3日目、最終日。朝、昨日の水脈溝の仕上がりを確認する。大きな建物の裏側、厚く打たれたコンクリートを剥がして地面を出し、その上に炭・割り竹が入り、枝と、押さえにもなるコンクリートガラを少し戻してある。
写真左が昨日の午前中の同じ場所。右がアフター(今朝)。雨の時はここが排水溝にもなるが、長年無酸素状態だった斜面のガスを抜き、上部の丘(Mさんにの畑)と繋がった効果も大きい。この中にはコルゲート管は入っていない。コルゲート管は水量が集まるところ、しっかり排水を促したいラインに入れるイメージだ。
そしてここから流れてきた雨水は建物の角で左手の石垣から流れてきた水脈と合流する。コルゲート管が立ち上がっているところ(赤矢印)が点穴である。このような環境の変わり目を丁寧につなぐ。
さらに建物の前を水脈溝が通っていき・・・
水脈を踏まれないようにスノコが敷かれて・・・
建物の崖側の角を曲がって・・・
崩壊した崖の天端から落ちるようになっている。ここは昨日グラインダーで削って出口を誘導したところ。この出口が明快になっていないと建物の角で水が行き場を失ってしまい土が膿んでしまう。水脈の「入り」と「出」の確認はとても大事なポイント。
僕は今日の新規参加者さんを駅まで迎えにいく仕事を仰せつかって、そこから戻ると皆は上部のグランドカバーを作っていた。グランドカバーというのは「大地の再生」において水脈ができたあとの最終仕上げで、木質チップや炭を地面にばらまいていくのである。
周囲の大地が目詰まりしてくると草が生えにくくなり、雨のとき泥が流れる。この工事でそれは回復してくるが、草が生えるまでの間、このグランドカバーをしておくと泥が流れず早く植生が戻る。
矢野チームは道作りの核心に入っている。ここから「くの字」に折れて方向転換する場所である。
ポイントごとに矢野さんは重機から降りて手順を指導し(有機資材の枝が長すぎるのでチェーンソーでカットしている)、
土留め丸太や杭のポイントを決める。
重機がターンし、道の全体のラインが見えてきた。
土留め丸太が伸ばされ、あらかじめ下部に作っておいた土留めと合流する。道はただ動きやすくなめらかに作ればいいというわけではなく、排水がうまく分散し浸透するような形も必要だし、木を植える余白も作っておかねばならない。なんといっても地面に聞くことでおのずとラインは決まってくる。
土留め丸太と杭打ちが決まったら炭・割り竹・コンクリートガラ、
そして竹の枝葉。
きわどいターンに成功してなんとか下まで降りる道筋が見えた。この道は林業の作業道のように重機や運搬車が行き来する道ではなく、いったん重機で切ってしまえばあとは遊歩道になるだけだ。しかし、重量のある重機で動きながら土留め柵と杭を作ったことに意味がある。それによって斜面の安定化が図られるからだ(斜面の土の状況も理解できる)。
重機が降りた後にできた「くの字」型の歩道を下から見る。
雨水の侵食によってできた溝地形(ガリー)はそのままにせず割り竹や粗枝で組みながら空間を埋めていく。素材をまとめて投げ込んでから、出っ張をチェーンソーで切るのは水脈溝に同じ。太いものを骨格にしがらみをつくる。ずり落ちを防ぐために割り竹で作った小さな杭を、要所要所に打っていく。
植林が始まった。斜面中央にシンボルツリー的にサルスベリとボケが。
土留め丸太の間、前後にアセビ、サザンカ、ナンテン、ツツジ、ニシキギなどが。
さらに法面の下部に補強・土押さえの丸太を止めていく。この下には抜きの水脈溝が浅く掘られている。そこを丸太で覆うようなイメージ。
矢野さんは最下部の地均し・整地に入る。この作業も大変重要で、どの現場でも矢野さんはバケットで地面の声を聞くように時間をかける(そして最終的には手で三つグワなどで仕上げる)。
侵食溝の最上部(崖の天端)にはやや太めの杭が打たれ、
そこにこぶし大の石やコンクリートが据えられる。ここに落ち葉や泥がたまれば植生が戻りやすい。このような棚のきっかけを作っておくと、風で運ばれたマツなどのタネが発芽して定着することもある。
(後編へ続く)