山梨上野原、2日目/田んぼ〜草刈り〜古民家周り、ブロアー清掃の意味


上野原プレライセンス講座2日目、もうひとつの田んぼを見に行く。道の反対側は南面のすばらしい棚田斜面だが、半分以上は休耕地になっている。この道の上にも集落と農地があり、そこからは富士山が見えるそうだ。

この田んぼは県道大月上野原線に面しているのだが、イノシシの侵入跡がかなりある。ところが侵入される田んぼは限られていて、手前の田んぼは畦周りにだけイノシシの足跡が散乱している。

その乱れた畦を移植ゴテで補修し、草刈りを追加し、水みちと風通しを良くする。

場所を変えて「風の草刈り」実習。ここのサクラには「てんぐ巣病」が多数みられるが、「大地の中に空気が通ればこの症状はなくなる」と矢野さん。

風の動線・けもの道動線を先に開けて、その周囲から草刈りを広げる。もう草の勢いは弱いので、徹底して刈る必要はなく、昨日の田んぼのマコモ田でやったように踏んづけて背を低くしてもいい。大事なのは、風や水がなぎ倒すような気圧のエネルギーを最後までかけていくこと。腕先だけで刈るのではなく、腰を据えて向かっていくこと。

ここは宿舎の古民家から歩いてすぐの場所で、茶畑も借りており、お茶の時間にはここで詰んだ茶葉からつくった美味しい紅茶をご馳走になった。

近くにパラグライダーの基地もあってときおり飛ぶ姿が見られる。

古民家に移動して昼食。ここは矢野さんらがスタッフの宿舎として借りている。敷地はかつて樹木が植えられていたが、集落の人たちが切った。かつては井戸が使われ、定期的な井戸さらいでアクを取っていた。

今回のお弁当はJR鳥沢駅前にある老舗「浜田屋食堂」のもの。このお店自家野菜やこだわり豚を使っており大月市観光協会のHPにも取り上げられている。野菜たっぷりとただならぬ手作り感、美味しかった。

午後は古民家周りの手入れについて。この敷地はコンクリートが全体に打たれているが、ここはもともと風と水通しのよい傾斜地で、そのような地面に現場打ちするとコンクリート自体も空気を含みながら固まり、空気を通すものになる。だから、ここのコンクリートはきっちりとした硬さや冷たさを感じない。

そして見回りながらのレクチャー。薪置き場、せっかく下駄をはかせて雨よけまでつけて保管しているのに、いちばん風を受ける足元に障害物を置いている。しかも端切れとはいえ一枚板。

すぐさま皆で小屋の中に移動する。かたわらには建物に寄りかかるように積まれた土嚢袋が裂けて崩れ落ちている。これも建物を傷める。

建物間の通路、排水溝の引き込みに泥アクが溜まっている。全体に見た目が淀んでいて違和感や不安を感じる。それは機能的な不具合が生じている証拠でもある。ちょっと気遣って手を入れてやるだけでたちどころに解消し、周りにそれが連鎖していく。矢野さんは泥アクを取り去ると、そこに小枝と小石の泥漉しを作った。

裏側にあるキウイ棚、手入れ不足で棚から枝が垂れ下がり、草も伸びて風通しが悪くなっている。さらにつるが伸びすぎて建物の屋根にまで這い上がろうとしている。

解説を受けて皆で一斉に枝切り・草刈に入るが、まだ足りない。とくに奥の他の敷地との境界の抜けが悪い。矢野さんはその境界のササを櫛状にかなり開けた。また、奥のコーナーにお稲荷さんが祀ってあるのだが。その前は入念に低く刈った。すなわち風通しは地形だけでなく。そこに必要なシンボルを優先におこなわれることもある。

最後の片付けで棚下にあった剪定枝の小山とビニール屑の中からビニールゴミだけを取り出し、有機物を払って、剪定枝を振るうようにきれいに整列させて置き直した。「見た目がよどんでいれば不具合が生じている」からだが、私には「自然への礼節」という大切な態度をその中に見た。学び取ろうと思えばいつもこのような動きが矢野さんにはある。

その後、倉庫に戻って昨日の片付けの仕上げをする。最終的にはブロアー(風の力でゴミや落ち葉などを吹き飛ばすエンジン機器)でホコリを払うが、このとき同時に風の通りを確かめることができる。

ブロワー清掃で片付けたすべての空間に風とが行き渡っているか? 空間を最終的に仕上げる重要な仕事でもある。水やりも同じで、均等に水が分かれ地面に浸透していかねばならないし、ダメならそこに不具合を発見できる。

「”大地の再生”の最後の試験は、水かけとブロワー清掃になる」

三つグワ、ケンスコ、レーキ(表層整形)、さらに熊手、竹箒、手箒(表層均し)、そして最終的にブロワー清掃。すべて深さに応じたエネルギーを水と風に習った作業として使う道具であり、それぞれの道具の手応えを常に感じることが大切。

夜はまた私は原稿修正を頼まれて炊事の手伝いができず。しかしまたしてもクッキングパパ采配で美味しい親子丼ができてきた。

座学では各自の現場での事例が2例報告され、矢野さんから厳しい指摘を受ける一幕もあった。


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