リンダ邸2日目、Mさんの古民家前に集合して今日の予定を確認。昨日の見回りと草刈りなどで地形や水脈の全体像がわかった。あとはどこに水脈をレイアウトして薬師川に落とし込むのか。
脈が全体につながることに集中する。すでに崩壊斜面にはいく筋かの水脈ができているが屋根排水が集中する場所、U字溝の勾配に無理がある場所も見受けられ、そこからの排水溝をうまく斜面につなげる配慮が必要になる。
施工は「場」という器があって、そこに「人・材料・道具」という内なる環境でエネルギーをかける。そのとき自然の(空気や水の)脈をふさがないということが大事だ。そして作業中、人の動線もふさがないこと。なにしろこの敷地に40人超の人が動くのだ。怪我のないように・・・「物を置く」「人が動く」この作法が行き渡っていると、身が守られる。そんな注意が矢野さんから述べられる。
矢野チームは道作り開始。ヒノキの丸太が運ばれ、土留め柵が作られる。コンクリート歩道の崩壊点から道の取り付きが始まるようだ。
同じ立ち位置から斜面を眺めたところ。かなりの急傾斜である。ここに土留め柵を作りながら、小型重機を降り進めていく。結果的にはくの字に折れ曲がる遊歩道を作っていくことになる。
2019年の4月に神奈川県横須賀市で行われた植栽土木工事と同じような施業だが、今回は崩壊地であるところが特徴的だ。
丸太止めの杭が打ち込まれる。丸太のすぐ下にはカエデや柿の木が生えており、強固な根が斜面を守っている。道の下り始めの選択は、この木々たちの支持力も見越してのことだろう。
矢野さんの杭の打ち方はかなりランダムで、整然と(直線に)止めに並ぶようなステレオタイプはとらない。それは雨風の渦(うず)が作り上げた造形と噛み合わないからだ。直線や直角はいずれ不具合を生む。
先に杭を打つのではなく、自然地形のなかに最初に丸太をかませて、それから杭を打つ。杭打ちは、
1)土と一体化すること
2)自然の木の根と杭をなじませること
それは手加減や足で測ると解る。杭をときどき揺すってみる(小さくなじませるようなゆすり方)。杭頭が割れるほど叩き過ぎてもいけない。大地の中に最低限のゆるみも必要。
番線しばりで杭と丸太を緊結し、形が決まったらまず炭。
道の上に置いてあった石を、大きなものから落として配置していく。
次いで割り竹。
粗枝、と重ねていく。
さらに一度コンクリート歩道に戻って、ブレーカーで道の天端を削り落とす。
ブレーカーは直角に突き刺すのではなく、水が侵食するように、風化していく過程を真似るように、端から斜めに当てていく。
先にドリルで予備穴を開けています。
鉄筋が入っているので一気には落ちない。
やがてどんどん下に転がっていくコンクリートの破片。大小の破片が風の原理によってそれぞれ収まるべきところに収まっていく。もちろんあとから修正は加えるが、石垣積みのように丁寧には組み込まない。
道の降り口の形が見えてきた。
近撮。炭→竹→粗枝→大石→コンクリートガラ・・・という重ね順である。
3本目の土留め丸太が据えられる。
緊結はダブルにした番線をハチマキにするだけだが、最短距離で結ぶ。また、どちら方向から回すか・・・は重要である。丸太が重機の運行によってズレるのを受け止める方向にしなければならない。
さらにその上にも1本。既存のコンクリート道から作業道(遊歩道)へとつなぐ重要な丸太だ。
木の根が錯綜している地面に打つので、杭の入る場所はおのずと決まってくる。道との間にアキができれはそこにコンクリートガラを詰めてすき間をふさぐ。
もちろんガラが落ちないように下からも積む。
こうして重機が崩壊斜面に進入する道のとりつきができた。
ここで休憩と解説が入り11:30、矢野さんは移動して鋼矢板の上部を掘り始めた。
(後編へ続く)