秋の屋久島1./アペルイの変遷、白い花と青いチョウ


朝日を浴びた屋久島が近づいてくる。雲が垂れ込めてはいるが、島全体はくっきり見えている。雨が多い屋久島で、入船時に全貌を見せてもらえるのは幸運なことなのである。

上陸して走り出し、宮之浦の町を抜けて緑の道に切り替わったとき、私の目に飛び込んできたのは大型の白い花だった。それが、耕作放棄地や林縁、空き地の裾などに、ひとかたまりでたくさん生えている。

車を止めてまじまじ観察してみると、園芸品種のフヨウによく似ている。私が妙に惹かれたのは、白いフヨウの花が好きでいつか庭に植えてみたいと思っていたからだ。しかし、この花はややピンクがかっており、園芸品種よりも造形的に力強く美しい。

後で、アペルイの田中くんが「サキシマフヨウ(Hibiscus makinoi)」だと教えてくれた。和名は先島諸島に由来し、主に鹿児島県西部の島から琉球にかけて分布するという。学名のmakinoiは植物学者の牧野富太郎への献名だそうだ。島の人もこの花を愛でているのか草刈り時に刈り残しているようである。

アペルイにてスタッフミーティング。今回の大地の再生講座は4日間のメニューで、日によってそれぞれ場所を変える。今回、島内参加者は参加費無料。大地の再生側は「ライセンス講座」を兼ねている。

講座の初日はここアペルイで午後からの開始。私は「大地の再生」に関わり始めて今回で6回目(フル参加)の屋久島になり、いつもここを拠点にさせていただいており、それだけに敷地の変遷をずっと見てきた。

オーナーの田中さんの挨拶で今回までの経緯が語られる。矢野さんにバトンタッチすると、敷地がすばらしくよくなっているが・・・水脈の塞ぎや枯れ始めた木も出ていると指摘。

とくにデッキへの足踏み木材が水脈の上に乗っており、それだけで水脈は抵抗を受ける。だからその下はっや広げなければならない・・・という説明に「それほどデリケートなものなのか?」と、島内参加者は皆驚いた様子だった。

さらに遠景をあおいで、山の端がギザギザに見えることを指摘。

このように木がぽつりぽつりと突出して見えるということは、尾根までかなり傷んでいるということ。

私は取材中も珍しい動植物を見つけたらすかさず撮影することにしているのだが、前回初めて見たアオタテハモドキを今回つがいで見ることができた。

アオタテハモドキ、オスの後ろ羽の青い光沢はことに美しい。

タテハモドキも初めて見た。これはかつてタイの採集旅行でネットに入れたことがある。いずれも南方系のチョウで、本土では見られない。

他にも、ツマベニチョウが悠々と飛んでおり、このチョウはスピードが早く、撮影のチャンスがこない。なので取材中も視界にヤツが入ると気が気でない(笑)。

敷地を説明しながら、そしてときおり実践を交えながらひと通り周遊し、デッキで考察に入る。

夕刻、アペルイ にて座学。

そして今宵の夕食と宿泊の地「モスオーシャンハウス」に移動。すでに真っ暗であったが、ここは潮騒響く高台にある。海はすぐ目の前、そして上空の星をさえぎるものは何もない。

ウッディなリビングでの夕食は、トビウオの入ったなめろう。ナスの漬物、そしてアラ出汁の味噌汁。鮮烈、美味しい! そして、料理人の人柄が伝わってくるような、なんとも温かでホッとするまとまりだった。

なめろうご飯のおかわりはワサビをのせた茶漬けで。

明日はここの敷地の再生工事をする。なんだか新しい風が吹きそうな予感・・・。


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