「パルテノン屋上緑化計画」浮上す・・・


午前中、矢野さんに朝食を出し、出版の打ち合わせなどを済ました後、敷地を見てくれるというので外へ。僕がトイレに行っているすきに矢野さんはパルテノンの中にあったハシゴを勝手に取り出してパルテノンの屋根に掛けようとしていた。

それはyuiさんの父上からこのあいだ僕がトラックを借りて頂いてきた、2段の伸縮式の長バシゴで、その紐が切れそうなので交換してから登ろうと思っていたのだが、2人で伸ばせばなんとかフックが掛けられた。

少し前に雨が降ってパルテノンの屋根から落ちる雨だれの天井部にシミができているのが(前写真、赤矢印)、矢野さんは気になったらしい。僕も初めてパルテノンの屋根に登ることになった。

道上から観察していたので知ってはいたが、まず石ころがたくさん落ちている。通学の子供たちが長年のあいだイタズラで投げたものなのだろうか?

そして振り向けば瀬戸内の絶景である。母屋のバルコニーより高いぶん、展望はすばらしい。

パルテノンから見下ろした畑。

問題はココ。屋根はフラットルーフだが、道側にゆるかやな勾配がついており、両端2カ所に排水穴が空いている。その周囲に苔と泥が堆積していたのだ。

そこに水脈を切って溜まった雨水を導く。すると当然ながら周囲の泥はやはて乾いていく。すでに一部では植物が芽生えはじめていた。矢野さんが水切りしながら口をひらく。

「ここを屋上緑化すればいいよ」

「えっ、マジですか?」

前回来たときそんなことを話したはず・・・と矢野さんは言うのだが、そういえば言っていたような? しかし冗談だと思っていたのか、あまり覚えていないのだ。

僕としては資金ができたらソーラーパネルでも据えつけようかと思っていたのだが・・・。

矢野さんによれば屋上緑化したほうがかえって屋根のコンクリートは長持ちするという。一般に植物と現代土木は相反する概念ができており、災害の多い昨今では構造物を壊すからとやたらと樹木を排除する傾向にある。みなさんの周りでも都会の木がどんどん伐られているのを目の当たりにしているだろう。

ここ数年で矢野さんの屋上緑化の「大地の再生」的手法はすでに確信に満ちており、お金もかからずに、ほとんど自然の資材だけで緑化できてしまうのだ。

下に降りると水脈のメンテにダメ出しされ、指導を受ける。

また雨が強くなったので室内に戻り打ち合わせの続き。・・・をしているうちに雨が上がり瀬戸内の海上に綺麗な虹ができていた。

やがて女木島付近からも。典型的な虹色の大アーチだった。

矢野さんは近所の「うどん店」の場所情報を聞き、再びレンタカーに荷物を積み込んで次の現場へ出発。

それにしてもお金がないということは新たなアイデアを発見・推進する上でありがたいことかもしれない。もし僕にたっぷりの資金があったなら、「大地の再生」に巡り合う前に植栽を勝手に始めてしまっただろうし、パルテノンの上にはすでにソーラーパネルが設置されていたかもしれない。

亡妻の祖父の代に建てられ、中途のまま放置された構造物、「瀬戸内を望むうらぶれたパルテノン神殿」という風情から僕らはパルテノンと名付けた。詳しくは拙著『「囲炉裏暖炉」のある家づくり』

そもそもこの土地の家づくりのスタート時には、パルテノンの上に何かセルフビルドするアイデアを考えており、フラードーム(※)なんかが似合うしカッコいいんじゃないか・・・などと考えていたのだ(都市計画地域なのでその案はすぐに消えたが)。それが、「パルテノン屋上緑化計画」とは・・・。

が、その話を聞いた途端、なぜか僕には緑化されたパルテノンの屋上で焚き火をしながら瀬戸内を眺めているの自分の姿が瞬時にイメージされ、気がついたら「じゃ本ができたらさっそく講座でやりますか」などと即答していのだった・・・(笑)。

※フラードーム:ジオデシック・ドームともいい、アメリカの建築家バックミンスター・フラーによって考案された多面体ドーム構造。


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