原木の木ごしらえ(秋の備長炭取材その1)


Tさんの窯場は口焚きの最中だった。

その火加減を維持しつつ、今日は「木ごしらえ」(窯にきれいに詰めるために真っ直ぐにのしたり、太い原木を割ったりという作業)を見せてもらう。

炭需要が激減し、山林が放置された期間が長かっために、原木は太いものが多いそうである。太すぎては炭に向かないので半割り4つ割りにする作業がある。

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今はこのような油圧の薪割り機を使う。節の部分でよじれてしまうところは、チェーンソーで縦割りにガイドを入れ、できるだけきれいな半割りをつくる。

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細いものはそのままでいいのだが、曲がりよじれた木が多いので、真っすぐに仕立てたい。曲がり部分に電動チェーンソーで切れ目を入れ、伸ばしてからクサビを入れると真っすぐになる。私もやらせてもらった。作業効率を工夫された治具が便利である。

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切れ目は2~3箇所。この切れ目から炭化するときのガスが抜け、ここから割れてちょうどよい長さの炭ができることから、曲がっていなくても数だけ切れ目は入れておくそうだ。

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それを細いものなら5本まとめて、麻ひもで4箇所結わえる。

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赤矢印は失敗して折ってしまった木(Tさんスイマセン)。枝分かれした節のすぐ下に切れ目を入れると割れやすいので、やや離して入れるか、節の上(細い方)に入れるといい。

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束ねた木は長さが3種類ある。窯はドーム型なので、中央が高く、壁側が低い。天井すれすれに立て込めるように意識して分けてある。

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立て込みは元(太い方)が上、末(細い方)が下。そして地面に着く下の方は切り口が斜めにしてある。いずれもこのほうが炭化するときのガスが抜けやすいから。

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さて、全国的にナラ枯れが問題になっている昨今だが、備長炭の原料であるウバメガシにも入るようになってきた。紀州でも98年頃から見られるようになり、Tさんがいま通っている白浜の現場でも太い木にはかなりの確立で虫が入っているという。

ナラ枯れはカシノナガキクイムシ(通称カシナガ)という甲虫の幼虫が原因とされ、カシナガの幼虫が幹を食い荒らすことで枯れるのではなく、成虫が持ち込んだ菌で枯れていく。この仲間は、体に菌の胞子を貯蔵する器官「菌嚢」を備えていて、菌を繁殖させて木材を変質させ、それを幼虫の餌にする。

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割って間もない木の細かい穴から幼虫が出てきた。

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引っぱりだしてみた。こんなに小さい。

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カシナガにやられた木を炭にすると穴がしっかり残る。これはまだいいが、菌で完全に枯れたれた木になるとスカスカなので炭にならない。

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ところで、この備長炭の大きさで、元の原木はどれくらいかというと隣の木くらい。ウバメガシは備長炭に焼かれることで太さにして原木の約半分に、長さにして約2/3に、重量にしておよそ1/10になってしまうというから驚きだ。

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作業の途中で、煙の臭いを確認しにいくと、そろそろ炭化が始まったようだ。焚き口を部分を耐火レンガの破片と灰と赤土を水でこねた粘土で徐々にふさいでいく。学校から帰ってきた息子君も水を運ぶ作業に参加。

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最後は指数本分の細穴だけにする。

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窯の出口から煙が吹き出し、独特の刺激のある燻臭が辺り一面にただよう。

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これで中三日おいて「錬らし」の作業が始まる。

明日は原木を伐るところを見せてもらう。

 


▼旧記事

熊野の備長炭を見に(2013/10/9)

ウバメガシの択伐(2013/10/13)


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