すいとんを作った。明日は満月で大潮である。明け方に引き潮が最大になるので、岩牡蠣を採りにいく約束をしている。外にはまるい月が煌々と輝いている。それを見ていたら、かつて仕事で月夜の挿画を描いたときのことを思い出した。その取材で酔狂にも奥多摩の夜の登山道を歩き、滝にかかる月虹を見に行ったことがあるのだ。そして月を待つ間、沢の水でけんちん汁を作り、小麦粉を練ってすいとんを作ったのだった。
昨年泊まりに来た客人のお土産のすいとん粉を、いつ使おうかと思っていたのだが、口開けに今夜はまたとない時と思われた。
いりこで出汁をとり、具はダイコン、ニンジン、ゴボウ、そして鶏肉。
深夜の奥多摩のけんちん汁に団子を浮かべてすいとんにしたのは、もちろんそれを月に見立ててのことだ。
先に醤油と酒、みりんを入れて炊いておき、野菜に味を含ませておくのがコツ。そこに、スプーンで紡錘型にちぎった団子を入れていく。
いい感じに浮かんできた。
麦味噌で仕上げる。
汁はそれほど濁らず、団子の表面には光沢がある。
よそってネギをたっぷり。
薬味は自家製「陳皮」。これが実によく合う。
粉は熊本県の城商店の「無添加すいとん粉」という製品なのだが、表面はつるつるで中はモチモチ。そして昔食べた食パンをぎゅっとつぶしたような歯ざわりとなつかしい味がして、今まで食べたすいとんとは別物のように美味しかった。
熊本のある商店のHPではこの商品説明に「店頭、通信販売でお買い上げのお客様に大変なご好評を頂いております。他では味わえない食感があります。一度食せばヤミツキになります」と書かれている。
すいとんは消化が良いので、今夜は短い睡眠時間でもいけるだろう。さて明日の満月の海は3時起きなので、そろそろ寝ることにする。