岩牡蠣を採りに


明け方3時に起きて東方面の某海岸沿いの待ち合わせ場所へ。今日は満月で大潮。春の大潮は干満の差が大きく、今日は明け方の4時過ぎがそのピークとなる。以前、ウナギ釣りに連れて行ってくれたA君が岩牡蠣とりに誘ってくれたのである。

岩牡蠣は一般に夏が旬で、高価な値段で取引されており、漁業権のある海では採取はご法度であるが、ここ香川では生牡蠣の出荷は条例で禁止されており、漁協は岩牡蠣を扱わない。

岩牡蠣はふつう素潜りで採るもので、なぜなら漁業権のある場所では採りやすい岩場はすでに根こそぎ採られているからだ。しかし、岩牡蠣は岩と見分けがつかないので最初探すのは難しい。それでもなんとなく分かってくる。小バールとハンマーを使ってそれを剥がしていく。それにしてもすごい殻の厚みであり重さである。その外見からは、養殖の真牡蠣とはまったくちがう生き物のようだ。

ムール貝もいた。殻には大きなフジツボが付いており、ここに生息していた長い時間を物語っている。

岩のかなり上方までカメノテがびっしり付いている。やはり今日はすごい引き潮なのだ。

ナマコとウミウシがいる。ナマコは漁業権があるので残念ながら採ることはできない。しかしウニはものすごくたくさんいる。でも割ってみればわかるが、食べられる生殖巣がものすごく小さい。だから誰も採らない。

A君がいろいろな生き物を見つけてくる。これは空の牡蠣殻に入っていたギンポとその卵。ギンポは江戸前天ぷらでも有名な高級魚、オスが卵を守る習性がある。

それにしても、驚くべき海草の種類と豊富さである。この海草がウニや貝類を育てているとも言える。ワカメも少し採ってきた。こんなことならノコギリガマも持ってくるべきだった!

まちがって殻を割ってしまった。

せっかくなので身を取り出して、海水で洗って生で食べてみた。塩気がきついが濃厚な風味があってイケル(免疫力の弱い人は真似しないように、当たる危険があります)。

潮が満ちてきたところで終了。4人で今日の感想を交わしたり釣り談義をしているうちに夜が開けてきた。今しがた歩いてきた岩場の上には、ウバメガシが群生していた。

屋久島の磯に比べて、瀬戸内のこの岩場がはるかに豊潤なのは、その海草と貝類の豊富さを見ても明らかだった。この磯には海岸線に車道がなく、小山からの空気と水の流れの遮断がない。

瀬戸内海はリアス式海岸と多くの島々を持っており、無人島もたくさんある。マツ枯れの時代を経て自然林は回復しており、山林から流れ出るフルボ酸鉄がプランクトンや海草を育てている。

石積みの技術が今の老人たちに伝承されなかったように、採取と食文化の伝統がとぎれたおかげで乱獲からも逃れた・・・という理由もあるのかもしれない。

(剥きと料理編に続く)


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