田辺の大崩壊を考える


台風12号豪雨被災地(和歌山県田辺市・新宮市上空)。和歌山県警のヘリコプターが2011年9月7日の朝、新宮市熊野川町~田辺市本宮町~田辺市大塔地区の上空を飛行し、土砂災害に襲われたそれぞれの地区の模様を空撮した映像のYuouTube。

台風12号豪雨被災地(和歌山県田辺市・新宮市上空)

3:25あたりから流れる百間山地区、かなり大規模な崩壊場所だ。ここから後半はずっとこの周辺を映している。びっしりとスギ人工林。いや見事なほど背の揃った人工林でまるでカーペットのように見える。それが、尾根の近くからごっそり崩れている。

Google mapからその場所を拾ってみる。

いや、まったく凄い。

これを、森林の状態に関係ない豪雨による不可避な「深層崩壊」だ。とする考え方に私は大いなる疑問をもつ。

この人工林はあまりにも異常である。まず尾根から谷まで一面にびっしりと広範囲であること。そしておそらく挿し木のクローン苗で、それが密植で植えられた上に間伐がほとんど為されず、中層木はおろか下草がまったくない林床であること。

たぶんここにはもともと広葉樹の自然林があった。それを皆伐して一面にスギを植えた。

初期は下刈りを熱心にやり、次々と旺盛に生えてくる広葉樹を刈りまくり、スギを育てた。下刈り時期を抜けて、いよいよ間伐が必要という時期に。間伐材の材価が極端に下がり、放置されてしまった。

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挿し木クローン苗の大規模な人工林、その間伐を放置したらどうなるか? これはいままでの林業の歴史にないことだった。

どんな山の斜面にも微妙なひだがあり、水脈があり、岩があり、柔らかな土の場所があり、木々はそこに適応して育つ。尾根にはマツがカシが。斜面にはクリやナラが。谷にはクルミやトチノキやカツラが。それぞれの湿潤さや照度や栄養分に適応した樹種が、それぞれしっかり根を伸ばし、山をかたち作る。

それをばっさり伐って、一面にスギを植えてしまった。

スギでもうまく間伐すればこんなすばらしい山になるのだが・・・。

togetter/紀伊半島の台風被害まとめ


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