「大地の再生」の取材中に何度か道法正徳さんの噂は聞いていた。独特の剪定方法が有名らしい。まあ僕は矢野さんの本を書くのが使命だったので、ほとんど深掘りすることはなかったのだが、その道法さんが、なんと多度津のタマリンの森に来ることになったのだ。
というのも、タマリンの森のは農地指定の土地で、それが長年放置されて森+ヤブになっている。法人化して活動していくに当たっては、今後は農地に戻していかないと農業委員会などがウルサイらしい。というわけで、森の周囲の一角にレモンを植えようということになり、山主のYさんが道法さんを呼んできたのであった。
午前中は海岸寺の事務室を借りて座学を聴いた。驚いたことに道法さんは専用のキーボードの付いたアイパッドを使いこなしており、その解説も論理的でめちゃくちゃ面白い。「これが本当なら世界的な農業革命になっちゃうじゃないですか!」と、おもわず講義中に叫んでしまった僕であった。
午後から現場へ。レモン苗は道法さんから購入したもの。それを植え付け用に寸法に仕立てていく。
根っ子は剣スコの長さに合わせて切る。
剪定ばさみは道法さんオリジナルの商品。切れ味抜群で軽い!
敷地は2つ用意されていたのだが、最初の畑地は元田んぼ跡で、剣スコを入れたら地下水が滲み出て来たので即刻中止。
2つ目の斜面に移動する。ここは元ミカン畑だったところで、放置されたミカンの木が何本か残っている。等高線上に植え付けのピッチをとっていく。
その植え付け方法は非常にユニークで、まず剣スコをぐりぐりと地面に直角に差し込んでいき・・・
苗木の根をわしづかみにして、
剣スコを傾け背側に苗の根を差し込んでいく。穴は先細りしているから根は最後まで深く入らないが、剣スコを抜きながらグイと押し込むとピタッと入る。
挿し木の継ぎ目のちょっと上あたりに地面にレベルが来るように。柑橘の台木はすべてカラタチだそうだ。これを深く植え過ぎてしまうと接木からも根が出てしまい、育ちは極端に悪くなるそうだ。
棒でつつきながら、水を根の奥までしっかり注いでやる。根を乾かさないことがよほど大事らしく、移動中の苗木のビニール袋の包み方、置き方まで厳しく指導されていた。
植え終えたら黒マルチをかけていく。
黒マルチをしておくと除草いらずで水やりも必要ない(これで2年様子をみる)。
ここからが真骨頂のひとつ。苗木に接するように、長い垂直の棒を立てていくのだ。ちょうど放置畑の開拓で出たメダケがあったのでそれを使った。
その棒に苗木を麻縄で縛って垂直に固定していく。
最後は放置されたミカンの木を使って道法スタイルの剪定(普通は積極的に切っていく「立ち枝」を残すなど独特のもの)を教えてもらう。道具を片付けながら、今後の苗の育て方の注意点、農薬の種類やまき方などを細かく指導してくれ(道法さんの手法は肥料も土づくりも必要ないが、初期の農薬は少しだけ使う)、初期の枝の剪定手法が書かれた資料もいただいた。
駅まで僕の車で道法さんを送りながら、いろいろと突っ込んだ話が聞けて面白かった。家に戻りさっそくテキストを調べてみると、なんとアマゾンのKindle Unlimitedに『野菜の垂直仕立て』が登録されており、早速ダウンロードして読み始めた。
今年のウチの畑の夏野菜でこの道法スタイルを実験してみようと思う。
「DOHO STYLE」を研究し、追求していく「道法スタイル研究所=Doho style labo」(娘さんが運営している)はこちら▶︎ https://dohostylelabo.com