近江八幡のカバタのある家2日目、昨日は家の前庭周辺の手入れだったが、今日はいよいよ水路と裏山にも手を入れる。昨日の雨もすっかり上がって爽やかないい天気。
やっちゃんの次男、まんじ君もマイ腰袋を下げてやる気満々だ♬
お隣の敷地は家を壊した跡の広場になっており、竹林を伐採した跡がある。その裏手には荒廃竹林が迫っており、ぐるりとイノシシ柵が張り巡らされている。
公的な資金によって作られたものだそうで総延長はかなりある。この建設のために境界の内側は伐採整理されているが、柵の向こうは奥が見えないほどひどいヤブになっている。矢野さんに言わせると正方形グリッドの柵そのものも風を遮断するという。
やや離れると背後の山が見えてくる。
竹林の裏手にはけっこうな傾斜の山が控えているのだ。地形的にみてもOさん宅はゆるい谷筋に位置しており、雨のとき水が集まるのは想像がつく。
さらに望遠で捉えてみるとマツ枯れ後の白骨樹がかなり存在する。しかしその後の広葉樹はよく発達し、ポツポツと点在する針葉樹といい感じの混交林を作っている。中腹には一部あるが一面にスギ・ヒノキを植えなかったのは、地層が岩山で育ちが悪そうだったからか? ともあれ荒廃人工林でないのは救いがある。
柵の向こうの竹林に少しでも風を通す作業を開始。
お隣にも了解をとり、Oさん宅の側溝につながる水脈の整備をさせてもらう。
昨日整備したコンクリート三面張の側溝はフェンスの奥にも続いていた。当然ながら水路の上部は枯れ竹が重なり合いひどいヤブになっている。フェンスを乗り越え、側溝の上部に風が通るように整備していく。その大小にかかわらず「水脈の上部は風通しよくする」というのは鉄則である。矢野さんがチェーンソーで先陣をきり、やっちゃんが片付けていく。
ビフォー・・・
アフター。
さらに家の裏側の風みちを開く。いちばん低くなっている谷筋を見極めて、フェンスの奥の竹やぶを切り開き、
家の脇の水路まで水脈を掘る。
矢野さんが今回の核心部、カバタのある水路に手をつけ始める。このコーナーが山からくる大谷になっており、ここから水が湧き出しているのだ。凸状に飛び出しているのは旧トイレで、昔は甕(かめ)の中に汚物を落とし下の穴から取り出していたという。その下には大きな石が埋め込まれており、水が建物の中に入らないような土圧をかけている。
この壁の裏側の廊下の板を剥がすと土が陥没して水が流れていたというカ所だ。
水路の土砂だまりのおかげで水が上に出て来れず、下に潜ってしまったらしい。土砂を取り、水路底の石を開いてその穴を潰す。
そこから90度曲がった石垣の基部から透明で冷たい湧き水が出ている。
湧き水の出口の部分の底石を掘り返して点穴を作り、そこに粗枝を入れて川から出た砂利をばら撒き、
その上に石畳のように大きめの石を敷き詰める。ここは詰まっていても困るが、さりとて開き過ぎて過剰な水流を生み出してしまうと、豪雨のとき石垣が崩壊する心配がある。だからいちど泥の洗い出しをしてから土木的な再構築をする。
そのすぐ下流にはまた大きな石が据えてある。この裏側が家の陥没穴の部分だ。できるだけ山側を水が通るように、ブレーカーを使って水みちを開いてやる。また、この石を回り込んで建物側に水が行かないように(現在は回り込んで石の下流側から水流が出ている)すき間に大石→小石を叩き込み、→砂利→粘土と塞いでいき、セキショウなどを竹串で植栽する。
下流域の水量の豊富さを見れば、湧水の出口は一カ所ではなく、石積みのキワから滲み出てるいるのだろう。清流を好むセキショウが石垣に点々と群生している。これらの一部を剥ぎ取って植栽に使うといい。
家の周りを半周した水路は幅と水量を増やして、公道のきわにあるもう一つのカバタから暗渠に入り、アスファルトの道の下をくぐって田んぼから長命寺川へと流れ、琵琶湖に注いでいる。
泥をさらっていると魚影が見え、スコップですくうことに成功! 琵琶湖畔で生物調査の仕事をしているという参加者のDさんに同定してもらうとカワムツとのことだった。
コイ科だが、どちらかといえば河川の上中流域の清流を好む魚である。それもなかなかのサイズで太っている。モエビなども見えたので食べ物には困らないのだろう。
しかし、さすが琵琶湖の水路というべきか、生き物が豊富だ。泥さらいが終わって水が澄み始めると、巻貝のカワニナが動き出して底に筋を作っていた。ホタルの幼虫はこのカワニナを餌にしている。Oさんに訊いたところ夏には家の周りでホタルが飛ぶそうである。
矢野さんが皆の作業のチェックに入る。水路の水はただ平滑に流れればいいというものではない。石を置くなどして流れを誘導し、水流が強く建物側に行かないようにする。
「水筋は流れの骨格、流れ全体の中心軸になる。小さな水路でもそれをしっかり出してやる」
淀みがある場合はやはり石を置いたりして全体が同じリズムで等速に流れるように調整する。すると波紋が一様にできる流れになる。
流れが緩い水路底にはどうしてもグライ土壌がたまりやすいが、点穴的な深みを所々に作り、その点穴を結ぶように蛇行させながらツルハシで底に水筋をつけてやると、水は渦を巻きながら流れ始め、底の泥を少しずつ洗い流してくれる。そうすれば清流はすぐに戻ってくる(このままの状態でカバタで洗い物などすると大腸菌など黴菌の心配がある)。
「流れのリズムを正常化しないと、泥さらいをやってもまたすぐに泥がたまるようになる」
公道のきわにあるもう一つのカバタにはコンクリートの板の堰があったのだが、それを取り外してブレーカーで刻みを入れ、
自然石を置いて新たな水止めを作りセキショウを植栽した。堰板が平板だと水流は表面だけを早く流れてしまい、水路の底に泥がたまりやすい。
出口にV字のくぼみがあるだけで、水流に立体的なヨレや渦が生じて、結果的に底の泥だまりが消えていく。
最終的な堰を取り水位が若干下がったので、途中で通過するお隣さんの使うカバタのために(ポンプも設置されている)深みを作っておく。こちらも自然石とセキショウで。
ビフォー。
アフター。
というわけで大変充実した琵琶湖畔の3日間がこうして終了した。Oさんの古民家には美しい瓦葺きのむくり屋根の上に、煙抜きの高窓がついている。この下にカバタの取り入れ口がある。かつてはこの下は土間の台所で、囲炉裏もしくはカマドがあったのであろう。
ぜひとも琵琶湖と里山と共にある暮らしを再創造してください。
(皆に内緒でOさんの鮒寿司と僕の著作とを物々交換してきました/笑)