現代美術のアートイベント「アートエコまんのう+山の小さな展覧会2022」に行ってきた。セトゲーでちょっと現代美術には食傷している感があるのだが、Gomyo倶楽部のメンバーである藤原慎治氏が2つの会場参加しているのだ。前回の藤原さんの作品はかなり面白くて興味をもった。まずはまんのう町七箇にある「季節をたべる食卓 numar」へ。
ちょうど庭のミモザが満開に。看板。
ここの納屋というか工場跡が展示会場である。
入り口に作品タイトルと概要説明。
なんと、中は廃墟っぽい木工所跡という感じで・・・そこに
作品が雑然という感じで(本当は周到に計算されているんだろうけど)置かれている。
作品には猟師のおっちゃん的なモノローグが添えられている。
矢じり!
白塗りの木製タワーに貫通されて・・・
トレペににじみ文字で書かれた説明書きが、なにかまぼろし感を誘って作品のトーンをまとめあげている。
もう1つの会場。まんのう町造田「山のウーフ」。この敷地や建物の来歴は→こちら。
この会場には6名の作家のインスタレーションが野外展示。中に著名な絵本作家の田島征三さんの作もあってちょっと驚く。
こちらの作品タイトルと概要説明。
建物の中に入る。
前回のとき藤原さんはGomyo倶楽部の活動にインスパイアされていると語っていた。五角形の器に青く染めた蜜蝋を流し込んだオブジェ。
棚に飾られているウニやヒトデやサンゴやタコノマクラと五角形が相似形になっている。ここでもトレペに陽炎のようなモノローグ。
風化したテラコッタ(海岸で採取したもの?)の上にクルミの実の山。サンゴ石といい、このコレクションはすごいですね(笑)。窓をはさんで外のデッキにも相似形が・・・。直島のリチャード・ロングを思い出させる。
僕は東京でのイラストレーター修業時代のとき、吉祥寺のデザイン会社にバイトに行ってた時期があったのだが(プロフィール)社長がアート好きで、教科書や学術書の仕事が中心のオフィスの本棚には美術関係の本がたくさんあって昼休みによく閲覧していた。
本棚の本で今でも鮮明に覚えているのは『みづゑ』に載っていたジョセフ・コーネルの特集と、『美術手帖』で見たヨーセフ・ボイスの作品である。コーネルはボックスアートという箱の中にいろいろ詰め込んで静謐で抽象的な表現をしていた。
ボイスはドイツ人で前衛芸術運動「フルクサス」に参加し「コヨーテ」という有名な作品がある。インスタレーションも数多く、金属バケツの両側に、黒っぽい板2枚が立てかけられていて、そのバケツの正面に雑巾が垂れ下がっている「滝」という作品が今も忘れがたい。
そもそも前衛・現代美術はマルセル・デュシャンという人が小便器をひっくり返して「泉」というタイトルで作品を発表したのが始まりなのだが、藤原さんの作品は社会問題・環境問題にまで寄り添っていくという点や、静謐さ、その知的なメタファーの手法において、コーネルやボイスを思い出させる。
単なるインスタレーションはどんなに造形的完成度が高くても、もうカビ臭くてぜんぜん興味がわかない。以前のエッセイ「石垣とアート」にも書いたけど、今は崩れた石垣に対峙できるだけの、強靭な現代美術でなければならないのだ。
作品をぜひカタログ化してもらいたいと思うが、やはり空間性や臨場感は作品の現場に立たないとわからない。一過性で消えてしまう、それでもやるというそのことが、この刹那的環境破壊のなかで時代的・現代的で打たれるのだけど・・・。