後、アラをすぐに煮出す。

2)水の量を多くし過ぎない。

3)アラは1時間以内で取り出す。取り出した後は煮詰めてもかまわない。

4)すぐに使わない場合はフリーザー・バッグに入れ、ラベルにデータを書いて冷凍しておく。

2)の水の量も重要で、同書の中で丸元氏は「ストックの味を決めるのは水の量である。水の量が多過ぎた場合にはまったく価値のないストックになってしまう。それでは美味しいスープは出来ないのだ」と書いている。

頭と中落ちを40分ほど煮出して漉したストックは少し色がついているが濁りがなく透明である。

丸元氏はこのストックをベースに作る様々な野菜スープを紹介している。今日は味噌汁にしてみる。タマネギを柔らかくなるまで煮て、大量のワカメを入れる。そして味噌をとき入れる。

つまりアラ出汁のワカメ入り味噌汁である。M君のところで御馳走になって美味しかったので再現してみた。あれだけのアラを使ったが、煮詰まってたった椀一杯だけの味噌汁ができた(縁まで満杯だけど)。

どんなにいい煮干しや鰹節を使おうとも、これだけ大量のワカメを入れたら出汁が薄まって美味しくないのは何度も経験済みだが、この魚のストックは味がぼけない。まさに「びんび家」の味噌汁の味である(いや、自分の好みの味噌を使っているのでこちらのほうが美味い)。この濃厚な旨味は、化学調味料や出汁の素などをでは絶対に出せない。それほど感動的な味であった。

大きめアジの半身の刺身。付け合わせはアボカドのサラダときゅうり。

2日目なのにこの鮮度。しかし、美味いけれどM君のところで食べた味にはちょっと及ばない。

メイタガレイとゲタ。半分はN先生に持ち帰ってもらったので、お頭付きの半身がある。

あと大きめのシロギスが一匹。

大名おろしで背開きにする。初めてだけどなんとかうまくいった。YouTubeのこちらを参考にした。

鱚(キス)の捌き方・・・・大和の 和の料理《鱚の捌き方(天婦羅用)》

ゲタはかなり大きかった。厚みがあるので5枚おろしにした。こちらはM君がウチに来たときカレイをおろしたのを見ていたので、それを思い出しながらやってみた(意外に簡単にできた)。

フライにする。

手前からキス、アジ、ゲタ。

キスは天ぷらやフライのために生まれてきた魚といってもよい。柔らかくきめ細かい身が口の中にほどけていく。

アジはまあまあ。ゲタはちょっと大味だった。やっぱり揚げる前にピチットで脱水しておけばよかったかな・・・。

昨日のアンチョビは塩が液体化してこんな感じに。

さて、干物が楽しみだ♬

何を食べるべきか? オマージュ丸元料理本


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