床下地に、根太+12mm合板の替わりに24mm又は28mmの厚い構造用合板を使って半間ピッチの梁に直接ビス打ち。根太をなくすことで工程を短縮し、工事費的にもメリットがあり。・・・・という「根太レス工法」というのがハヤリらしい。
ネダノン(根太noneから命名か?)という商品名の構造用合板まで売っている。特徴として火打材を省略でき/耐震性能(水平構面としての性能)向上/たわみが減少/床鳴りが発生しにくく/遮音性・耐火性・気密性向上。といいことずくめだが・・・。
使用する合板の厚みが倍以上になるということは、接着剤も多く使われるわけで、いわゆるシックハウスというやつは大丈夫なのか? これが大丈夫だと言うのだ。2003年の建築基準法の改正によって、ホルムアルデヒドの使用制限などが規制され低ホルム建材F☆☆☆☆(フォー・スター)というのになったのである。
が、よく調べてみると・・・
ホルムアルデヒドは安価で接着力も強いのでどうしても使いたい。そこで、ホルマリンキャッチャー剤というものを使用し、一時的にホルムアルデヒドの揮発を抑えることが許された、という。 検査時に「ホルムアルデヒド等級」が一時的に変化して、本来であればF☆☆からF☆☆☆である製品をF☆☆☆☆製品として合格www
キャッチャー剤はホルムアルデヒドの吸着作用はあっても分解作用はないので、薬品の効果が無くなったら(およそ3年程度)ホルムアルデヒドは放散される。なんだコレ? ようするに24時間換気が義務づけされるとは、そういうことだ。
さらに、木質建材・断熱材・土壌処理剤として、毒性の高い有機リン系薬剤から、ネオニコチノイド系薬剤が使われる傾向にある。特に、床の合板フローリング材に使われることが多く、床暖房使用や真夏の西日によって、高温で揮発したり、熱で劣化する。ネオニコは私のブログの読者ならもうご存知ですね。
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しかし、なぜこんなに薬剤を使うのか? それなりの理由がある。合板を作るには乾燥した木材を使う。そのためには当然、高温乾燥が必要になる(きちんと乾燥させなと接着剤が着かない)。すると木の精油が抜けるので虫食いに弱くなる。かつら剥きするのでさらに虫食いに弱い辺材も混じる。合板は湿気を吸いやすいので木材は湿気ると虫食い(とくにシロアリ)が入りやすいので、薬剤が必須となるわけだ。
これに接着剤の放出ガスが加わる。シックハウスの主要な原因物質であるホルムアルデヒドとVOC(揮発性有機化合物/トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びスチレン)だ。前者は先に書いた低ホルム建材としてJIS規格が設けられており、F☆☆☆☆(フォー・スター)は内装における使用制限はない。後者は日本建材・住宅設備産業協会が自主表示制度を設けている。
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もともと湿気に弱い合板は高温、多湿の日本には合わないのだが・・・
結局、合板というやつは長年使っていると湿気でボロボロになってしまうのだ。なぜかというと、木材は湿気を吸ったり吐いたりする性質を持っているのだが、合板はいったん湿気を吸ってしまうと吐き出すことがなかなかできない。接着剤で何層にも固められているからで、それでも小口の断面から湿気はどんどん吸い込まれていく。というわけで、長年のうちに合板は波打ち、接着面は剥がれ、層状にバラけていく。(流し台のバラシ)
私が最も嫌なのは廃棄するとき有毒ガスが出て燃やせないこと。囲炉裏にも薪ストーブにも使えないのだ。とはいえ、ゴミに出せば山奥の焼却場で燃やされる運命なのだ(高性能なので有毒ガスはあんまり出ないらしいんだけど極めて怪しい)。
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合板はたしかに便利なものだ。家の大改造で人気の番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」でも構造用合板が大量に使われている。だけどあの家々、20~30年後にはどうなっているのだろうか?(構造用合板の歴史からして、30年以上の耐用年数は実地試験されていない)。
これだけスギを植えてきたというのに、どうして野地板として有効活用されないのだろうか?
先日、高松市内の大型ホームセンターで木材を調べてきた。けっこう厚みのあるスギ板も売られているじゃないですか! だけど、これが旬伐りで自然乾燥でかつ乾いていればいいのだが、そうとは限らないところが難しい。
店員をつかまえて聞いても判然としない答が多い。
これなどは人工乾燥にはかけていないが、赤みの色が悪いので葉枯らしはしていないだろうし、まして切り旬を外している可能性もある。
フローリング材は人工乾燥にかけたものだろう。高温乾燥の木は耐久性がないので使いたくない。
木を伐り出す山元、原木市場から製材所へ、それを小売りする材木屋やホームセンター、それを見極めて使う大工、と、それそれがバラバラで、ユーザーのために本当にいい製品を送り届けようとする意思がない。その根本には補助金がらみの林業という歪んだ現実がある。
日本の住宅建築事情の中でまともな木を使おうとすると、へとへとになるほど大変なのであった。
下の写真はyuiさんのおばあちゃんが使っていたという文机である。いま部屋でプリンターの台に使わせてもらっているのだけど、作られてから70~80年は経っているのじゃないかな。木はスギだと思うが石のように硬い。油の抜けていない木は伐ったときより後のほうが強くなる。無垢の木は全体で呼吸(湿気の吸い吐き)をするので劣化しにくい。
もちろん薪になるが、まだまだ使えそうである。まったく、進化しているんだか退化しているんだか・・・。