囲炉裏部屋改装中。
日本住宅の昔は、台所というものは暗く汚く湿っぽいものだった。その対局にあるのが陽当たりのいい庭に面した座敷であった。ところが高度成長期に突如としてステンレスの流し台が出現する。朝起きると布団をしまってちゃぶ台を出して同じ座敷で食を摂るパターンから、立ち式の流し台での調理とテーブルでの食事へ。
一体形成のステンレス流し台を生み出すことは、当時かなり困難な仕事だったらしいが、見事に成功し日本初のステンレス流し台のメーカーが登場する。「サンウェーブ流し台」というやつである。
これもそのサンウェーブだがたぶん一番初期のものだろう、合板とデコラ貼りがかなり傷んでいるので、上部のステンレスの部分だけ使うことにする。バールとドライバーを使って、解体である。
ステンレス部は4隅に木ネジ止めで、案外簡単に外れた。驚いたのはステンレスと木の隙間に、ゴキブリの卵(すでにふ化して空のもの)がびっしりと着いていたことで、流し台がゴキブリ製造機になっていたことがうかがわる。
ステンレス部分は全く問題ない。磨けば新品同様である。排水口だけは銅製になっていて、磨いていたらコパー色が現れた。この時代はまだ精巧なステンの加工は難しかったのかもしれない。さて、これにどんな足をつけようかな。
台の骨組みはかなり精巧な造りで、ホゾで組まれている。建具屋さんがやったのだろう。しかし、無垢の木に食いついた木ネジは回して外すことができるが、合板に食いついた木ネジは錆が酷く、回してもネジ頭が上がってこない(空回りする)。
結局、合板というやつは長年使っていると湿気でボロボロになってしまうのだ。なぜかというと、木材は湿気を吸ったり吐いたりする性質を持っているのだが、合板はいったん湿気を吸ってしまうと吐き出すことがなかなかできない。接着剤で何層にも固められているからで、それでも小口の断面から湿気はどんどん吸い込まれていく。というわけで、長年のうちに合板は波打ち、接着面は剥がれ、層状にバラけていく。
悲しみのサンウェーブ。だけど、さらに悲しいのだ合板は。
続く。