囲炉裏の象徴的な道具「自在カギ」の横木を、魚のかたちに家田くんが荒削りしてくれていた。自在棒はウメの枝、支柱は竹で中の節を抜いておく。バランス的に横木が大きすぎたのでサイズを詰めて穴をもういちど開けてもらい、僕が彫刻の手を加えて可愛いクジラのようなオブジェ風に仕上げた。
自在棒は木の枝の二股のところを利用して吊るしカギにするのだが、竹の中で動くように棒の部分がなるべく直線のものを探さねばならない。今回のは枝のゴツゴツや曲がりが若干あったので、ナイフで削ったりペーパーをかけたりして修正しておいた。
支柱の上部は竹の節を残してその下部に正方形の穴を開け、広葉樹の薪から割り箸程度の角材を削り出して、その穴にキツキツに収める。そこにロープをかけて吊るすと強度もあり見た目も安定する。
あとは横木と支柱を紐で結べばいいのだが、自在カギは全体にけっこうな荷重がかかるので素材はしっかりしたものを選ばねばならない。熱に弱いナイロンなどは避け、麻か綿のしっかりしたロープ(6mm)を用いる。
新たな参加者にスライドを見てもらっている間、前日の参加者にはサニーさんたちによる庭の剪定の指導が行なわれる。家田邸の家周りや庭は、前々からやっちゃんが何度か手を入れているので風通しがスッキリしており、家の周囲も嫌な感じのところがない。
さて、囲炉裏の続き。基礎ができたのであとは荒板の戻しと炉縁の取り付けの下地。とくに炉縁下地の納まりはなかなか難しい。既設の根太のレベルが微妙に狂っていたりするので、木っ端などで高さを調整し、最終的に炉縁の天端がキレイに揃うようにしなければならない。大工のTさんのおかげでだいぶ助けられた。
今回は荒板のレベルに炉縁を載せると、ちょうど畳からの出が合うようにあらかじめ炉縁を作ってもらっている。しかし、その下の根太との間にすき間ができるので、そこを角材や石や粘土で塞いでおかなければならない。
それができたらいよいよ畳を戻していく。畳も方向をまちがえるとハマらなくなったりするので位置を覚えておく。
畳が入った。左側は角材を並べて薪・炭や食器などを置くスペース。
炉縁をはめ込んでいく。本来ならほぞで組みたいところだが、2日間で仕上げねばならないので巴組みのビス止めにする。炉縁材は家田くんがヒノキを僕の指定の断面通りに用意してくれていた。長さは畳の寸法にピタッと合わさるように、1本ずつ現場合わせてしてスタンド丸ノコで切りに行く。
最後の1本は施主の家田くん自ら切りにいき、はめ込む。皆から拍手が沸き起こる。ちなみに炉縁の長手方向は若干細く仕上げておくと見栄えがいい。
枠周りにはもう一仕事残っている。炉縁の下部の木材部分を粘土で覆っておく作業である。これをすることにより炉縁と木灰部が一体となり耐火性も増すのである。まずは炉縁を汚さないようにビニールでマスキングする。
皆で粘土を塗り込んでもらう。
本来はかさ上げした土を粘土が覆う方がいいのだが、足りないので接触部を指で押してなじませる。
同時進行で自在カギを吊るすための竹材をとりつける。前日の丸穴のある板はこの竹を通す留め具だったのである。天井板のある和室では支点が取れない。細い竿縁(さおぶち)では強度的に弱すぎて支点にならないので竹を渡すことにしたのだ。この止め方は山暮らしのとき桐生の古民家でも用いた方法。外れないように竹にピンを刺しておく。
2本渡してそこにもう一本を交差させて結ぶ。ここに自在カギを吊るすのだ。これで欄間を傷めることもなく取り付けられる。2本渡しにしたのは荷重を分散させるためと、囲炉裏の長手の方向に横材が欲しかったからだ(自在カギを長手方向に動かすことができる)。
さっそく自在カギを吊るしてみる。これで一気に囲炉裏感が出る。
炉縁はビス斜め打ちで止めておく。
灰を入れていく。灰はあらかじめ家田くんたちに用意してもらったものを、参加者の方に振るってもらいゴミを取ってある。
ゴミがないので灰かきで模様を美しく描くことができる。粘土は乾いていなくても問題ない。むしろ灰を入れたほうが早く乾く。さっそく土瓶を吊るして、
外で焚いていた焚き火の熾炭を運んで火を入れてみる。
「すごーい。できちゃった!!」「うわ〜あったかい!!」と参加者から口々に歓声が上がる。
こうして2日間でなんとか囲炉裏ができた。囲炉裏専用の焼き網「ワタシ」も置いて気分を出してみた。あとは「火棚」や「弁慶」が欲しいが・・・明日の囲炉裏料理の合間に作ってみよう。
(3日目に続く)