「大地の再生」南山城村リンダ邸(3日目/後編)


斜面の仕事を終えた重機は綱矢板の上流側から道へ脱出。道を痛めないようにコンパネ(合板)で養生しておく。

Mさん敷地へ行く前に斜面の中腹(2段目の石垣の基部付近)に穴を開ける作業。

Mさんの古民家周りにもコルゲート管が埋められた。

今日はMさんの畑に隣接して簡易トイレ(風のトイレ)作りも行われた。

出来上がった遊歩道に枝葉とグランドカバーがまかれる。

あの重機の危険な作業がウソのように、道らしい道に仕上がった。

黒い焼き杭(表面を焼くことで炭化させ腐りにくくなる)が視覚的にもいいアクセントになっている。

頭で考えず、斜面・地面に聞きながら作ることで生まれてくるラインと土留め柵の位置。水はけは抜群によいので雨水が道を削るということもないし、こぼれた土はむしろ道を固めていくだろう。

要所に植栽が入ることで印象がガラリと変わるが、その根は斜面を守る重要な役割をになう。

最下部は皆で手均しし、枝葉とグランドカバーで覆われた。ここに深い溝が切られてコルゲート管があることはもうまったく分からない。ところで赤丸の場所はかなりグライ化していたらしい。

Mさんによればに昔の井戸の跡だそうで、やはり地下水脈がある場所だった。井戸を使うことは大地に空気通しする上で重要かつ有効な手立てなのだが、それを埋めてしまった。それも崩壊の原因の一つかもしれない。

最後の出口のコルゲート管が点穴に立ち上がったままだったので、矢野さんが植生土嚢をはぎとって道路側に導きなおした。

大雨のときはここが重要なはけ口になる。最後の「出」の要(かなめ)である。

もう暗くなり始めた頃、全体の作業を終えた皆で薬師川に降り、矢野さんの沢と水路のレクチャーを聴く。

1箇所に寄っている水流を分散させることで泥アクが自然に消えていく。堰に空気流が通るようなスリットを入れたり、流木や石を動かしてやるだけでそれは簡単にできる。単調な流れに渦流ができることで泥アクが団粒化していくのだ。

三面張りの水路でも泥を全部取り出さず、それを移動させて底にS字蛇行を作り出してやる。水を走らせると上流から土砂を引っ張る。蛇行すると土砂が少なくなる。コンクリートのアクが消え、呼吸を始める。植物も発芽しやすくなる。三面張りの水路の中に新たな生態系を作るイメージだ。

参加者は「そこまで考えるのか・・・」と驚いた様子だった。そして作業の後に「川音が優しくなった」ことに気づいた人もいたようだ。今回、最後にこの川掃除ができたことがまた良かった。川までつなげることで、地域の人たちと連携するきっかけができる。

今回の「災害復旧+大地の再生」で矢野さんは災害復旧の新しいスタイルを確立したのではないだろうか。西日本豪雨のときの支援活動で試行錯誤した丸太と杭の使い方と、仙台秀明の高木移植から横須賀の「植栽土木」へと至る流れの中に、今回の災害復旧の解決法がある。

先にも書いたように、詰まっているから崩れたわけで、そこはすでに安定地形になっている。それを読み取って再創造・融合させていったのが「昔の人たちの土木」だった。しかし現代の災害復旧は、さらにコンクリートを上乗せして強靭化を図る。それではまた詰まる・・・というイタチごっこになってしまう。

空気通しが確保されていると皮付き丸太でもそう簡単には腐らず、腐る頃には回復した植生や植樹された木々の根がそこを補完するように伸びていき、コンクリート以上の安定性を保つようになる。

使われた有機資材は今の里山には無尽蔵にあるものばかりで、採取することが手入れにもなる。コンクリートのガラもゴミとして出すのではなく資材として有効活用することも優れている。この場所は日本の今後の災害復旧を考える上で、重要な見本となるだろう。

いつになく充実した3日間だった。みなさんご苦労様でした!

Mさんの敷地も含め、リンダさんのこの斜面と今後の活動が楽しみである。


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