雪の鳴子温泉


昨夜は念願の「牛タン」を食べ、居酒屋をハシゴしているうちに雪が舞いだした。「せんだいメディアテーク」(伊東豊雄の代表作)をじっくり見て、中の図書館で調べ物をする予定だったのだが・・・雪が美しすぎた。明け方に突然思い立ち、日帰り温泉旅行をすることに。それも途中下車の旅ではなく、行き先は仙台から北へ2時間の「鳴子温泉」だ。

仙台駅のコインロッカーにキャリーバッグを預け、5Lのスタッフバッグに風呂道具だけを詰め込んでローカル線に乗る。鳴子には父の追憶があった。狩猟を趣味としていた父は、正月休みは東北に狩猟の旅に出るのが常であった。鳴子や作並など東北の温泉の話は父の口からよく出ていたのを覚えているのだ。

調べてみると鳴子温泉には150円で入れる共同浴場があり、硫黄泉でヒバの湯船だった。私のもっとも好きなタイプだ。しかも駅から歩いてすぐの場所にその共同浴場はある。

小牛田と書いて「こごた」と読む。ここまで仙台から東北本線で約45分、この駅で陸羽東線に乗り換えて、約1時間で鳴子温泉駅に着く。待合で爺さんの東北弁を聴くのも楽しい。

雪景色のおかげで2時間はぜんぜん飽きなかった。

駅の案内所で地図をもらって道順を聞く。

雪が舞う中、坂道を3〜4分で共同浴場「滝の湯」に着く。券売機で150円を払い、番台に渡すと貴重品入れのロッカーの鍵を貸してくれた(無料)。

お湯は草津そっくりの香りがする硫黄泉だった。ヒバの浴槽もくり抜いた丸太から落ちる打たせ湯もすばらしい。なにより湯温が絶妙に良い。草津ほど熱くはないので、何度でも入りたくなり、そのたびにため息が漏れ、とにかく離れがたい湯なのである。

(写真は撮影厳禁とあったので中の様子はこちらのサイトからどうぞ)

おかげですっかり長湯し、帰りにこけしなどを見ているうちに、帰りの予定の電車を逃して1時間半ほどの待ち時間ができてしまった。

駅近くの食堂で「山菜きのこ蕎麦」1,080円というのを食べた。なめこ、ふくろたけ、フキ、ウド・・・すべて野生のものだそう。

なにしろお隣に山菜の販売店がある食堂だから間違いないのである。

待ち時間にパンフレットを眺めていると、義経由来のお湯があることを知った。

源義経が兄頼朝に追われ奥州平泉に逃れたときのこと、北の方(正室)が亀若丸を出産した。亀若はなかなか産声を上げずこの地で温泉に浸かったときようやく声を上げた。以来この土地を「啼子(なきこ)」と呼ぶようになり、現在の「鳴子」になったという説がある、と・・・。鳴子はこけしで有名だが、源義経とも縁のある場所だったのだ。

亀若丸が浸かった「姥乃湯」は鳴子最古の宿で、素泊まり湯治などもできるそうだ。帰りは温泉のぬくもりと香りに包まれて車内でうとうとしながら仙台へ。途中、雪の中に落穂を食べるマガンの群れを見た。

仙台朝市も散策したかったが、さすがに今日中に高松に着くにはそんな余裕はない。キャリーバッグを取り出して新幹線に飛び乗る。宇都宮を過ぎる頃、左手に筑波山が見えた。

私の故郷、父に連れられて登ったことがある山でもあった。父もあの「滝の湯」に浸かったのだろうか・・・。

東京からの新幹線は帰省ラッシュが始まって指定はすべて満席。自由席の立ち席で帰ることになったが、名古屋で隣席が空き、なんとか座って帰ることができた。深夜、キャリーバッグを駐車場まで引いて帰り、3日ぶりの愛車で自宅に帰る。

こうして、今年最後の取材旅は幕を閉じた。


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