2日目、朝のミーティング。航空写真の地図を開いて、ここ上野原と流域の関係、その地勢を確認する。この事務所の窓を開けるとちょうど河岸段丘の崖が見える。この辺りの川は幾重にも段丘をつくっている。それがいい農地を提供している。
チェーンブロックで荷物の積み出し。前々回の講座で梁を補修したところ。
芦垣のたんぼに行き、マコモダケの刈り取り。
マコモの根元の部分の茎が肥大したものをマコモダケと呼び、食用にする。クセがなく筍のような歯ざわりでトウモロコシのような香りがする。
葉っぱは乾燥してお茶にすることができる。薬効が強いそうだ。
天気がいいので田んぼの畦でお茶にする。
矢野さんの奥様が作られたクッキーの差し入れ。
形によって中身と味を違えているという丁寧さ。イラストの解説書付き! 屋久島でもいただいたことがあるが、このクッキーは軽くて香ばしく、とても美味♬
9/26のプレライセンス講座で刈った桑久保農地斜面。
「風の動線・けもの道動線を先に開けて、その周囲から草刈りを広げる。もう草の勢いは弱いので、徹底して刈る必要はなく、踏んづけて背を低くしてもいい。風や水がなぎ倒すような気圧のエネルギーを最後までかけ、腕先だけなく、腰を据えてで刈る」
という省力的なやり方で70日ほど前に仕上げた斜面を検証した。
なんと斜面下部にはセリが出ていた。強面(こわもて)なツル植物は収まり、牧草地のような低く優しい草地に変化していた。
これはタンポポだろうか。葉が柔らかい。
てんぐ巣病を抱えたサクラも枝をピン上げて元気になっているように見える。
そして、9/27のプレライセンス講座において、「重機の竜巻払い」で雑草を処理しておいた放置畑は・・・
所々に地面が見え、やはり柔らかな草に入れ替わっている。
クズもこのように矮小化し、ツルとしての勢いもほとんどない。まあ、絡みつく対象物がないのだから当たり前なのだが。
この激変ぶりに矢野さんも満面の笑み。ちょっと草を払えば、すぐにでも苗を植えれそうな土に変わっているのだから。このように一夏放置せざるを得ない農地は、春のうちに点穴や水脈を入れておき、雑草の勢いを弱め、秋に小型重機で「重機の竜巻払い」を施しておくと、秋植えや春植えにすぐに対処できるという発見。
前回、風の剪定(間伐)をじておいたチャノキはものすごい数の花をつけ、すでに実をを成らせている株も多数。
茶畑の上の畑地にはキクイモが植えてある。
近所の少年も加わって収穫。
三つグワにて「畝溝の切り方」の指導を受ける。ただ漫然と土を掻くのではない。クワの先をやや傾けてツメの角(かど)で引っ掻く感じ。常に手感触で土の固さや状態を確かめ強さを加減する。
その後、再び農道へ。仮復旧の最終仕上げとして、この上に砕石、炭、粗腐葉土をまく。
台風が運んできた砂地に倒れた木。人的被害をもたらす台風は決して「悪」だけではない。純度の高い大量の砂、養分に満ちた泥、そして流木や枯れ枝の塊を大量に運んでくれる。昔の人にとっては、これらは天の恵みであったろう。
私はロバート・マックロスキーの名作絵本『すばらしいとき(原題:Time of Wonder』を思い出す。島に遊びにきた子供たちが、様々な美しい風景に出会ったあと嵐に遭遇する。倒木した木の根の下からネイティブアメリカンの白い貝塚が姿を見せるのだ。その内省のひとときがこの本を深みのあるものにしている。
素材を積んだ後続隊が到着し、矢野さんはまず炭の撒き方を指導した。直後、時間を訊いて「これから明日の丹沢登山の下見に行ってきます。大内さん行きましょう、後はよろしく」と突然言い放つ。
ライセンス講座の最終日(3日目)は「今回は奥山の状況を皆で共有したい」と矢野さんは丹沢登山を決めていたのだが、今回の台風19号で登山道が荒れているのは確実。まして裏丹沢はメジャールートではない。役場など所轄機関に電話しても道の詳しい状況が解らない。とにかく現地へ・・・ということになった次第。
しかし時間はすでに3時を回っていた。ここ上野原から最短の裏丹沢ルートは「犬越路(いぬごえじ)」の峠から尾根に入るルートで、そこから南東に向かえば名峰「檜洞丸(ひのきぼらまる)」、北西に向かえば「大室山」。が、その登山口にたどり着く車道さえ通行止めになっている可能性は高い。
案の定「神之川」に沿った車道は所々崩壊の後があり、ついに長者小舎付近でコンクリート擁壁が滑り落ち、道が塞がれていた。しかしここを歩いて突破すれば犬越路への登山口はすぐのはず。
矢野さんとふたり、互いにヘルメットをかぶって崩壊地をトラバースしてみた。その先も荒れてはいたが、なんとか行けそうな目処がついた。こうして台風直後の裏丹沢登山は決行されることになった。