「大地の再生ライセンス講座」@上野原/1.増水の川、守った木々


9/19-20(京都)、9/25-27(山梨・上野原)に続いて、早くも3回目のライセンス講座が、前回と同じ上野原で本日から3日間にわたって行われる。前回までは初の試みの準備期間「プレライセンス」としたが、今回から本番のライセンス講座となる。

朝、事務所の2階のフロアーで一同が介して矢野さんの話から始まる。今回はフィールドの中でも稲刈りを中心にしたテーマになるはずだったのだが、あまりにも大きな災害が起きてしまった。矢野さんの話はその話題に終始した。

大地の再生が長年取り組んできた空気と水の流れ、その詰まりが異常災害の原因であること、そればかりか社会システムさえも疲弊していること。なにしろ交通網の大動脈である中央高速道がいまだ不通のままなのだ。

組織が膠着し、昔の「結」のような有機的連携がとれていない。矢野さんに言わせれば、現代の重機があれば「片側を開通させる」程度はすぐにできるはずだという。

そしてほとんどの人々は山に背を向けており、災害に出会って初めて自然の存在を知るような状態だ(現代では田舎や山村に住む人たちでさえその傾向にある)。昔、人は「焚き物」を採りに頻繁に山に入っていた。水源地や水路の掃除を欠かさなかった。それが風みちを作り水みちの整備ににもなっていた。縄文時代から数千年も続いてきたその習わしが、たかだかこの5~60年ですっかり消滅してしまったのだ。

イネのスライドが用意され、ひとしきり解説を聞いた後、皆のライセンス講座に対する抱負や希望が語られた。

昼食後、下流の田んぼへ向かう。矢野さんの話では鶴川に沿った農道の上まで川が溢れ、道の一部がえぐられて補修が必要な状態だそうだ。まずはその農道を見る。有機資材が軽トラに積み込まれる。

鶴川は増水のまま濁り水が流れていた。道のキワにあった木々に流れてきた植物が引っかかっている。2m近く増水したのではないだろうか。

道のキワは胸高直径10〜20㎝ほどの立木がずらっと並んでいたはずで、それがなくなっている。

というよりも、それらの木の根が道を支えてくれたおかげで、かろうじて農道が残された・・・と言える。

樹種の多くはオニグルミだった。そのほかにクワやニセアカシアもあった。車が入れるのはここまで(帰りには先頭のトラックがスタックしてしまった)。

もともとこの農道は上手(写真左手)の水路や田んぼから漏れた水が常に入り込んでおり、わだちが川のように水浸しだった。それを矢野さんらが無償で手入れしてきたのだそうだ。すでに縦断・横断水脈のコルゲート管が入っており、その古い管を取り外して水脈を掘り直すところから始める。

新たに配管する。

道に平行な水脈を掘りなおす。

そして配管。

配管を入れない凹凸部は、窪みに枝葉などを入れ土を被せて粗腐葉土や炭をまく。

重機で転圧をかけ、最後に三つグワで整地する。水脈によって水はけを確保し、凹凸を有機物の挿入で柔らかく締めていく。「大地の再生」的「道直し」の一連の手法を学ぶのに格好のステージだった。

しかし、矢野さんが手を入れる前はこれらの木々もひどくいじけた表情で弱々しかったそうだ。水脈整備やこつこつと水切りをしたおかげで木々が成長した。今回の台風では、それらの木々が恩返しするかのように、農道を守ってくれたのだ。木々の根は道を柔らかく浸透するものにしながら、緻密な根張りで法面を強固にする。「植栽土木」の重要さをまざまざと見た思いだった。

夕食は古民家に戻って美味しいおでんやいくつかの手作りお惣菜が出た。手作りの夕食を共有するのもライセンス講座ならでは。

食後はみっちりと座学。

深夜にお開きになると、仲間内で飲みニケーション(笑)。なかなか寝るヒマがないのであったw。


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