早朝、散策に出るとなんと海が見える。昨夜遅く到着した「熊野青少年自然の家」、2段ベッドで宿泊学習を思い出させるような部屋と寝具だけど、素泊まり1,000円でお釣りが来る驚きの安さにして、・・・この高台の絶景。
山側の人工林の中にモコモコと明るく見えるのは、シイ、タブ、クス類など照葉樹の花なのだ。アオバトが鳴いている。紀伊半島、熊野がもっとも美しい季節である。
宿の管理人さんが熊野市の自慢は3つ「少年自然の家の裏山からの展望」「鬼ヶ城」「丸山千枚田」と言っていたので、早出して「鬼ヶ城」に立ち寄った。たしかにすごい所だった。海だけでも絶景なのだが、砂岩の岸壁がところどころ風化して、独特の文様を描いている。
岸壁につけられた遊歩道がまた凄い。黒部の水平歩道を歩いたときのことを思い出した。
さて、今日は棚田再生というテーマでの講座である。場所はやや内陸部の熊野市五郷町(いさとちょう)。敷地には樹齢400年のカヤの木(市指定天然記念物)がある。
ここに住むMさんがこの講座に至る経緯を話す。家主のOさん(85歳)は林業家で14代目の当主。
敷地の建物の一つが林業関係の資料館になっており、昔のきこりの道具やOさんの作業風景の写真などが飾られている。昔はスギ皮葺きの屋根が多く、スギ皮はたいへん需要があったそうだ。また、木挽(こびき)の仕事も盛んで、米の収量が少ない山間部にあって木挽は貴重な収入源であった。資料館には様々な形の木挽鋸が展示されており、Oさんが自ら「木挽唄」を披露してくれた。
敷地の中に5年放置された棚田があり、中にススキの株が点在している。また、下の田んぼは水を入れる水路も不明瞭になっている。その中の何枚かでも使えるように再生する・・・というのが今回の作業の主眼である。また、カヤの木は枯れ枝が目立ち、葉もうすく衰弱が目立つ。矢野さんたちはこの木にも手を入れるだろう。
今回はまさに「結」の作業となる。
スコップなどの道具を手に、矢野さんの指示で一番上の田んぼに入る。
まずは田んぼの周囲に素掘りの溝を掘る作業。
石垣側はダブルで掘る。石垣直下は詰まりを呼吸させる溝、田んぼ側はこれから水を引き入れる。
田んぼを放置すると、有機ガスにも負けない手強い雑草が生えてくる。しかし外周に溝を掘って、空気や水が循環しやすくすれば、開墾直後の田んぼでもイネはできる。
溝を掘ってそこに水を流すと、水の力は凄いので土がゆるんでくる。
人間の力だけでなく、水の力・空気の力を利用する。そのために程よい水みち・空気みちを付けてやる。
外周の溝ができて、ススキの株を抜き始める。
Mさんらに水口を切ってもらう。
外周溝に水が回り始める。
縦にも溝をつけておくと効果的
溝は畔側は直角断面に、田んぼ側はカマボコ型(曲面)にしておくと。田の土の中に水が入りやすい。畔側は水が入りにくいので守られる。
(続く)