明日、紙芝居をする保育園に打ち合わせに行った。その足で「無鄰館」のギャラリー「ルート66」で関口氏の個展(絵と立体)を観てきた。無鄰館はかつてノコギリ屋根の工場をアート発信のロフトに改装した建物で、中にアーティストが工房を持っていたりする。
関口さんは、無鄰館に工房を持っている彫刻家のMさんと親しい間柄であるそうだ。吉井での里山暮らしも長く、木材や囲炉裏の話なども聞かせていただいた。「全盛期のクニヨシ(国吉康雄)の色に似てるなぁ」とつぶやいたら、案の定、氏はクニヨシ大好きだそうな。
今日は梅田のふるさとセンターでもアートの展示があったそうで、桐生はさすがにいろいろやっている。これらのインフォメーションには『桐生タイムス』という地元新聞が便利なのだが、なにぶん購読していないので重要なイベントを外してしまうこともままあるのでした。
関口氏の作品の油彩画は、アクリルの箱に仕舞う現代美術によく用いられる額装だった。当然ながらボックスアートもあって、郷愁を誘われる。私はこのボックスアートとよいうやつがけっこう好きで、自分の個展でもインスタレーションをやったことがある。
ボックスアートの代表的作家といえばなんといってもジョセフ・コーネル(Joseph Cornell/1903-1972)だろう。むかしデザイン会社に潜り込んで修業していた時代、そこで読んだ美術雑誌『みづゑ』でコーネルの特集があり、私はその作品にわし掴みにされるように、すっかり魅せられてしまった。
で、以下は私がむかしやったボックス・アートの思い出です。私の故郷である水戸での個展。会場は大きなアウトドアショップの3階。以前のHPの日記から抜粋してみる。
インスタレーションはなかなかのアイデアが浮かんだ。水戸の2万5千分の1地図を木のブロックに張り、個展会場のナムチェバザールの位置に赤い立方体を置き、千波湖の上にはミニチュアクラフトのトンボを、那珂川の上にはサケのミニュチュアを置く。そこには方位磁石も置いて、個展会場の中央にその作品を置くことで、自分たちの位置と流域との関係を喚起させるのだ。
その木のブロックは廃品の木の「机の引き出し」の中に置かれ、ヒノキぼっくりやクルミなどを中にしきつめ、昔使った昆虫採集の三角缶、間伐で使うザイルとカラビナなども入れる。そしてアクリル板で蓋をする(中央にスリットを入れる)。標本箱にも似たボックスアートというわけである。
以下は作品の解説文である。
「インスタレーション」とは現代美術の一手法で、その場かぎりの作品のことです。また、周囲の環境をも作品の中に取り込んでいく表現方法のことで、その作品を外側から鑑賞するだけでなく、ときに鑑賞者も空間に抱合され、作品の一部として体験するという面白さも合わせ持っています。
私(大内)は水戸で生まれ育ち、とくにここ末広町は子供の頃の遊び場でもありました。この作品は水戸の2万5千分の1地図と方位磁石を使用し、今回の個展における”那珂川のサケ”と”千波湖のトンボ”の展示位置の関係を表現しています(赤い立方体がここナムチェバザールです)。
廃品の机の「引き出し」、その中に敷いてあるのはヒノキ・スギ・アカマツ・オニグルミの木の実です。緑色の三角缶は採集したチョウを入れるもので、昆虫採集に夢中だった小学校時代に水戸で購入したものです。
この三角を「山」と「屋根」に見立ててみました。黄色いロープは山仕事で間伐作業のときに使うものですが、もともとは登山用品のザイルとカラビナであります。これは「濁った川」「ヘビ」「時間の流れ」などを想起させます。
「ゴンパ」とはネパール・チベット言語で「寺院」のことです。今回の展示空間に垂らした和紙は、チベット仏教の祈りの旗「タルチョー」にも似ています。
今回はこの中央に置かれるインスタレーションが展覧会のコンセプトのすべてを表現しており、展示空間の球心体となるわけだ。相似形としてyuiさんのトンボとサケのペーパークラフトがぶら下がり、両壁に垂らした和紙にトンボとサケをはじめとする魚の絵が描かれる。二つが置かれる方向は千波湖と那珂川の方向に準じており、それがインスタレーションと響き合う。
そして天井には当初「木の一生」を描く予定だったが、時間切れで、森林施業の人物画を中心に描いたものと、タマリンソングの歌詞が毛筆で書かれることとなった。
*
この個展は2004年の正月に行なわれたが、会期中に平山ユージが来て(クライミングウォールで学生たちの大会があった)個展会場で講演をしたのが懐かしい思い出である。
コメント