上野原駅にスタッフのY君が迎えに来てくれ、Uさんとミーテイング中の事務所へ。周囲の緑はすでに春から夏の気配に移行している。今回のテーマは「大地の再生視点からコロナ対策への向き合い方を学ぶ」と題して行われ、マスクをしながらの矢野さんの解説は、これまでのコロナ騒動の中で「大地の再生」が経験してきたこと、興味深い千葉市原の現場の話、これからの展望などが語られた。
初めての参加者からは現場での疑問点に関する質問が出、矢野さんがそれに答えていく。その後配られたプリントは2014年に自らが書かれた『「杜の学校」設立趣意と構想(計画案)』(A4版7ページ)。上野原でのライセンス講座はこの趣意書に重なり合っている。というわけで、いつになく長く熱のこもったミーティングで、時間はすでに昼。献立は上野原実験農場の玄米で自炊定食。
その後、田んぼ、果樹園、畑の各班に分かれて現場作業。私は各所の見回りに同行する。果樹園敷地の梅が実をつけている。ここは中央高速の工事で出た残土捨て場で、この土地を借りようとしたとき「あそこだけは止めたほうがいい」と地元の人に言われた場所。
芦垣の田んぼ。田植えを待つ苗畑。イネの原生地の習性に基づいた苗立ても実験している。外周の地形と水やりのタイミングが重要だそうだ。「大地の再生」手法の田んぼ自然栽培はそれだけで1冊の本が作れる面白さを持っている。
甲東の畑。昨年から草刈りしていた法面が一部畑になっていた。
茶畑(左)と遊休地。ここに茶の木を間引いて移植するそうだ。
隣の傾斜畑へ。ソラマメが実っていた。
畑の説明に入る前に、道との境界にあるツバキの剪定。矢野さんによる「風の剪定」の実演。
まずは根周りの風通しをよくし、主枝を間引く「透かし」だが、目安はその木の小枝の一単位の枝の出かたを参考にする。
下方の枝の付け根から大胆に抜いていく。
次に「切り戻し」。フトコロから小枝を間引いていく。外側だけ整えるのではなく枝の途中から間引いていくのだ。ゆすってみて揺れの変わり目(重心のバランスのところ)で切る。
最後に「先端刈り払い」でアウトラインを整える。
畑にはキュウリなどがまかれ発芽したばかりであった。この畑は放置されていたものを借り受け、一度も開墾せず点穴と水脈溝(畝溝)を整え、風の草刈りで管理してきたものだが。現在は土がたいへん柔らかい。
雑草を適度に残す自然農だが、面白いのは所々スゲなどをまとまった単位で刈り残し、むしろ共存させていることだ。前回の村上さんの農園で「さえぎるものがない場合、風抵抗がほしい」とススキを高刈りで刈り残したが、同じような効果もあるのかもしれない。また、このスゲは園芸用に庭などに移植することもできる。つまり商品にもなる。
鶴川の田んぼへ向かう。川沿いの農道はあの台風の破壊がまったく感じられないほど自然な感じに戻っている。砂の堆積した中洲のような場所にも草が生え始め、クルミの並木は何事もなかったかのように若葉を茂らせている。
最もぬかるんで困窮した道の合流点。道のキワに残る点穴の列。もちろん今も重要に機能している。
こちらも畑が増えていた。
炭焼きが始められていた。
矢野さんが煙の様子を見て焚き口の空気道を2本掘る。
燃えが悪い場合、煙突を高くするか焚き口へ空気が入りやすいように低い気道をい導いてやるのがよい。そして焚き口での加熱(焚き火)を持続させる。ブロワーを外しても煙突から勢いよく白煙が立ち上りそれが持続するようなら炭化が始まった合図だ。
田んぼの片隅にマコモが旺盛な成長を見せている。先端を間引けば乾燥して「マコモ茶」ができる。
こちらもイネの苗が田植えを待ってる。
再び果樹園へ。炭焼きの火入れが始まったところだった。野焼き風に全体に火入れしていたところへトタンをかぶせる。
穴がやや深く、なのでトタンをかぶせたとき焚き口の開口部が大きい。
最初ブロワーで風を送りながら焚き口で燃やすが、途中で短い煙突を横にした空気孔を差し込み、石で押さえ止めその上部は根っこ付きの草土などを積み重ねて空気孔以外は密閉してしまう。そうしないと中が丸焼けになり、仕上がりが炭でなく木灰になってしまう。最終的には煙突サイズの空気孔では大きすぎるので石などを入れて吸気を狭くする(その面積は6㎝角が目安)。
現地で描いたスケッチ。最近バンディスキャナーを入手。スケッチを現地でデータ化できるようになった。
時間が押してきたが、矢野さんはお茶の移植に向かう。
下の遊休地に数本の移植して終了。日本のお茶栽培は管理しやすさと多収穫を目指して自然樹形からかけ離れたものになっている。この茶畑は長年放置されてひどい状態で、「全部伐って畑にしていい」とまで言われていたそうだが、伐らずに自然樹形に近いかたちで再生させることを目指す。
古民家の宿舎で感想会。
私は明日の丹沢登山のルート設定で矢野さんと打ち合わせに入り、調理の手伝いができなかったが、Yシェフが腕をふるってすこぶる美味しい肉丼を作ってくれていた。
明日の天気は雨。さて登山はどうなるか・・・。