大地の再生講座@福島県三春福聚寺(3)/ショート草刈り編・炭と有機物の関係


三春、2日目の朝。墓地の草刈りに現地のシルバーの方々が集まってくる。矢野さんは早速「風の草刈り」の指導を始める。草はできるだけ根際から低く切るもの・・・と全国ほとんどの人がそう考え実践しているので、教え方も入念である。

風の草刈りは風で揺れる部分を刈る。つまり高刈り、撫で刈りである。そして使うのはチップソーではなくナイロンコード。しかも一般的には左右対称に1本ずつ出すのだが、矢野さんは1つの穴から2本まとめて出す。

断面は角形。しかし今回のように、どう猛なヤブではなく草刈り後の柔らかな出方の場合は、もっと細いものでよい。

こちらのサイズ(2.4㎜)がいいそうだ。

エンジンは基本低回転にしておき、草の状態を見ながらアクセルをふかす。アクセルはバネで戻るタイプのものが使いやすい。

低潅木は根際に風が通るように、また葉が混み合っている場合は中も少し刈る。低潅木は自然の群落は、密のように見えても根際はすっきりしている。つまり自然の樹形を真似るのである。

キクなど蕾を持つこれから花咲く植物は、先端だけなぞって2番手の蕾は残しておく。気持ちにブレーキをかけて全体のバランスを見ながら刈っていく。

「どこかができていない」と神経質になるのではなく、全体にバランスがとれていればよい。

バラバラに作業せず連携することで、ムラのある刈り残しを次の人が刈るのがよい。風のようにつながって作業するとやり残しがないし、作業も早い。

ちなみに手作業でやる場合はノコがまを使うが、密ヤブや潅木などを相手にガツガツとやる場合はカーブソー(曲げノコ)を使う。私はまだ持っていないので、矢野チームのSさんに道具を見せてもらった。上がサボテン、下がサムライという商品名。他にシルキーもよい。グリップは上のタイプが自由度が高いので使いやすいそうだ。

ところで「高刈り・撫で刈り」は大地の再生の専売特許かと思ったら、最近はそうでもないらしい。

イネ科雑草の生長点は地際にある。だから地面近くで刈るとイネ科雑草ばかりに多くなる。高刈りなら摘心と同じ原理で、広葉雑草は新芽がたくさん出、イネ科雑草を光遮断で抑制する。農家にとって高刈りはクモやカエルなど土着天敵を守ることにもなり、刃の減りや燃料を節約できて経済的だ。

『現代農業』誌でも特集されたというし、きれいに刈ったという達成感や人目を気にする人ばかりではなくなってきたようである。

草刈り指導を終えた矢野さんは大型重機に乗って門前の広場と公道の接点の工事にかかる。ブレーカーでアスファルトを剥がし、ここにコルゲート管を入れて石でかさ上げする。

石積みは着々と完成に向かっている。

右手のコルゲート管をいけた溝では昨日の枡づくりの続き。

カスガイで補強。

さらに枡の上流側を掘って、そこに炭を入れる。矢野さんたちは炭を、これでもかというくらいどの場面でも常に大量に使う。

その上に有機資材を置いていく。枡の両サイドの土との間にも炭を入れ、そのすき間に竹枝を丁寧に差し込んでいる。感心しながら観察している私に「この5分の手間が後で10倍も効いてくる」と、矢野さんはニコニコしながら言うのだった。

土の中に水と空気を通すには、有機物が絶対に必要なのだ。しかし有機物は土中で分解されるとき有機ガスを出す。炭は多孔質で空気を通し、保水機能を持ち、微生物のすみかになるだけではなく、そのガスを吸着してくれる。有機物のマイナス面を炭が取り込み微生物の力も借りて分解する。炭は有機物を活用する力を促進させる強力な触媒なのである。

また炭を地面にまくとき、土中で使うときは、その泥をかぶると炭に穴が詰まって機能が落ちる。だから泥漉しとして有機物をセットに使うことで、炭の機能も守られる。

お昼は手作りの冷やしうどんと混ぜご飯をいただいた。部屋の窓を開け放つと涼しい風が流れてきた。石垣の犬走りにコルゲート管がもたげているのが見える。「なんだかヤブ蚊がいなくなりました」とおっしゃる奥様に、「溝を入れたおかげですよ」と矢野さんが言う。

ヤブ蚊は地中に水が停滞しているところ、有機ガスが出ているところから発生する。ヤブカの幼虫はは水がなくても、湿った土があればそこで成長できるのだそうだ。


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