紀伊半島で見た優良人工林


埼玉の講演の後、実家や東京での所用を済ませて西へ。三重の松坂から櫛田川沿いに奈良の吉野に入り、そこから五條市、十津川村を通って2011紀伊半島豪雨の奈良県側を観察し、熊野本宮へ入る。

奈良県側の崩壊地は大型で痛ましく、工事もかなり大掛かりに進められていた。

吉野は吉野林業地として名を馳せている一大林業地だが、間伐の遅れた線香林ばかりで主要幹線沿いにいい山はほとんど見られない。それでも手前の三重県側の林道に、いい山を見つけた。

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その間伐の仕方に山主の強い意思を感じるスギ山だ。生きた枝が樹高の半分程あり、下層中相にスギ以外の広葉樹が育っているのに注目してほしい。

伐り株の輪切りがあったので年輪を測ってみた。直径は34cmで60年生くらいだった。

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外側の年輪は1cmの中に3~4本、粗すぎず、密すぎず、良好な育ちが観察できる(中辺路の崩壊地にあるスギの年輪と比べてみてほしい→こちら)。

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次は熊野で見つけたいい山。本宮の近くの七越山(桜の名所)の西尾根で見つけたヒノキ林だ。

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こちらも中層に雑木がよく育っている。かなり前に強度間伐が施されたことが伺える。伐り捨てられた木が地面で腐食しているのが観察できる。

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胸高直径は48cm から17cmとばらつきがあるが、平均で25~26cmのものが多い。

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4mの釣り竿で密度を測ってみると4m円内に平均で5本程度。

これを平均胸高直径25~26cmで1ha当たりの胸高断面積合計を出してみると約50㎡くらいで、数値からも良好な人工林の密度であることが解るが、鋸谷式間伐の密度管理からすれば、そろそろ次の間伐が必要な時期である。

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林内に大峰奥駈道(吉野と熊野を結ぶ大峯山を縦走する修験道の修行の道)が走っている。コジイの木が板根を立てて強固な根の張りを見せている。このような木々と共存するヒノキ林なら、まずどんな大雨でも崩れないだろう。

やや、下方にも別の林分でいいヒノキ林を見つけた。

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ここは乾燥した尾根筋だが、大きく間伐することでヒノキはよく育っている。

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ヒノキは痩せ地に強い。尾根とはいえ紀伊半島では雨が多いのだから、強度間伐しても枯れることはないだろう。

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荒廃林だからといって全伐することなく、素性のいいヒノキは数本でも残しておくと、次の世代には程よく年輪の締まった天然ヒノキに近い材を残せるかもしれない。


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