住吉の長屋、朝日放送新社屋、長田のカフェ


見たい建築リストはGooglのマイマップにプロットしてあり、近所を通ったときにはカーナビと連動して見に行けるようにしてある。今回は帰り際に大阪へ立ち寄る。やっぱり一度は現物を見ておきたい「住吉の長屋」。言わずと知れた安藤忠雄、初期の代表作。

一方通行の狭い路地にあって最初は気づかず通り過ぎてしまい、もう1周目で確認。時間は朝の5:40、まだ人気はないので、住吉大社境内脇に路駐してささっと撮影してきた。ファサードの間口2間は予想以上に小さく感じられた。それだけに、中庭の開放感の感動が大きいのは想像できる。

竣工から42年の歳月が経っている。それにしてはコンクリートがきれいでお隣の赤い花が映えていた。この家の内部の1/3は雨の落ちる中庭になっている。「単純ではあるけれども実際には単純ではない、物理的にはどれほど小さな空間であっても、その小宇宙のなかにかけがえのない自然があり豊かさがあるような住宅をつくりたかったのです(安藤、談)」中庭見たいな〜。

裏側はだいぶ汚れが目立つ。公表されている平面図では矩形だが実際は凹みがある。壁に見えるのは台所の換気窓である。しかしアートとしてはいいけどさすがに住みたいとは思わないな(笑)。

大阪の朝は、下道でも案外快適であった。道が広いせいか車がよく流れている。お次は大阪の中心部、中之島近くにある「朝日放送新社屋」。設計は隈研吾。

この一帯は中之島西地区の阪大病院跡で「水都・Osaka α プロジェクト『ほたるまち』」と呼ばれ、商業施設、多目的ホール・堂島リバーフォーラムなどの複合都市として2008年の開業。

住居棟、商業棟など全体のコーディネートは安藤忠雄が務め、朝日放送新社屋の設計は隈研吾氏が行った。

千鳥格子とガラス、そしてアルミのルーバー。

社屋内部にはガラス越しに千鳥格子がつくる光と陰が美しく動くはず。中も見たいな。

隈研吾はガラスとスチールの使い方が巧い。

千鳥格子は木製ではなく合成樹脂? 汚れはほとんどない。空間には鳥避けのワイヤーが取り付けられている。

中庭のデッキスペースに続く大階段。

さざなみのような視覚的ノイズが心地よい。

大階段の空間はビル風を軽減するための「風穴」 にもなっている。

手すり、ここは太め。

ここで公開放送とかイベントとかするのだろうね。

堂島川に向かってウッドデッキが 広がり、芝生の小山。この下は建物がある。つまり屋上緑化。

埋め木は等間隔でなくランダムに。

社屋はシャープな外観。

外につながるバリアフリーの回廊。

組み石にも細かな芸が。

看板のデザインもいいね。

川に面した外観。

どんな素材を使っても、ひとつひとつの納まりや全体のバランスが優れているので見ていて安心で心地よい。

建設されて10年。素材が正直、研ぎ澄まされた造形、ぜんぜん古くない。

放送局の社屋というのは様々な条件が混在する極めて複雑かつユニークな建物であろう。当時の新社屋建設の統括責任者であった渡辺克信社長は、当時をこう振り返る。

旧社屋が在阪局では最も古かった上、震災の影響も そこここにありました。他局の新社屋を見続けてきたこともあってか、社内からの要望・希望は数多く、誰もが「夢」の一杯つまった快適な新社屋にしたいと願い、そうは言えどもコストには上限があるわけで、5 年にわたる設計・建築は、何重にも複雑にからまったパズルを解くようなものでした。今思い返しても、軽いめまいを覚えます。

これに忍耐強く付き合い、プロジェクトを成し遂げた隈研吾建築都市設計事務所の苦労がうかがい知れるというものである。ところで隈研吾が学生の頃、安藤忠雄はスター街道まっしぐらの時代で、隈は誘われて住吉の長屋を見に行ったことがある。しかし、その方向性に疑問を感じる(『10宅論』1990)。そして有名設計事務所に弟子入りすることが主流だった当時の就職状況に背を向けて、「社会に揉まれるために」あえて大手の日本設計に入る。

その後、アメリカの大学で研究員を経由し、設計事務所を設立するわけだが、大手設計会社でガラスとスチールの実務を経験し、最先端の大学でPCによる新たな建築システムを学んだ経験が「和と自然素材」の作風に広がりと深みを与えており、その結果、安藤忠雄とはかけ離れたスタイルを確立することになる。それにしても、ここ「ほたるまち」で2人はガチンコしたわけである(笑)。私にとっても感慨深い建築旅であった。

神戸でカフェに入ってノートパソコンでブログを少し書いておこうと探したのだが、さすがに三宮や元町あたりには早朝から開いている店は少なく、駐車場もない。長田まで来てみつけたカフェ「PREGO」。

自家製パンのサンドモーニング。卵は茹でたのと焼いたのと選べるというので、関西風に後者でお願いする。神戸の喫茶文化を感じさせるなんともいい雰囲気。お年寄りの常連客が次々とやってきては会話を交わし、新聞を開く。

なんだかPCを開いてガツガツ仕事をすることがはばかられて、のんびりとモーニングを食べて、そのまま店を出る。今日は「神戸まつり長田フェスティバル」だそうだ。晴れてきてよかったですね。

結局、須磨までずっと下道。明石海峡大橋〜淡路島〜大鳴門橋の区間だけ高速を使って、また下道で高松まで帰る。


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