暗いうちに古民家を出発して新横浜から新幹線に乗り、京都へ向かう。帰りも富士山がよく見えたが、やはりここを通るとき気になるのは伊吹山である。古くからの霊峰でヤマトタケル伝説があり、薬草の宝庫としても有名だ。
車窓から写真を撮っていると矢野さんが口をはさむ。伊吹山は琵琶湖を望む位置にあり、表日本と裏日本の自然が交錯する重要な山であるという。また東西の文化圏の中間点ともいわれている。石灰岩の採掘で山が削られ、山頂付近までドライブウェイが作られてしまった。矢野さんはこの山によほど思い入れがあるらしく、保全されずにここまで来てしまったことを残念がっている。
京都の現場を視察する。修学院離宮に近い、住宅に囲まれた保育園だった。
プールの位置に木造の新校舎を建てる。それに付随して敷地周りの水脈整備や植栽を検討する。
古い遊具は取り払い、小山や砂場などを作って自然環境の中で園児が過ごせるようにしたいという。
建物の裏側はコンクリートに囲まれた狭い空間で、かなり膿んでいる感じ。
しかし植栽はしっかり根付いており、ツタなども元気だ。地図をみると北側に比叡山を源流とする音羽川が流れている。京都は地下水脈が豊かなので、植物の根がいい感じでそれを捉えているのかもしれない。
道路側は壁際に小さな植栽スペースを設け、有機アスファルトに変えれば白壁に生える美しいスペースが生まれる。周囲に真似をする住宅ができてくれたら素敵である。
入り口付近のちょっと坪庭的なスペース。ここにもツタが。クライアントと設計家を交えて視察は小一時間ほどで終了。
昼食はインドカレーの店へ。矢野さんはこの近くの古民家周りの仕事に長く関わったことがあるそうだ。
新神戸まで出て、次の現場は兵庫県西脇市にあるアパレルメーカーの工場敷地。
外観はたしかに工場だけど、薪ストーブの煙突も出ていて建物全体からいい意味でこだわりがムンムン伝わってくる。
裏側は「日本へそ公園」に隣接していて、ここは確か横尾忠則の個人美術館(西脇市岡之山美術館/設計は磯崎新)があり、私は5年前の熊野の取材旅行の帰りに立ち寄ったことがある。
敷地はコンクリートで閉ざされており、鉢植えや流木がオブジェのように置かれているが、これらの緑や有機物が大地とつながる景観にしたいという要望なのであろう。
中に喫茶スペースがあって薪ストーブが燃えていた。室内にも観葉植物の鉢が多数ある。
椅子の布地が美しい。
コースター。
ショール。
1/28〜30の三日間、こちらで大地の講座が行われる。新たな展開がとても楽しみな現場である。
皆は新神戸で夕食だったが、私は単独で帰還。こうして8日間の旅が終わる。