今回の取材、植栽の進み具合の他に、もう一つの注目は茶庭に水が入ったことだった。前回、竹の筧(かけい)や水流の溝が造られているのは見た。そこに水が入り、流れている姿は私の想像を超えていてイメージできなかった。
しかし、やはり矢野さんは今回も大胆不敵である。筧と自然石の水鉢がまるで最初からそこにあったかのように納まっている。
もう一方、メインの水流ルートは斜め上の山上の岩から水が湧き出ているかのように岩をすべり、枕木のステップを全体になめながら小池に落ちていく。
出だしはちらりとホースの末端が見えている程度で、小石のきわから湧き出ているように演出されている。
枕木と枕木の間は「有機セメント」で処理されている。石灰に粗腐葉土を混ぜたもの3に対して、セメント1の割合で練ったものだという。
接写してみると、粗腐葉土の空隙が観察できる。グレーの色も落ち着いていて違和感はない。
山上から水落ちのコーナーを眺めるとこんな感じなのだが、筧の水は自然石の水鉢で受けた後、直接小池には入らず、水鉢石の下を抜いて別ルートで道側の升に繋げてある。普通なら池に合流させてしまうところだが、矢野さんは手間をかけて石の下にコルゲート管を通したのだ。こうすることで、コーナーの澱みが解消され、植栽も息づくという寸法である。
この水鉢となった自然石は、注文して取り寄せたのではなく、この工事で出た自然石をうまく使ったものだという。筧の形態やサイズもこの石に合わせて導き出されたものなのだろう。造形的にもよくできている。
石は水濡れと乾いた部分と2色に見えている。下に通気浸透水脈があるおかげなのかもしれない。この石に限らず水流周りには、やがてきれいな苔が付くのではないだろうか。
龍神様の石甕が降ろされる。
儀式を経て、この石は実用的な手水鉢とり、茶室ぎわに設置されることになった。
仙台の夜は暗くなるのが早く、急激に寒くなる。明かりが入った建物も美しい。
ライトアップされたシンボルツリーのヤマザクラ。多数の胴吹きが見られる。
この後、サーチライトやヘッドランプを灯しながら、6時過ぎまで工事が続けられる。
午前中運ばれた石を設置していく。矢野さんにはすでに置き場所、置き方まで計算済みだったようだ。木杭を使い、植栽とセットで据えるのはいつもと同じ。
『現代農業』の連載最終回では有機アスファルトの紹介だけでなく、全体を「有機的土木」というテーマで捉えこの石の据え方も図化した。
炭は必ず入れる。この石の据え方は「大地の再生」のエッセンスともいうべき非常に重要な要素が込められていると思う。
仕事を終えて矢野さんたちは事務所で打ち合わせに入り、私は車の中を借りてPCを打つが、さすがに睡魔が襲って寝落ちしてしまった。お風呂はいつもの「汗蒸幕の湯(はんじゅんまくのゆ)」へ。ここは韓国式サウナが目玉らしいのだが、サウナ苦手の私は湯船だけ。でもせっかくなので食堂では韓国料理をチョイス。
打ち合わせを終えて深夜12時近くに宿に着くと、なんと鍵がなく宿主に連絡も取れず、結局新たにホテルを探して転がり込む。結局就寝は2時近く。相変わらずハードな1日であったw。