大地の再生@宇和島市吉田町/2,みかん山作業道の再生


現在の作業道は、人間の都合で直線に、一定の傾斜でつけようとするために、道自体が大雨のとき川(水路)になってしまう。すると浸透機能が落ちるだけでなく、泥水の流出や、カーブでは水による破壊が起きる。

私はかつて林業のための「四万十式作業道」を取材して本を書いたことがあるのだが、それはローコストで崩れない道を作るためのノウハウで、有機物を用いたり、現地資材を活用したり、最大の注意点としては雨による破壊に細心の注意とアイデアを盛り込んでいて、矢野さんの考え方にかなり近い。が、四万十式には「浸透」を促すという考え方がない。

矢野さんは小型重機で作業道の最上段に登り、バックで下りながら道の山側に小刻みに小さな点穴を掘っていった。

このみかん山100年の歴史の中で日常的に働きながら、手で道をつけていた時代は、地形に沿っ道を作っていたはずだ。地形に沿って作れば直線にはならず曲がりができる。そして切土・盛り土が最も少ない道となる。必然的に道は川にはなりにくく、雨の分散と浸透が促されていた。だから崩れにくくもある。

この作業道は、昔の道がベースになっているはずだが、運搬車などが通りやすくするために重機を入れて直線化されてしまった。そこで運搬車に支障のない程度の浅い点穴を掘って、炭と枝を入れて浅く埋め戻す。

枝は葉と幹のバランスがいいように、枝1本分をバラしてそれを穴に入れていく。つまり、穴によって太い枝だけや葉っぱだけにならないようにするのだ。そしてただ穴にばらまくのではなく、太い枝を骨格に、そこに編み込むように細い枝葉を入れていく。

谷側から山側へ土を移動して点穴の半分ほどを埋めもどす。カーブのところは穴というより溝的になる。

このみかん山を講座に提供してくださった山主さんも雨の中手伝ってくださる。8代目の当主で、このみかんの木は2代目が植えたものだそうだ。

仕上げに全体に炭とチップをまく。道のチップはかなり厚くまくように矢野さんから指示が出る。午後から雨が降り始め、この道はぬかるみ始めて靴が滑るようになったのだが、炭とチップをまいたとたんにほとんど滑らなくなった。

ところで、このチップはなんとヒノキである。しかも製材の端切れや皮の部分ではない。本幹をチッパーで粉砕したものだ。一昔前なら考えられないことだが、日本の林業はついにここまで来てしまったのである。

チップは作業道の山側の木の周囲にもまかれた。多数の点穴も作ってある。チップは雨のときの土流れを防ぐだけでなく、晴天が続いたときの保水カバーにもなってくれる。

最後の仕上げに矢野さんは三つグワを使って水切りを作り始めた。この作業はカーブの場所と・・・

上側の長い直線がゆるいカーブを描く中間点に作られた。普通、林道や作業道の水切りは、斜めに一直線に溝を掘って、流れ落ちてくる水を谷側に誘導するものだが、ここでは階段状に交互に段を作って、分散させながら谷側に落とす仕掛けだ。土が軟らかく、かつ急傾斜なので、一本で誘導すると法面の天端が崩壊するからという配慮だ。

最後に車道と作業道の合流点の解説が入る。ここは車道が舗装されているので、大雨のときは川の流れになり、それに作業道の水が引っ張られる可能性が高い。そこで両サイドに大きめの点穴(赤矢印)を作り、そこに作業道の水が誘導されるように水切り(青線)を入れている。いわば、三春の福聚寺における「扇の要」ポイントと同じである。

今回、矢野さんがこの急傾斜地の果樹園でどんな処方をみせてくれるのか、大変興味をもって取材に臨んだが、それだけに水と空気の視点と、大地の再生メソッドが鮮やかに浮かび上がるよい機会だった。残ったメンバーで感想会。掃除をして解散。

様々な事情から人が集まらず、主催のAさんはご苦労があったようだが、地元の高校生が参加したり、地元紙が好意的に取り上げてくれたり、よかったのではないだろうか。これからの展開を楽しみにしている。

矢野さんを助手席に乗せて、打ち合わせしながら高松駅へ送る。なんとか最終一つ前のマリンライナーに乗っていただくことができたが、相変わらず「あれ、財布がない!」から始まり、荷物整理で時間を食い、駆け足の見送りなのであった(笑)。

矢野さんは明日から仙台へ、私も26日から追随する。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください